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聖女のんびり旅行記  作者: 留梦
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1話

この世界は26の国によって成り立っており、その国々を10年に一度訪れるのは、聖女ベルナデットの義務であった。




丘の上から、アインズレッド王国の首都、アスカルカを見渡す。


「いつみても、おっきいねぇー」


ベルナデットの独り言に、返事するかのように愛馬のトーガがひひんと鳴いた。


「じゃ、少し待っててねトーガ」


丘の上の大きな木の下に繋ぎ、馬車とともにお留守番をお願いした。生活に必要なものを買い出しに行くついでに街の様子を観察するのだ。




何度訪れてもこの国はいつでも栄えており、人で溢れている。海に面したこの国では海運業が盛んだが、この国には船乗りだけでは無く技術を売る者も多く集う。魔法道具を作る者や武器を作る者、防具を作る者……彼らは船乗りに自分の道具を売り、また輸出もしている。この国に無いものは無いと言えるほどである。




まだ昼前であり、朝市は活発である。


「お嬢さん!獲れたての魚どうだい!!この時期に獲れるドツは脂も乗ってるよ!」

「いらっしゃいいらっしゃい〜瑞々しい野菜売ってるよ、おひとつどうだい〜!」


どれも美味しそー、お腹すいたなあ。でもまずは、トーガのご飯を買わなきゃ。あの子ったら、プルの実大好きでそれが無いと歩かないときもあるんだから。わがままなんだからぁー


「おじさん!プルの実10個!」

「おっ!お嬢さんまいど!じゃあ10ドウな!可愛いから2つ付けとくよ!」


ラッキー!やっぱり、若い娘の見た目だと若干人が甘くなるのだ。好きなように容姿を変えられる私がこの姿にしている理由の一つでもある。


プルの実をおじさんから受け取る途中で、広場の少し奥から怒声が聞こえた。なにかを叱っている?


「お嬢さん、商人か旅人かの娘さんかい?」


頷く私を見ておじさんがこそっと耳打ちしてくれた。


「この国じゃ最近になって、獣人のみ奴隷制度の許可が降りたから、たまに居るんだ、ああいう見せびらかして歩くやつがな。」


なるほど。カバンにプルの実を押し込みつつ、軽くおじさんにお礼を言って、広場の奥に近づいてみた。




「オラ!早く歩け!」


そこには鎖で繋がれた獣人の少年たちがいた。年もバラバラで、上は10代半ばだろうか?下は6歳ほどにも見える。


足首と手首と首に付けられた鎖は重く頑丈そうで、特に足首に付けられたものは歩くたびに擦れるのだろう、血が出ている子が多い。


「あの子…」


そんな中、1人の男の子に目が止まった。

1番年上そうに見えた彼は、前の子の耳元で囁き、なにか元気付けたように見えた。実際、前の子の足取りは微かだが、しっかりとした。


劣悪で辛いだろう中で、まだ他者を気遣えるのか。

少しだけ、彼に興味が湧いた。


奴隷たちを連れた男の人は、叱りながらもアーチという商会へ入って行った。あそこの商会で扱っているらしい。


「やだわ、獣人なんて…獣臭いったら…」

「おいやめとけ、噂じゃ金持ちが愛玩動物として飼うのが流行りらしいじゃないか」


獣人見たさに集まっていた人だかりは段々と散っていった。




にしても、奴隷…獣人、か……


彼のボサボサに生えた黒髪から、僅かに覗いた瞳は美しい黄金をしていた。




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