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今回と出会いまでは少しシリアスかもですが、運命の彼と出会っちゃえばもう、私情挟みまくり聖女です。
遥か昔、魔法使いの存在は極めて貴重であり、指先から小さな炎を灯すことやそよ風を起こすことでさえ素晴らしき魔法と褒め称えられる能力であったのだ。
そのような時代にある王国で1人の魔法使いが誕生したのだ。彼女の能力は様々な国で現れ始めた魔法使い達が遠く及ばないような、まさに神の使いとも言えるであろう力であった。人を癒し動物を癒し植物を癒し果てには大地まで癒す。このような卸業を見た人々は彼女をこう呼び始めた。『聖女』と。
彼女は求められるままにその神の力を使い続けた。はじめは、身近な人の為、大切な人の大切な人の為、そしてその連鎖は徐々に彼女を大きな渦の中に巻き込んでいった。国王からの命令により国お抱えの聖女となった後は、自身の力を国の為に使い続けた。お陰で聖女のいる国は近隣の国を侵略し合併し、それはそれは大きな国となった。一時期の平和が訪れたのもこの頃だった。聖女はこの力の使い方が正しいと信じてやまなかった。大切な人を守る為なのだと信じていたのだ。
しかし、聖女の力はあまりにも膨大すぎた。大きすぎる力だったが故に全ての国が彼女を奪い取ろうと戦争が起きたのだ。この戦争は何年も続いた。彼女が守ろうとした全てが消え去り、いくつもの命が散っていった。
自分の力の使い方が間違っていたのか、自分の存在が引き起こしたものなんだと理解した時、彼女は手紙を全ての国王の元へ送り姿を消した。
―10年に一度貴公の国を訪れ祝福を授けよう―
この物語は大戦争から数百年後の世界のお話である。