オルゴールの音色
夜、静かに眠れるように
オルゴールの箱を開けよう
真ん中で回る恋人たちの舞踏会が
人知れず、この部屋の片隅で始まる
朝、寝癖のままで飛び出して
夜、足取り重く帰ってくる
そんな僕の頭の中は不自然な程冴えわたっていて
午後十一時を回った今でも文字の流れに囚われている
意識は、募る言葉に向いたまま
鋭く細かい刺激の渦から、未だに逃れられないでいる
お休みは、いつだい
部屋の光は、消さないのかい
耳に合わせて響く音楽はいつだって心地いいけれど
眠る瞬間まで鳴らしとくわけには、どう考えてもいかないだろう
でも
こんな時だから
今日というこんな時だからこそ、心を癒すあの歌が恋しい
僕の心に雨を降らせて
意識の底まで慰めるような
そんな歌が、今日は恋しい
ノスタルジックな優しい歌は
透明な音で二人を包む
ベッドの上に横たえながら
彼らを眺めている僕は
まるで神様にでもなったみたい
遠くから、ただ見つめているだけで
ささやかな幸せを、ほんの小さな零れるような幸せを
確かめながら、今日は眠れる
夜、静かに眠れるように
オルゴールの箱を開けよう
ただそれだけで
たった、それだけで……