8 おかえりなさい!お風呂にする?ご飯にする?それとも真由子の恋愛経験物語聞く?
浜辺を後にした私達は、大地の家に来ていた。
靴にも服にも砂が付いてしまい、夜も遅くなったこともあり、私の両親に電話をした大地はそのままバイクで運んでくれたのだ。
「ただいま~」
「おかえりなさい!って、何やってきたの!」
先に玄関ドアを開けて進む大地を迎える女性の声。
大地の奥さんである真由子さんだ。
砂まみれになった大地を見て苦言を呈した後は、私に気づいて快く迎えてくれた。
先にお風呂を頂き、野菜とお肉がたっぷりのお夕飯をご馳走になった。
「え~?そんなことしてきたの?バッカみた~い」
笑いながら私の話を聞く真由子さんは、ダイニングテーブルにホットココアを二つ持ってきて言った。
「まー、あいつ上手な励まし方できないだろうからねー」
しょうがない男だ、と呟く彼女は苦笑を浮かべている。
「でもねー。あいつ優花ちゃんのことすごい気にかけててさ。どうしたらいいーって私に相談してくるくらい」
「もー、そんなおおげさにしなくてもいいじゃん!なんかすごい恥ずかしいし!」
「まーそう言ってあげないでよ。それだけ可愛がってるってことなんだからさ」
それが恥ずかしいのだが。
「しかし失恋かー。キッツいねー。私も経験あるなー」
「えっ。真由子さんもあるんですか!?」
「あるよー。あったりまえじゃーんアハハハ!そう、あれは私がまだうら若き高校生の頃……」
言葉の調子を変えて語り始めた真由子さんを相手に、そのまま恋愛トークで盛り上がった。
そのうち、告白した相手がどれだけかっこよかったか。どんな気持ちで告白したか。断られてどれほどキツかったかを白状する形となった。
親にも話せなかった胸の内をさらけ出したことで感情が高まり、泣いてしまった。
真由子さんはそんな私を優しくあやすように、でも励ますように接してくれた。
その後、真由子さんは渾身の恋愛話をフル活用し、話を盛り上げてくれた。彼女の話はなぜかどうしようもないことばかりで、そんな話は私の心を和ませてくれた。