7/9
7 バカと素直
呆れながら三度目の叫びを聞いた私は、改めて周囲を見渡してから空を仰いだ。
星が瞬いている。広い。これ程までに広かったか、と何気ない発見を胸に収める。
まぁ……少しだけならいいかもしれない。
四回目の叫びを終えて息をつき、上下した肩を支えるよう膝に両腕をつく彼の右隣へ、ゆっくりと歩き出す。
下から見上げてくる彼の目に、澄ましたように目だけで答える。
口角を上げた彼はもう一度背筋を伸ばすと、大きく息を吸った。
二人分の叫び声が闇の向こうへ吸い込まれる。
しばらく声の行方を見届けた後、彼はへたり込むように腰を下ろした。上半身を支えるように両手を後ろについて、息を整えている。
何か、胸の内にひっかかって蓋をしていたものが、取れたような気がした。
彼が渡してくれた上着が風に揺れる。交差した両手で抱えるように服を引き寄せる。
気持ちいいだろ?と聞いてくる大地に、うん。と素直な返事を送る。
軽く笑い声を上げながら、よかったな、と返事が帰ってきた。