第9話
「まずはあなたの数を増やしましょう」
「は?」
「たぶん……というか絶対にあなたはこのさき死にまくります。死んだらここ天界に送られるのですが、天界に来て生き返ると時間が巻き戻ります。序盤だろうが終盤だろうが最初からです。レベルもリセットされます。だから死んでも天界に送られないようにあなたの命の数を増やすのです。残機を増やすということですよ」
一回死ぬとゲームオーバーで天界に送られレベルがリセットされる。だから俺が死んでもいいようにマリオみたいに『俺×99』とかにするということか。
「本当にゲームみたいだな、この世界は」
「はい。だけどゲームではありませんよ。ゲーム的な要素がある現実の世界です」
「じゃあ早速やろうか。で、どうやって残機を増やすんだ? 亀を無限に踏みまくればいいのか?」
「いえ、マリオじゃないんだから敵を踏みつけたところでこの世界にスコアはありませんからね。ポイントは入りません。あなたにやってもらうのはゲームとかでもよくある別の方法ですよ」
「別の方法?」
ゲームで残機を増やす方法はいくらでもある。例えば1UPきのこなどの特殊なアイテムをとるとか、ボスなどの特定の敵を倒すとかまだ色々ある。
「あなたにはボスを倒してもらいます。はじまりの町の近くにあるダンジョンの」
「いやいやいや。無理だろ、どう考えても。俺はレベル1だぞ。俺ははじまりの町の住人が石ころで倒せるゴブリン戦車も倒せない雑魚だぞ。いきなりボスなんて倒せるわけが無いだろ」
「大丈夫ですよ。ボスを倒すと言ってもボスのモンスターを倒すのであってボスを倒すわけではないんです」
…………。
……?
「どういうことだ?」
まったく意味がわからない。
「あなたに倒してもらうのはボスではなくボスの子供ということです。ボスを倒すことで残機が1増えるのではなく、特定のモンスターを倒すことで残機が1増えるのです」
なんとなくわかった。つまりこういうことだろう。
例えばボスにボスゴブリンという奴がいたとして、その子供もボスゴブリン。そのステージのボスであるボスゴブリンを倒したから残機が増えるのではなくボスゴブリンというモンスター種を倒すことで残機が増えるということか。
「そう。そういうこと。しかもボスモンスターは貰える経験値がそこらへんにいるモンスターよりも多いですし、ボスと言えど子どもは弱い。簡単に経験値と残機が手に入るので効率が良いやりかたです」
確かに効率のいい方法だ。
だけど。
「ボスモンスターに子供なんているのか? いるって決まってないじゃないか。いなかったらどうすんだよ」
「はい。ボスモンスターは一体しかいないので子どもなんていませんよ」
「は? じゃあ無理じゃないか」
「いないのなら作らせればいいじゃないですか」
「誰が作るんだ」
「フッフッフ……」
神様は不敵に笑う。
「はじまりの町の近くにあるダンジョンのボスはつがいなんですよ。オスとメスの二匹で一体のボスモンスターなんですよ」
「ということはまさか……」
「……そうです。交配するんですよ。交配して子供を産ませまくらせるんですよ。そうすれば無限にボスモンスターを増やせます。生まれてきたばかりの何もできない子供を殺せばいいんです」
最悪な方法だった。確かに効率は良いが、殺すために子供を生ませてその生まれたばかりのボスモンスターを殺して経験値と残機を増やすなんて……さすがにクズすぎないか。
神は神でも邪神だよこいつは。
まあエクストラ地獄ハードモードで俺が生きるにはこのやり方が最適解なのだろう。
「…………」
「どうしたんですか? そんなクズ野郎を見るような顔をして」
「いや……神様。お前は俺の最高のパートナーになりそうだなって思って」
「ええ。私もそう思いました。これから長い人生になりますがよろしくお願いします」
「プロポーズみたいだな」
俺がからかうように言うと神様の顔がカッと赤くなった。
「か、勘違いしないでくださいっ! 魔王を共に倒すパートナーって意味ですから!」
「分かってるよ」
こうして俺たちは魔王を倒すための最初の一歩を踏み出した。
魔王を倒すなんて勇者みたいでカッコいいけどやることはクズ野郎みたいだが仕方ない。
これがエクストラ地獄ハードモードでの生き方だから。




