第6話
気が付くと辺り一面が雲だった。ここを俺は知っている。前に死んたときもここで目が覚めた。という事は俺はまた死んだのか。
「あなた。また死んだんですか」
後ろから声がして振り返ると神様がいた。
「いや無理だろ。あんなもの倒せるわけがないだろ。なんでゴブリンと戦車が合体してんだよ。なんではじまりの町から徒歩15分の森にあんなものがいんだよ。普通、物語中盤にでてくる奴だろ」
「まあエクストラ地獄ハードモードだから仕方がないですよ。はじまりの町の人達はあんなの石ころがあれば普通に倒せますけどね」
「石ころで⁉」
「ええ。みんなレベルが高いですから」
俺は一発でやられてしまったからレベル1とかなのだろう。じゃあやはり鍛えまくってレベル上げをしまくれば俺も石ころとかで倒せるようになるというのか。
わかった。それはいい。
が。
「宿屋ババアが俺に厳しかったんだけど、それもエクストラ地獄ハードモードだからなのか?」
しかも超美人のババアだったらまだいいが、宿屋のババアは普通のババアだった。それとギルドの受付の女も美人じゃなかった。
「そうですよ。イージーモードだったら宿屋の店主は慈悲深い超絶美少女でしたよ。金がなければ一晩くらいはただで泊めてくれるようなね」
くそ。そうだったのか。エクストラ地獄ハードモードは敵の強さだけじゃなくて俺の人生もエクストラ地獄ハードモードだっていうのか。
「じゃあイージーモードにしてく――」
「無理です」
「何でだよ。食い気味で言うな」
「言いましたよね? 異世界転移する際に。クリアしなければ難易度変更はできないって。難易度を変えたければクリアしてください」
「クリアって言ったって……無理だろ。というかどうすればクリアになるんだよ。ラスボスでもいるってのか?」
「はい。ラスボスの魔王を倒せば終わりです」
「やっぱりいるのか、魔王……。ゴブリンが生えた戦車があんだけ強いんだから魔王は一体どれほど強いというんだ……」
「超強いですよ。見ますか? 魔王の姿」
「え⁉ 見られるのか」
「ええ。まあ。というかそこにいますけど」
神様は指を差す。指先を見るがそこには何もない。
「どこにいるんだ? まさかお前がラスボスということか?」
「そんなわけないでしょう。私の指の先です」
小さくて見えないのかと目をこらすがやはり何もない。指先を見てもしいて言えば太陽くらいしかないが。
「まだわからないんですか? 太陽ですよ」
「太陽がラスボスなのか⁉」
神様は頷いた。
「まあ正確に言えば太陽ではなく、魔王なんですが。魔王があなたの世界でいう太陽の役割を果たしているのです」
どう見ても太陽にしか見えない。普段見ていた太陽と同じ輝き同じ大きさ。
ん?
「魔王が太陽ということは魔王も太陽と同じ大きさということか?」
「はい」
「宇宙にいて太陽と同じくらいの熱をもっている?」
「はい」
「無理だろ‼ 絶対に倒せるわけがない!」
神様はやさしく微笑んだ。
「大丈夫。勝てますよ。……がんばれば」
「なんだよ。頑張ればって。世の中には頑張ってもどうにもならないことだってあるだろ。これがそれだ」
「いけるいける」
なんでそんなに軽いんだよ。俺に本当に勝てるというのか。いや待てよ。嘘じゃないか? 太陽がラスボスとか嘘に決まっている。魔王が異世界の太陽の働きをしているなら魔王が死んでしまったら異世界はどうなるんだ? 太陽がなくなったら地球は急激に冷やされて生物はすべて死ぬんだったよな? この世界の太陽が魔王なら……。
「魔王を倒しちゃだめじゃねえか」
「いいんですよ。魔王が死ねば新しい太陽の代わりがいますから」
「第二の魔王ってことか?」
「いえ。私です」
「え? 神様が太陽になんの? 太陽って誰でもなれるものなのか」
「神様にしかなれませんよ。あなた神様ナメてるでしょ」
神様は頬を膨らませる。
「言っておきますけど今の魔王ももともと神様だったんですよ。だけど悟りを開いちゃいましてね……魔王になっちゃったんですよ」
「なんで悟りを開くと魔王になるんだよ」
「私は悟りを開いてないんで知りません」
「そうか……」
なんか怪しいな。こいつが本当は悪い奴で俺を利用して本当は善人の魔王を殺させようとしているんじゃないか?
俺が訝しげな眼差しを向けていると、神様は不服そうな顔をする。
「なんですか。その目は。信じてませんね? 本当に魔王は悪い奴なんですよ」
「じゃあ証拠を見せてくれよ」
「わかりました。じゃあ行きましょうか」
「え? どこに」
「宇宙へ」




