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第5話

 うっそうと茂る森に俺は来ていた。鳥の声や虫の声に混じって聞いたことの無い変な生き物の鳴き声も遠くからしてくる。街から徒歩10分のところにある『はじまりの森』である。

 

 クエスト名『スライム退治』。

 ギルドで受注できるクエストの中で一番簡単らしいのでこのクエストを受けた。普通、クエストを受注するのに金を払わないといけないらしいがこの『スライム退治』は無料で受注できる。だからなのかクリアしても報酬はゼロだ。経験値をやるから初心者は雑魚を狩れということだろう。

 俺が今いる世界――エクストラ地獄ハードモードの世界の敵はどの程度の強さなのか確かめるにはちょうどいいクエストだ。

 

 しかしスライムいないな。15分ほど森をうろうろしているのだが、変な動物の鳴き声がするだけでさっきから出てくる何も気配はない。もしかして地面からわいて出てくるのか、と考えて地面に手を付けると震動を感じた。でかい何かが動いているような。

 きゅらきゅらとかがたがたと音が聞こえる。まるで戦車が移動しているような音だ。

 本当に戦車の音なのか? 異世界に戦車なんてあるのか? 町並みを見ると中世ヨーロッパって感じだったが。街中を走る車は馬車だったしな。

 

 数秒、何がくるんだろうなと待っていると前方から来たのは本当に戦車だった。厚い装甲におおわれた鉄の塊に大きく立派な砲台、どんなところでも走れそうなキャタピラー。攻撃力、防御力、機動力を兼ね備えた兵器。

 

 俺は草陰に身を潜めた。

 なんでこんなものが異世界にあるんだよ。

 と思ったけれど異世界だから何でもあるのかもしれない。問題はこの戦車が敵なのか味方なのかということ。俺は武器なんて持って来ていない。ギルドの受け付けの女はスライムくらいは素手でも倒せるということだったので。というかそもそも金がないんだから武器が買えなかった。

 

 こんな奴がいるなんて聞いてない。戦闘になったら倒せるわけが無い。戦車から逃げることも難しいだろう。無駄だとわかっているが俺は無意識に木の枝を拾って身構える。

 戦車が近付いてくると俺はこの戦車が敵だと覚った。

 戦車の上のところに人がいる。よく見るとゴブリンだった。よく漫画やゲームなどで雑魚敵として出てくるゴブリンが戦車から生えていた。

 

 いや生えているのではない。戦車に乗って上半身だけを外に出しているわけでもない。

 ゴブリンの下半身が戦車なのだ。上半身が人間で下半身が馬であるケンタウロスのように上半身がゴブリンで下半身が戦車という生き物なのだ。

 

 勝てるわけが無い。何なんだこいつは。なんでこんな奴がはじまりの町から15分のところにいるんだ。なんでこんな強そうな奴が森で暮らしているんだ。人間の住む街を襲えるだけの力を持っていそうだが。街の人は誰も怯えた様子はないしおそわれた形跡もない。

 

 町にはこいつを倒せるだけの戦力があるのだろう。

 これがエクストラ地獄ハードモードか。クエストがイージーだとしてもこんな強そうな奴が出てくるのか。

 エクストラ地獄ハードモードを選んだことに少し後悔した。こんなやつをどうやって倒せばいいんだよ。

 

 大人しくスライムでも倒しまくってレベル上げでもすればいいか。ずっと倒し続ければゴブリン戦車をワンパンで倒せるくらいレベルが上がりそうだし。

 そう思ってこの場を離れようとしたその時。

 

 パキッ。

 

 落ちていた枝を踏んでしまった。妙に大きな音に聞こえた。

 いや奴に聞えるわけが無い。奴は轟音を鳴らして進んでいるんだ。聞えるわけが無い。

 そっと草陰から様子をうかがうとゴブリンはその場で停車してこちらを見ていた。砲台がこちらを向いている。

 やばい。聞かれたのか。見つかってしまったのか。

 顔を隠そうとした瞬間、砲台から轟音が鳴った。

 

 また俺は死んだ。


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