第二話
口の中がじゃりじゃりして目が覚めた。草が口に入ったようで唾と共に吐き出す。
「どこだここ……?」
俺はちょっとした丘の上に寝ていたようだ。遠くに町が見えた。
頭痛がする。後頭部を手のひらでガンガンと殴っていると頭の中の靄が晴れていき、何が起きていたのか次第に思い出してきた。
そうだ。そういえば俺は異世界転移したんだっけ。
ということはここが異世界か。エクストラ地獄ハードモードの異世界。
どんな世界なんだろうか。モンスターが強いと言っていたがまあがんばれば余裕だろう。
それにしてもあの神様、もうちょっと丁寧に異世界転移できないのか。頭から落ちたのか分からないが結構頭が痛いぞ。
頭をさするが全然痛みが消えない。
まあいいや。異世界に来れたんだったら。とりあえずどうしよう。あそこに見える街に向かえばいいのか?
俺は丘を降りて道を行く。
特に何もない。誰もいないしモンスターもいない。ただひたすら一本道。
一時間くらい歩いたころだろうか辺りが薄暗くなってきたときようやく町の入り口にたどり着いた。
やっとついた。遠すぎる。あの神様なんで街に転移させなかったんだよ。今度会ったら文句言ってやる。……会う機会があるのか分からないけど。
街はそれなりに栄えていた。すべて同じような形の煉瓦でできた家が並んでおり、いかにもな異世界の街並みだった。
道は馬車が通っており、道行く人も異世界っぽい服装をしていた。ふと俺の服を見る。大丈夫だろうか。浮いてないか? ユニクロで買ったTシャツにジーパン姿なのだが。
通行人は俺を見ることもなく歩いているから問題ないと思うが。
とりあえず宿屋を探そう。ぶらぶらと歩いているだけじゃ見つかるわけが無い。俺はベンチに腰かけている男に声をかけた。
「すいません。宿屋はどこにあるかわかりますか?」
「この道をまっすぐ行ったところに『奴隷最高』という店がある。そこに行きなさい」
なんだその名前。本当に宿屋か。
「宿屋なんですかそれ?」
「違うよ。客を奴隷にする店だよ」
「宿屋を聞いてんだよ!」
「そう怒るな。怒るって事はよそ者だな君は。最近、この町では道を聞かれたら奴隷商人の店に案内するっていうギャグが流行っているんだよ」
「あ、そうなんですか」
知らねえよそんなこと。というか奴隷なんているのか。さすが異世界だ。
「宿屋は『奴隷最高』の隣の店の『スレイブキャッチ』というところだ」
「ありがとうございます」
「礼には及ばんよ。じゃあね」
俺は一礼すると男は去って行く。
おかしい奴に話しかけてしまったと一瞬後悔したが、冗談を言うのがこの町の流行りなら仕方がない。異世界だから常識なんて通じるわけが無い。まあ最後にはちゃんと教えてくれたからよしとしよう。
俺は男に教えてもらったとおり歩く。その途中に気が付いた。
「スレイブキャッチも奴隷の店じゃねえかよ!」
町人がクソ野郎。これがエクストラ地獄ハードモードか。