第12話
いつも通り地上に落ちてきて頭をさする。はじまりの町を目指して歩き、ついたころには辺りは暗くなっている。
「なあいつも思うんだけどさ。はじまりの町からスタートできないのか?」
「無理ですね。人目につかないところに落とさないと騒ぎになっちゃいますから。それにどちらにせよこの硬いアスファルトの地面に頭から落ちるとさすがに死にますからね。丘の芝生だからちょっとした頭痛で済んでいるんですよ」
じゃあ転送のやり方を変えろよ、と言いたかったがどうせこいつにはできないだろう。
「で、仲間を集めようと思うけどどこに行けばいいんだ? やっぱり酒場か?」
「そうですね。ここは町の人達に聞いてみましょう」
「いや、それは止めといたほうがいい」
「え? なんでですか?」
「町の奴らはクソだからね」
神様は小首を傾げた。
*
「あいつらクソですね。本当に! 私は神様なのに!」
町の人達にどこで仲間を見つければいいのか聞いたが、この町の連中は奴隷商人の店しか紹介しなかった。
「なんでどいつもこいつも奴隷商人に売り飛ばそうとしてくるんですか!」
神様はご立腹のようだった。まあそりゃそうだよな。俺だって最初来た時に宿屋を聞いたら『奴隷最高』という店を紹介されたときは怒ったからな。
俺はもう慣れたからいいけど。
「奴隷なんて文化は古いんですよ。人間を金で買うなんて……人間は物じゃない!」
「そうだな」
神様は慈悲深い。ダンジョンのボスを家畜にしようと提案してくるやつと同一人物とは思えない発言だ。
そうだ。神様の言う通りだ。人間は物じゃない。人間の自由は金で買えないんだ。買ってはいけないんだ。奴隷なんてあってはならない。
「やっぱり奴隷を買いましょう」
「え?」
「奴隷を買いましょう。ここの奴隷は奴隷といっても強いので奴隷を仲間にして一緒に戦ってもらおう」
「いや、確かに俺たちよりは強いかもしれないけど。奴隷を買うなんて……。お前さっきと言ってること違うじゃん。人間は物じゃないって言ってただろ」
「買うんじゃないです。解放するのです。私たちの手で奴隷たちを自由にするのです。奴隷をちゃんと人間として仲間に迎えればいい」
「だけど奴隷を買うにしても金がないだろ」
「そこらへんはちゃんと考えがありますよ」
神様は胸を張って言った。
一体どうするつもりなんだろう。