二日目 彼女の人生
大和和人と共に死んだはずだった。
しかし目を開けた先にあったのは見覚えのある風景だった。
終わったはずの人生がまた動き出した。
二度目の人生の再スタート
あれから数年が経った。
そして色んなことを経験した。例えばオムツ替えをされた事だ。
あれは屈辱だった。
(やべぇ、トイレしてぇーよ我慢出来ねぇーよこれやべぇーよ)
今までトイレで尿を足すのが当たり前だったが今思えばオムツでトイレなんてした覚えなんてない。
気持ち悪い感触なんだろうな。小ならともかく大ならもっとやばい。これを数年我慢するのはやばい。これは0歳児ながら便器でトイレする天才を誕生させるしかない。そう思っていた矢先俺は漏らした。漏らしてしまったのだ。
「うぎゃー」
(あぁー)
俺は爽快感を覚えた。
他にも味もしない飯を喰わされたりお腹を叩かれながら眠ったりもした。
でも初めて歩いたり喋ったりした時の親の顔はとてもとても良い顔だった。
親のこんな顔を見たのは初めてだった。
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俺は幼稚園に入学した。
「麗、今日から幼稚園生よたくさん友達作りなさい。」
「はーいはい」
正直に言って俺は確か幼稚園生でほぼ全ての人と仲が良かったのを覚えている。
ただ一人を除いて…
「うわぁー懐かしいな」
つい口に出てしまった。この幼稚園に通っていたのは確か十年以上前の話。
「確かここにラクガキしたっけ」
とその場所を見たがラクガキはどこにも見当たらなかった。
当たり前だ。ここは過去の幼稚園。俺がラクガキしたことも全てなくなったんだ。そう考えると少し悲しい。
「何してるの?」
とクラスの仲間が声を掛けてきた。たしかこの子の名前は…
「私、桜 葉月って言うのあなたは?」
あれこんな子居たっけ?と思った。しかしそれ以上に
「か、可愛い…」
俺は小さい子が好きだった。好きと言ってもロリコンと言う訳では無い言う訳では無いのだ!
「俺…じゃなくて僕は夢月麗って言うんだ」
「麗君ね。よろしく」
冷たい挨拶だった。それだけ言って彼女はどっかに行ってしまった。
正直あの子のことを何も覚えていなかった。あんなに可愛い子のことを。
「はい、今日は折り紙であそびまーす!!」
先生が言った。折り紙なんて何年ぶりだろうか。
「なぁ麗、どっちが折り紙上手にできるか勝負だ!」
クラスの男の子が言ってきた。やる気は出なかった。
一方葉月は誰とも関わらずずっと一人で折り紙をしていた。
俺はずっと葉月の方を見ていた。可愛いだけじゃなくあの子は何かほかの子と違った。
「麗!俺は箱を作ったぜ!凄いだろ!」
自慢をしてきたので俺はガーベラを作って見せてあげた。
「はぁあ!!何だよ!これ!!」
俺は葉月の隣に座った
「何作ってるの?」
「無」
無を作ってる?どういう事?
そのまま葉月はどっかに行ってしまった。
「麗!お迎えよ」
迎えの時間だ。幼稚園の下校はとても早い。
だが前世はスマホばっかり触っていたので正直家に帰っても積み木やら何やらつまらない遊びをさせられるだけでつまらないはやく大人になりたい…俺を死なせた和人絶対許さない。
俺は母親に引っ張られながら後ろを見ると葉月はまだ一人で幼稚園にいた。
「麗幼稚園はどう?楽しい?」
「普通」
「何よ普通って楽しいよーママーとかあるでしょう?」
「普通なんだから仕方ないだろ母さん」
「相変わらず可愛くない子ね」
俺は幼稚園生らしくない性格をしていた。
そもそも幼稚園生らしい性格ってなんだよ。精神年齢は二十歳超えてんだよ。
俺は家の中ではずっと二度目の人生をどうするか考えていた。
一回目は得しない選択ばっかりしてきたら二回目は間違えたくない。
とりあえずあの自分の世界に閉じこもってる葉月と仲良くなるか。幼稚園生であの性格は将来が心配だし。明日からはアプローチを強くしよう。そう決心した。
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次の日から俺は積極的に彼女と関わった。
そして分かったことがある。体操服に着替えるとき彼女は必ずトイレでに行く。みんなと着替えるのが恥ずかしいのだろうか?実は女子と一緒に着替える俺も恥ずかしい。
次に彼女は自分の肌に触られるのを極端に嫌がる。俺も彼女以外に触られるのは少し嫌だ。
そしてとある作業中のこと
「葉月ハサミ使う?」
「ひっ!!!!」
葉月は通常ではありえないような驚き方をした。驚きっていうより怖がってるように見えた。
「どうしたの?」
「なんでもない」
そうして何事も無かったようにハサミを使い始めた。
「麗!帰るわよ」
「待って母さん。今日は葉月ちゃんと残りたい。葉月ちゃんの迎えが来るまででいいから!」
「じゃあ母さん買い物に行ってくるからね!」
「わかったよ」
そうして俺は葉月と残ることにした。勿論葉月には内緒で。
「やぁ葉月」
「何でいるの?」
「今日は迎えが遅れるから少し葉月と遊びたくてね」
「私は遊びたくない」
「僕は遊びたい」
「いいからあっちいって!!私に近寄らないで!!あと私のこともみないで!!」
「わっわかったよ」
そうして離れて葉月を観察した。
俺の記憶を辿れば昔の葉月は確かあんな性格ではなかったような気がする。確かに友達が多かったような覚えはない。でもあんなに人を避けようとするような子ではなかった気がする。
でも葉月のことはあまり覚えてないからその記憶も間違いたのかもしれない…
そんなことを考えながら葉月を見ていたら両親が迎えに来た。
「葉月迎えだ」
「さっさと帰るわよ早くしなさい」
と言って葉月の腕を掴んで帰っていった。
「あれはやばい…」
なんだか見てはいけないものを見てしまった気分になった。
「麗帰るわよ」
そして俺も帰った。
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わからないどうやったら葉月と仲良くなれるのかがわからない。
そしてあの葉月の両親の事もわからない。
どうしていつも少し遅れて迎えに来るんだ?どうしてあんなに強引に腕を引っ張って帰ったんだ?
これも葉月の人生だから仕方ないかもしれないでもどうしても許せなかった。
「やぁ葉月」
「なに」
「昨日はごめんね」
「別に」
「でもあそこまで僕のこと避けなくても」
「昨日はちょっとね…」
「何か事情があったんだね」
「じじょう?が何か知らないけどそうよ」
「あそばない?」
「なに?突然」
「いつも一人だからたまには二人で遊ぶ楽しさを知ろうよ」
「楽しさを知る…わかった」
「よし、じゃあ早速…」
ここで疑問に思った。幼稚園生ってどんな遊びをするんだ?
いつも先生がやれって言ったことをしてきたけど自分で考えてあそぶことなんて知らないぞ。
「どうしたの?」
「あぁ…えっと折り紙をしよう!」
「わかった」
そして折り紙を俺たちは始めた。初めは無言でやっていたけど俺の折り紙技術で驚かせてだんだん会話が生まれていった。
「どうしてそんなに上手いの?」
「才能かなうん」
「私にも折り方教えてくれない?」
「いいよいいよどんどん聞きたまえはっはは」
「ときどきおかしくなるよね君」
前は無を作ってると言ってたけど今回は真面目に作っていたそして
幼稚園生は折り紙ぐらいですぐ仲良くなれるなと思った。実際は二十歳超えのお兄さんと幼児なんだが。
折り紙が俺と葉月の関係を少しずつ良くしていった。
少し月日が流れて暑さを感じるぐらいになった。そしてプールの時間がやってきた。
(おい…おいおいおいおい、これはまさかこの小さい女の子達と一緒に着替えなくてはならないのか!?)
これはまずい…非常にまずい状況だった。何故なら俺の理性が耐えられそうにない。
そもそも待て、なぜこんなに小さい女の子に反応してしまうんだ?もしかしたら精神年齢は大人でもやはり異性の対象は同い年ぐらいなのかもしれない。いや、そうに違いない。俺はロリコンじゃない。
そいえば葉月の姿が見えない。確か着替える時はいつもトイレだったな。何故だろうなんだかとても見れないのが悔しかった。
「あれ、葉月は着替えなかったの?」
「プールは嫌いだから」
「何で?」
「どうでもいいでしょ」
葉月はプールが嫌いなのか、肌を見られるのも触られるのも嫌いだったな確か。
プールは基本自由時間だった。暇だったので少しだけクロールをした。
「麗お前すげーな!」
「麗君っていつも葉月ちゃんといるからあまりどういう人かわからなかったけど泳ぎが上手な人だったのね。」
少し目立ってしまった。二度目の人生はあまり友達は控えめ行く予定なんだ。目立った行動は控えよう。
「すごいね麗」
「だろ?」
葉月が珍しいプールの外から褒めてくれた。少し嬉しくなった。このまま大人になるまで葉月と一緒にいたいと思った。
前世では大きくなってから異性の友達は少なかったから今のうちに確保しとこう。
そんな事を考えている時ふと葉月の顔を見るとプールに入っているみんなを羨ましそうに見ていた。なぁ、葉月本当にプールが嫌いなのか?
そして次の日、葉月は幼稚園に来なかった。
なぁ葉月、悩みがあるなら言ってくれ、お前はまだ幼稚園生なんだぞ。
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次の日もまた次の日も葉月は幼稚園に来なかった。葉月がいない幼稚園はとてもとても暇だった。どうしたんだろうか?高熱でも出したのだろうか?夏風邪は馬鹿が引くものだと思っていたがまさか葉月は馬鹿だったのか?俺は葉月のことばっかり考えていた。
「先生、葉月はどうしたんですか?」
気になったので直接先生に聞いてみた。
「家庭の事情みたいなのよ、幼稚園生には分からないよね」
家庭の事情っか。俺の頭の中にあの両親が強引に腕を引っ張っていく姿が思い出された。その瞬間俺は嫌な予感がした。
肌を触られるのを嫌がる、着替える時はいつも別の場所、プールに入るのは嫌い。これらのことを繋げて考えてみると、彼女は体に何か秘密があるのかもしない。
俺は家の中でずっと葉月のことばっかり考えていた。次に葉月が幼稚園に来た時、本当の気持ちを聞いてみよう、そう決心した。
次に葉月が幼稚園に来たのは約一ヶ月後だった。朝幼稚園に来た時彼女は夏なのに厚い上着を着ていた。
「やぁ久しぶり」
「…」
「一ヵ月ぶりだね」
「そうね…」
「一ヵ月も何してたの?」
「言わない」
「言いたくないんだね。でも教えてくれないかな?気になるんだよ葉月のことが」
「言ったところで何も変わらない。変わらないなら言うだけ無駄。もう関わらないでお願い」
そうして葉月は俺から離れてどっか行ってしまった。
「なんでだよ…葉月…」
「なぁ、母さん」
「どうしたの?」
「言いたくても言えないってどう気持ちなのかな」
「どうしたの?麗。何か悩みでもあるの?言った方がスッキリするわよ。」
「実はクラスの葉月って子がさ…」
俺は葉月について母さんに話した。
「そう、葉月ちゃんが…これはまずいかもしれないわね」
「どういうこと?」
母さんは何か分かるのだろうか?
「あの子虐待されてるかもしれないわ」
「何で分かるの?」
「まず両親が可愛い娘を強引に腕を引っ張るなんて信じられないわ」
まぁ、理由がない限りそうだろうな。
「次にプールに入らない、身体を触られたり見られたりするのを極端に嫌がる。これは身体に何か秘密があるのかもしれない、そして最後にハサミを見せた時の反応がおかしいって点ね。おそらくハサミって言うより刃物が怖いんじゃないかしら。刃物で何か嫌な事をされたのかもしれないわ」
「それがもし真実だとしたら葉月が危ないんじゃないか!!母さんどうにか出来ないの?」
「今のはただの私の考えであって真実かどうか分からないわ。それに考えすぎだと思うしね。それに事実だとしても赤の他人の私が言ったところでどうにもならない。誤魔化されるだけよ。」
「そんな…」
その夜母さんが言ったことについてずっと考えていた。もし母さんの仮説が正しいのであれば葉月は今も地獄を見つずけている事になる。幼稚園生にとってそれは耐えられるものでは無い。どうして耐えるんだ葉月。君が言うだけで救われるんだぞ。
何も出来ない自分が憎かった。
その夜夢を見た。
「彼女の人生は狂わされた。もう既に決まっていた人生を新たなる例外によって道から逸れてしまった。なので私は決断した。彼女の人生は私が決めさせてもらった。新たなる例外を産まぬよう。そして決められた人生を免れるように」
誰かがそんな事を言った。誰がそんな事を言ったのか。それがどういう意味なのかわからなかった。果たしてそれが本当に夢なのかどうかもわからなかった。
2話目になります。
まだまだ文の書き方が下手くそですが見て見ぬふりをお願いします。