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勇者が好きすぎる魔王は最強なのにあまり勇者に慕われていないようです。  作者: 日暮キルハ
魔王と過去

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36/41

二回目が終わるようです

「……」


 マオは傅いていた。

 周りがそうしていたから。

 そうしないと殺されてしまうと知っていたから。


「……」


 不信感を抱かれないようにそっと周りを覗き込む。

 少なくとも視界に入るクラスメイト達は揃いも揃って虚ろな目をしていた。


「……」


 一度目と同じだ。

 マオは確信した。

 自分が一度死んだことを。

 そして、これが二回目なのだということを。





 才能:追い求める者


    あらゆる真実を追い求める者。

    彼の者の好奇心の前に撤退の二文字はない。

    どんな危険を前にしようとも彼の者の好奇心は止まらない。

    誰も彼の者を縛れはせず、そして止めることはできない。

    ただ、彼の者は好奇心のままに突き進む。

    たとえ、神であってもその歩みは止められない。

    たとえ、死であってもその歩みは止められない。



 スキル


 パッシブスキル:挫折は彼の者を強くする


         死亡時、時間遡行。加えて身体能力向上。



 アクティブスキル:心眼の指輪(パッシブスキル一回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル五回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル十回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル百回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル五百回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル千回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル三千回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル五千回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル一万回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル?回発動につき開放)


 



 死亡時、時間遡行。加えて身体能力向上。

 

 信じがたいことではあったが、おそらく言葉の通りの意味なのだろう。

 そう考えれば全ての話の筋が通った。

 

 まるでデジャヴのような光景が目の前にあったことも。

 その光景とステータスに刻まれた身体能力の値が違うことも。

 ただの幻にしては光に焼かれた時の痛みが嫌に鮮明だったのも。


 全てに筋が通った。


 死んでも時間を巻き戻し蘇る能力。

 マオはその能力のことを正しく理解していた。

 すなわち最強の能力だ。

 

 たとえ相手がどれほど強力な力を持っていようとも、それこそ何によって殺されたのかもよく分からないような圧倒的な力を持っていようとも、この能力なら敗北はあり得ない。

 一度それを受けてしまえば次は対策がとれるのだから。


 それに加えて身体能力の向上。

 死ぬ前と死んだあと、たしかにステータスに表示される数字はどれも少しずつ上昇している。

 劇的な違いというほどの上昇ではなく、肉体的にもそれを感じとることができるほどの上昇率ではないもののたしかに上昇している。


 これを繰り返せばどうなるか。

 たとえどれだけ小さな数字であったとしても繰り返せばいずれは大きな数字へと変化を遂げる。

 同じように、やがては他の誰よりも優れた身体能力を持つことになるのだろう。


 つまり、能力を宛にするのならば、マオに敗北はあり得ない。


 しかし彼は動かない。動けない。


 体が覚えてしまっているのだ。

 殺される直前の恐怖を、殺された時の筆舌に尽くしがたい痛みを。

 死ななくても神経は通っているのだ。痛覚はあるのだ。痛いのだ。


 マオにとっての願いはただ一つ。

 もう二度と、あの痛みを感じないで済むようにする。

 ただそれだけだった。


 だから、聖女が得たいのしれない方法でクラスメイト達の正気を奪ってまるで操り人形のように自分の都合のいいように仕立てていくのを黙って見ていた。

 聖女が現れた瞬間にクラスメイト達に逃げようと提案することだって出来たはずなのに。


 いや、無理か。

 マオは浮かんだ考えを否定する。

 仮に自分がそれを行っていたとして、それを鵜呑みにする者がどれほどいるか。

 マオはクラスメイト達が普段は人の良い少年少女であることを知っている。

 だからこそ、提案を何も聞かずに突っぱねられることはないだろう。

 しかし、だからといって何も聞かずに受け入れてくれるということもまたあり得ない。

 おそらくはコウキ辺りが詳しく話を聞こうとする。


 そして、また殺される。


 死にたくない。

 マオは切にそう願った。

 だから、先行きがどれだけ怪しいものでもひとまずここでは目立たないことを選んだ。


「……おや? 貴方、なぜ震えているのですか?」


 しかし、悲しいかな。

 洗脳じみた処置を施され、虚ろな目で傅くクラスメイト達とそうでないマオでは精神状態に差が有りすぎた。

 そして、どれだけ隠そうとしても体は正直に訴える。

 恐怖を。震えることで。


「……これは……違っ……」


「……私の言葉が通じ辛いということでしょうか? 将来的な不穏分子となりかねませんし摘んでおきましょう」


 軽く首を傾げて聖女は言う。

 ただそれだけの言動が酷く神秘的だった。


 ――直後、マオは光に包まれた。

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