二回目のようです
夢にしては鮮明すぎた。
偶然にしては同じパターン過ぎた。
「……お話は分かりました。魔族との闘いには力が必要で、俺達ならその力になり得るということは。でも……それは俺達が手を貸す理由にはなりません。闘いということは危険があるという事ですよね? そんなものに付き合う道理はないはずです」
「……いや、そうでもないさ。闘わない戦士に価値はないからね」
白昼夢だったのだろうか。
幻だったのだろうか。
一度見た光景では自分はここで才能を確認する方法を尋ねていた。
「…………どういう、意味ですか?」
「そのままの意味さ。もし、私たちの要求を呑まないと言うのなら、君達の自由を奪わせてもらう。物言わぬ人形の方が扱いやすいからね」
「そんな横暴な……っ」
「動かない方がいい」
周囲はお世辞にも友好的とは言えない兵達によって囲まれている。
マオはこんなパターンは知らない。
似たような光景ならさっき見た夢か幻かも分からない何かの途中にあったけれど、少なくともこんなに早くこの状況にはなっていなかった。
自分の見たものは一体なんだったのだろうか。
もう知っているものとは違う風に展開は進んでいる。
ならば、見なかったことにして今のこの状況に置いていかれないようにするべきなのかもしれない。
しかし、マオにはそれができなかった。
何かがその考えを引き留めた。
「……」
本当にただの幻、それか夢だったのか。
それにしてはやけに鮮明で起きる出来事を知っていたかのようだった。
だから、ただの幻なんて切り捨てることはできなかった。
「さて、君達の答えを聞こうか」
「……」
クラスメイト達は揃いも揃ってフレイを睨み付けている。
たしかにこんな横暴なことをされて素直に手を貸すと言う気にはなれないだろう。
「……分かった。手を、貸そう」
しかし、ずっとそれが続くわけがない。
続けられるはずもない。
それはこの場の誰にでも分かっていること。
ならば、それを終わらせる決断を下す誰かが必要で、このクラスでそれをやるのが誰なのかも、これまでこのクラスで暮らしてきた者達にとっては改めて考えるまでもないことだった。
だから、コウキはフレイにそう告げた。
それ以外に選択肢なんてなかった。
「では、才能の確認の仕方を説明しよう」
全て自分の思惑通りに進んだからかフレイの表情は満足げだった。
あまり気分の良いものではない。
幻で見たように奴隷にする事へのデメリットを周りに教えることはできる。
しかし、それをするということはこの状況に自ら関わってしまうということを意味する。
それはどうしても避けたいことだった。
幻の最期、それがどういうものだったか。
痛かったのだ。
ほんの一瞬のことだけれども、熱くて痛かった。
ありえないことではあるが、そんなことがあるはずがないのだが、それでもマオにこの状況に関わらないことを選択させるにそれは十分の意味を持っていた。
もしかしたら、あれは幻なんて甘いものではなくて、もっと別の、例えば起こり得る未来のようなものなのではないか。
そんなありえない考察がマオの動きを封じていた。
「お前なんだった?」
「……料理人」
「……それ、闘えるの?」
「そんなの俺が聞きたい。でも、何を作っても一流の味になるって書いてある」
「……弱そー」
「……」
とはいえ、このままフレイにとって都合の良いようにだけことが運ぶのも今後のことを考えると問題がある。
動くべきか、動かざるべきか。迷うマオの耳にどこかで聞いたような会話が入った。
周りを見渡してみれば、一度見たステータスがクラスメイト全員の前方に現れていた。
考え込んでいるうちにフレイによる才能の確認の仕方の説明は終わってしまっていたらしい。
マオの中で話に加わらない方が良いのではないかという気持ちが大きく傾いた。
クラスメイトの前方に出ているステータス。それはどう見ても一度は見たそれなのだ。
料理人の才能を得たクラスメイトの男子、そしてその友人との会話。寸分狂わず、一度見たはずのそれなのだ。
もう、ただの幻だとは思えなかった。
(……ステータス)
頭の中でマオは念じる。
彼の知っているそれは頭の中で思い描くだけで前方に出てくる。
「……っ」
出て来なければやはり幻だったのだと。
これまでのは偶然が重なっただけだったのだと。
そう思えたのかもしれない。
けど、そうはならなかった。
目の前に出てきてしまった。
たしかに一度見た自分の少しおかしなステータスが。
もう、あの幻はただの幻と捨て置いて良いものではなくなってしまった。
「…………あれ?」
ただの幻と捨て置くことはできない。
とはいえ、ならばそれは一体どう受け止めればいいのか。
答えは出ず、ただ何となく一度見て全てを知っているはずのステータスにもう一度目を通す。
おかしかった。
一度自分の見たはずのそれとは細かいところが色々と違っていた。
なら、やはり自分の見た幻は所詮幻に過ぎなかったのか。
そんなマオの中で浮かんだ考えはステータスをスクロールしてこれまでなかったパッシブスキルというものが目に入った瞬間に消え失せた。
「……これは……まさか……」
「こんにちは。異界の戦士様方」
それとほぼタイミングを同じくして、聞き覚えのある声が場に響いた。
今日短編小説投稿するのでよかったら読んでみてください。




