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勇者が好きすぎる魔王は最強なのにあまり勇者に慕われていないようです。  作者: 日暮キルハ
魔王と過去

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34/41

一回目のようです

「……聖女様」


 その女の声は各々の才能を教え合い、ほんの少しざわついていたその場の空気を一変した。

 何か特別なことを言ったわけではない。 

 ただ、挨拶をしただけだ。

 別に声が大きかったわけでもない。

 ざわついたその場では消えてしまってもおかしくないほどに小さな声だった。

 しかし、その場の誰もその声を聞き洩らすことは無かった。


 静まり返る。

 誰に言われたわけでもなく、何となく話してはいけないような感情にさせられる。


 そんななか、はっとしたようにフレイが片膝をついて頭を下げる。

 

 聖女様。

 その言葉の意味を正しく理解した者なんてこの場には一人たりとも居ないけれど、それでも視線は聖女と呼ばれた女に向けられる。


「そんなに見つめられると照れてしまいますね」


 ニコリと聖女が微笑む。

 男女問わずあまりにも可憐なその姿に警戒が緩んだ。

 マオも例外ではない。

 

 容姿というのは対人関係において重要な意味を持つ。

 特に相手の事を知らなければ知らないほど、相手に対しての印象への判断基準に占める容姿の割合は高くなる。


 自分たちを誘拐したこの世界の人間。

 それもそのなかでもある程度の地位についているであろう女。

 普通に考えれば敵で間違いないはずの女にも関わらず、笑顔一つで警戒心は薄れてしまった。


「……あの、貴女は?」


 コウキが問いかけた。

 どのみち誰かがやらなければいけなかったことだ。

 だから、クラスの代表たる彼がそれをすることは何ら不思議な事ではない。

 あるべきことがあったというだけの話。


「私は聖女と呼ばれる者です。この世界に蔓延る悪、魔族を戦士様方と手を取り合い、世界の平和のために滅したいと考えております」


「……そうですか」


 コウキの言葉はそっけないものだった。

 当然と言えば当然だ。

 いくら美しい容姿をしていようが、自分たちをこんな目に合わせたこの世界の人間たちの一人にすぎないのだから。


「世界を救うことに、協力してくださいますか?」


「…………出来得る限りの範囲ですが」


 聖女はコウキを覗き込むように言葉を続けた。

 それに対してどこか居心地悪そうに目を逸らしてコウキは言葉を返す。


 おかしなことは何も言っていない。

 当然だ。

 マオを含めて全員巻き込まれ、脅されただけに過ぎない。

 それなのに積極的に協力なんてするはずもない。


「……世界を救うことに、協力してくださいますか?」


 だから、それは異常だった。


「……」


「世界を救うことに、協力してくださいますか?」


 聖女は繰り返す。

 一度は答えが出たであろう問いを繰り返す。


「……」


「世界を救うことに、協力しなさい」


「…………はい」


 コクリと、コウキが頷く。


「……」


 異常でしかない。

 何かがおかしい。

 

 おかしいことは山のようにあるけれど、それらなど比にもならないほどにおかしい何か。

 ここで見逃してしまっては取り返しのつかないことにつながりそうな何か。 


「……」


 周りを見渡してみれば、クラスメイト達は揃いも揃って聖女に傅いていた。


「……貴方は、私に力を貸してくださらないのかしら?」


「……俺、は……」


 聖女がただ一人立っているマオに声を掛けた。

 にこやかに、華やかに、千人が見れば千人が美しいと評するような神々しいほどの笑みを浮かべて。

 マオは蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けずに居た。


 怖かった。

 何が怖いのかすら分からなかった。

 けれども、たしかにマオはこれまで生きてきたうえで最大の恐怖を感じていた。


 声はでない。

 体は動かない。

 思考がまとまらない。


 そして、それは突然に終わる。


「……なるほど。たまにいるんですよ。貴方のように私の言葉が通じない欠陥品が」


「…………」


 聖女が何を言っているのか。

 マオには理解できない。

 けれども、とにかくこのままではマズイということだけは分かった。


 逃げたい。逃げたい。逃げたい。

 その思考が頭を埋め尽くしてなお体は動かない。


「死んでくださって結構ですよ」


「……ぁ…………」


 マオの視界に全てを燃やし尽くさんばかりの圧倒的な光が映る。

 そして、それがマオが最期に見たものだった。  




 ――一周目、終わり。




 才能:追い求める者


    あらゆる真実を追い求める者。

    彼の者の好奇心の前に撤退の二文字はない。

    どんな危険を前にしようとも彼の者の好奇心は止まらない。

    誰も彼の者を縛れはせず、そして止めることはできない。

    ただ、彼の者は好奇心のままに突き進む。

    たとえ、神であってもその歩みは止められない。

    たとえ、死であってもその歩みは止められない。



 スキル


 パッシブスキル:挫折は彼の者を強くする


         死亡時、時間遡行。加えて身体能力向上。



 アクティブスキル:心眼の指輪(パッシブスキル一回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル五回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル十回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル百回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル五百回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル千回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル三千回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル五千回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル一万回発動につき開放)

          ?????(パッシブスキル?回発動につき開放)


★★★★★


「よくぞ召喚に応じてくれた。異界の戦士たちよ」


「……」





 ――二周目、開始。

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