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勇者が好きすぎる魔王は最強なのにあまり勇者に慕われていないようです。  作者: 日暮キルハ
魔王と過去

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33/41

魔王の才能はどうにもおかしいようです

「…………詳しく話を聞かせてもらおうか」


「……」


 コウキの声が静まり返っていた場によく響いた。


「……たしかに考えてみればおかしな話だ。俺達をどうにかする用意はあるのにわざわざ説得なんてする意味がない。誘拐しておいて言うことを聞かないと分かった途端に脅すような人が道徳心なんて持ち合わせてるとは思えないしね」


 黙りこくるフレイ。

 そんな彼にコウキは尚も続ける。


「俺達は貴方の言うことを聞くつもりはない!」


「調子に乗るなよ?」


「……っ」


 活路が見えた。

 その事実がコウキの背中を押し、もう一度彼に争いに巻き込まれないことを決断させる。

 フレイはそんな彼を睨み付ける。

 そこに当初見せていた騎士としての面影は微塵も存在しなかった。


「たしかに、できることなら、貴様らを隷属の首輪で縛るのは避けたい。なぜなら、それをしてしまえばお前達が本来持っている力を制限することになってしまうからだ。だが、どうしても貴様らが従わないと言うのなら、それを避けるつもりはない……!」


 気づけばマオたちの周囲には取り囲むように兵士が立っていた。

 手に持った首輪のようなものを見るにそれが件の隷属の首輪なのだろう。

 誰もそれを直接口に出すことはしないが、そんなことをするまでもなく理解していた。


「……さて、選択していただこう」


 選択、なんて言い方をすればまるで選択肢があるかのように思うが実際のところそんなことはない。

 どちらを選んだところで結局は争いに巻き込まれる。

 ただ、自分の意思で動くかそうでないかの選択肢があるだけだ。


 隷属の首輪。

 それがどんな力を持ったものなのか。

 誰も聞かないし聞けない。

 けれども、文字から嫌でも推測できてしまう。

 個々人の考え方に差異はあれど結論はそう変わらないだろう。


 ならば、選ぶものなんて決まりきっていた。


「……こうなると思ったから、始めから教えてくれるように頼んでたのに」


 マオのこぼした呟きは、静かな空間でよく響いた。

 しかし、誰一人としてそれに言葉を返す者はいなかった。


★★★★★


 才能:追い求める者


    あらゆる真実を追い求める者。

    彼の者の好奇心の前に撤退の二文字はない。

    どんな危険を前にしようとも彼の者の好奇心は止まらない。

    誰も彼の者を縛れはせず、そして止めることはできない。

    ただ、彼の者は好奇心のままに突き進む。

    たとえ、神であってもその歩みは止められない。

    たとえ、死であってもその歩みは止められない。


「……」


 マオは顎に手を当て首を傾げた。

 『ステータス』と心の中で念じるように言われ、その通りに実践してみればこんなものがマオの前に現れたのだ。


 マオはそれ自体に疑問を抱いているわけではない。

 ステータスと念じることによって自身のあらゆる状態を示したものが目の前に現れるなんて突拍子もない説明を受けても、そういうものか程度にしか思わなかった。

 信じられるかと問われると微妙なものではあったけれど、それ以前に普通に考えればありえないことの連続のこの状況では疑うよりもまず信じたほうが良いとマオは結論付けていた。


 ゆえに頭の中で『ステータス』と念じ、目の前にそんな表示が浮かんでも特には何も思わなかった。

 せいぜいが「あー、ちゃんと才能って奴があってよかった」くらいのものだった。

 

 では、何が彼の首を傾げさせたのか。


「……なんか、違うよね?」


 それは名前だ。

 才能の名前。

 それがおかしいのだ。


「お前なんだった?」


「……料理人」


「……それ、闘えるの?」


「そんなの俺が聞きたい。でも、何を作っても一流の味になるって書いてある」


「……弱そー」


「……」


 近くで繰り広げられる男子同士の会話。

 どうやら彼らの片割れの才能は『料理人』というものだったらしい。


「……ね、なんだった?」


「……僧侶って書いてある」


「僧侶って何するの?」


「……さぁ? 祈る、とか……?」


 近くで繰り広げられる女子同士の会話。

 どうやら彼女らの片割れは『僧侶』という才能だったらしい。


「……」


 気にするほどの事ではないのかもしれない。

 けれども、マオには気になった。


 剣士、暗殺者、盗賊、格闘家、魔導士、読書家、踊り子、探偵、統率者。

 色んな才能をクラスメイトは身に着けた。


 そのどれもが明確に『個』を指していた。

 その中でどういう訳かマオのそれは漠然としすぎていた。


 それがマオの首を傾げさせる。


「あの……」


 大したことではないのかもしれない。

 気にしすぎなのかもしれない。


 それでもマオには気になった。

 だから、尋ねるために手をあげ、そして――


「こんにちは。異界の戦士様方」


 聖女と呼ばれる女と出会った。  

 

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