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勇者が好きすぎる魔王は最強なのにあまり勇者に慕われていないようです。  作者: 日暮キルハ
魔王と過去

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32/41

魔王はマイペースなようです

「トモリ君……?」


「ん? どしたの委員長」


 十守(ともり)真央(まお)は困惑するコウキに首を傾げて応じた。


「いや……あの……なんで才能の話なんてするんだい?」


「……え? ……そりゃあ、使うためだけど……? 話聞いてる感じだと俺達は強いんだよね? だったら力の使い方は聞いておかないと」


 向けられた疑問。

 それに対して「どうしてそんなことを聞くのだろうか」とでも言いたげにマオは首を傾げたままそう言葉を返す。


「出たよ……」


「ほんと空気読めないよね……」


「せっかくコウキ君が話をつけようとしてくれてたのに邪魔すんなよ……」


 マオは有り体に言ってクラスで浮いていた。

 決していじめにあっているとかそういう訳ではない。

 話す機会があれば話すし、何かを一緒にする機会があれば普通に共同でことにあたる。

 

 けれども、浮いていた。

 その原因がこれだ。

 マオは空気が読めない。

 そもそも周囲の空気に合わせるつもりすらない。


 常に自分の考えというのを持っていて、それを曲げることは無い。

 だから、時折こんな風に場の空気をぶち壊すような発言をする。


「……トモリ君、良く聞いて。たしかにフレイさんの話を信じるなら俺達は強いらしい。でも、それを受け入れるということはこの世界の争いに巻き込まれるってことなんだよ。一歩間違えば死んでしまうかもしれない。そんなの嫌だろ?」


「……まぁ、それは」


「だったら――」


「でもさ……それってもう避けられないことだと思うんだけど?」


 コウキはマオが状況を理解できていないのだと思っていた。

 それは周りもそうだった。

 

 自分たちは強いのかもしれない。 

 しかし、だからといって命を懸けるような闘いに身を置きたいと望む者など居るはずがない。

 だからこそ、マオはお決まりのマイペースさゆえにコウキの話を聞いていなかった。そうに違いない。

 その場のマオのクラスメイトは誰一人例外なくそう思っていた。


 そんなマオの続けた一言は、クラスメイトを凍りつかせるには十分なものだった。


「だってさ、この人達の話を聞いてる感じだとこれまでも俺達みたいな人を誘拐してきてたってことだよね? だったら、これまでだって当然委員長やみんなみたいに闘うのを嫌がる人は居たと思うんだよね。ってことはそういう人に言うこと聞かせるための準備くらいはしてあると思うんだけど。俺達が本当に強いっていうなら尚更さ。制御できない力なんて怖いだけだろうし」


「…………」


「「「「「…………」」」」」


 場が静まり返った。

 マオの意見はたしかにただの一意見に過ぎない。

 根拠があるわけでもない。 

 それでもマオのクラスメイトは誰一人としてそれを否定することができなかった。

 誰もそれを否定するだけのたしかな材料を持たなかったから。


「……ク、ククク……なかなか賢い少年ですね。自分たちの置かれた立場を正しく理解していただけているようで何よりです」


 フレイは笑った。

 そして、続けた言葉は暗にマオの言葉を肯定していた。


「……では、お力を貸していただけますね?」


 底意地の悪い笑みを浮かべてフレイは問う。


「……そんなの……卑怯だ……!」


 無駄と知りつつもコウキは叫んだ。

 こんなのは「お願い」ではない。

 ただの「脅迫」だと。


「何をおっしゃりますか、異界の戦士様方。本来ならば奴隷のようにこき使うこともできるというのにこの世界での面倒はきちんと見ると言っているのですよ? 感謝こそされど不満を言われる謂れはありませんよ」


「……くっ。こんな誘拐紛いの事をしておいてよくも……!」


「……あの、フレイさん。俺の話に便乗するのはいいですけど、実際のところ断ったらどうやって俺達に言うことを聞かせる気だったんですか? まさか何もないのに俺に合わせて適当なことを言ってるわけではないですよね?」


 悔しそうに表情を歪めるコウキ。

 そんなコウキとは全くの対照的にマイペースにマオはフレイに問いかけた。


「ハハハ、まさか。もし貴方たちが強情にも手を貸さないというつもりだったならその時は隷属の首輪で私達に逆らえないようにするつもりでしたよ」


「……どうして初めから使わなかったんですか?」


「…………はい?」


「あ、いえ。逆らえないようにするものがあったんですよね? だったら、なんで初めからそれを使わなかったんですか? わざわざこんな無駄な反し合いなんてしないでさっさとその隷属の首輪とかいうもので逆らえないようにすればよかったじゃないんですか?」


「……それ、は……」


 首を傾げてマオが問う。

 それに対してのフレイの返答はどうにも歯切れが悪い。


「……もしかして、それで俺達を逆らえないようにしちゃうと何か都合の悪いことがあるんじゃないですか?」


「……っ」


 そして、続けたマオの言葉にフレイの頬が引きつった。

執筆時間をとる余裕が無さそうなのでここから当分の間は月一更新とさせていただきます。

再び執筆のための時間がとれるようになれば更新ペースは早めるつもりです。

これからもよろしくお願いします。

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