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勇者が好きすぎる魔王は最強なのにあまり勇者に慕われていないようです。  作者: 日暮キルハ
魔王と過去

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30/41

魔王は話し始めるようです。

「…………んっ……っ」


 目を開いたユウキが見たのは知らない天井、ではなくどこかで見た天井だった。


「……」


 ただ、少なくとも自室の天井ではない。

 そんな毎日のように見るそれではない。

 

「……」


 確実に見覚えはある。

 しかし、それがどこの天井だったかは思い出せない。


 ユウキは思考する。

 見覚えのある、しかしはっきりと思い出せないその天井が一体どこのものであったか。


「……」


 思い出せない。


 だから、一から状況を整理し直すことにする。

 自分がベッドで寝ているこの状況。

 それがどうして生まれたかを整理し直す。


「……目、覚めた?」


「……うん」


 そして、連鎖的に理解した。

 自分のこの状況がどうやって生まれたものか。

 一体ここはどこか。


 理解して。

 それとほぼ同時にかけられた声に反応を示す。


「……ごめん」


「それは何に対して?」


「色々」


「……」


 いつになくしおらしい魔王。

 そんな彼の様子にどこか居心地の悪さを感じながらユウキはベッドの中で身をよじる。


「話しなさい」


「……」


「全部話して」


「……たぶん、信じてもらえない」


「いいから話して。信じるか信じないかは私が決める」


 分からないことだらけ。

 何が分かっていて何が分かっていないのかすらユウキには分かっていない。

 それでも知らなくてはならないという事だけは分かっていた。


 だから、問う。

 これまでのどんな時よりも強く、そしてたしかな意志の籠った口調で。


「聖女様のことも、あんたのことも、他にもいっぱい私は知らない。聞いたってあんたの言うように分からないかもしれない。でも、知らなくちゃダメなんだ……!」


「……好きだよ」


「あんた話聞いてた?」


「聞いてた。そのうえでやっぱりかわいいなって」


「死ねばいいのに」


「酷くない!?」


 意志は固まっていた。

 覚悟もできていた。


 ユウキは自身が決して頭の良い部類にあるとは思っていない。

 同様に理解力のある部類だとも思っていない。

 勉学は最低限、ほとんどの時間を魔族を殺すための修練に費やしてきた彼女にとって頭を使うというのはあまり得意なことではない。


 ただ、それでもユウキはちゃんと知るつもりで居たのだ。

 全てを聞いて、理解できずとも聞いて。

 分からないなら分かるまで聞いて。

 どれだけの時間を費やしたとしてもきちんと理解するつもりで居たのだ。


 それだというのに肝心の魔王がこのザマである。

 呆れを通り越していっそ殺意が沸いてくる。


「真剣に話してる側で戯言吐かれた方の身にもなりなさい」


「戯言……」


 好意を伝えてみれば戯言と切り捨てられたのだ。

 魔王への精神的打撃はその表情から想像するに難くないがそんなことはユウキの知ったことではない。


「ほら、くだらないこと言ってないで早く」


 それを証明するように体を起こし魔王を見やると一切気にした様子なくユウキはそんな風に続けた。


「くだらない……」

 

 もちろん魔王の豆腐メンタルがそれに耐えられるはずもないのだが、それこそユウキの知ったことではない。


「ちょっと魔王。どうでもいいことで落ち込んでる暇があったら――」


「分かった! 話す! 全部話すからもうやめて!」


 魔王は半泣き。

 というかもはや泣いていた。


「……言っとくけど、絶対信じられないし、こいつ何言ってんだ?ってなるだけだよ?」


「そんなのいつもの事じゃない」


「ねぇ、なんでそういうこと言うの? 俺の言ってることいつもそんな理解できないほど酷い?」


「酷いというかきもい」


「死にたくなってきた」


 散々な言われ様である。

 いつもの事と言ってしまえばそれまでの事ではあるが散々な言われようである。


「……あんたの言うことはいつも意味分かんないけど、でも……あんたは嘘が下手だし。だから、ちゃんと話すなら全部信じてあげる」


「…………ありがと」


 信頼とは程遠い。

 そんな綺麗なものでは決してない。


 けれど、それこそが魔王とユウキをこれまで繋いできたものだった。

 それを思い出して魔王はクスリと笑った。

 

「……ユウキ」


「……なに?」


 その関係性は良いものか悪いものか。

 それは魔王とて分からない。

 しかし、少なくとも心地よい物ではあった。

 だから、、、


「俺は、異界から召喚された戦士の一人、だった」


 もう、誰にも話すことはないと決めていた物語を紐解き始めた。  

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