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魔王は過去を振り返るようです

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

いくつかお知らせがありますのでよければ後書きも読んでください。

それでは新章スタートです。

 その日、魔王は珍しく時間の余裕を持っていた。

 仕事を投げ出したわけではない。

 本当に暇だったのだ。


「……なんか、ちゃんと時間があるとそれはそれで何か忘れてるんじゃないかって気になってくるな……」


「日頃からサボってばっかりいるからそんな風に感じるんですよ」


「反論のしようがなくて泣けてきた」


 玉座に腰掛け、頬杖をつきながら何か忘れていることがないか思案する魔王にバクは一切の遠慮なくそう言って見せる。

 そんなバクの言葉に頬をひくつかせながら魔王は苦笑いを浮かべそう返した。


 たしかに日頃から仕事をきちんとする癖をつけておけば暇な時間ができたところで違和感など感じなかったのであろう。

 しかしながら、たまにきちんと仕事をしてみればこの言われ様とかやっぱり仕事ってやる意味ないなーなんてことを魔王は考えていた。


「明日からもちゃんとやってくださいよ? 一日しかまともにできないなんて三日坊主を笑えないですからね」


「…………」


 そして、そんな魔王の残念極まりない思考を読んだかのように釘を刺すバクに浮かべた苦笑いのまま魔王の表情は凍りついた。


「と、ところで、バク」


「……なんですか?」


 挙動不審ここに極まれり、といった様子ではあるものの何とか話の方向を変えてしまおうと奮闘する魔王にそれを薄々感じ呆れつつバクは言葉を返す。


「いや、な。その……なんか暇だし面白いことない?」


「あなたには俺が暇なように見えるんですか?」


「書類なんて捨てちまえ」


「あんたを捨ててやろうか」


「部下が辛辣すぎる」


 話を逸らすことが目的、つまり中身なんて魔王がかけた言葉にはないのだから当然のごとく魔王は何を言ったものかと詰まる。

 もうその時点でどうしようもないほどに怪しさしかないのだがそこは魔王、恥の上塗りとばかりにせっせと書類仕事に精を出す部下をわざわざ煽るような発言を何の悪気もなくチョイスして見せた。


 バクとて魔王に悪気があったわけではないということは嫌というほど理解できてはいるのだが、それと腹が立たないかは全くもって別の話でしかなく、そんなバクから返された言葉に魔王半泣きである。


「もういい、俺自分の部屋でトランプタワーでも作る……」


「魔族を統べる王が自室で一人でトランプタワーとか勘弁してくださいよ……」


「何だとっ!? バク! お前、トランプタワーをバカにしてるのか!?」


「あんたはトランプタワーの一体何なんだよ……」  


 魔王はやはり魔王でしかない。

 そんなどこか当たり前だけれども当たり前ではない事をぼんやりと思い浮かべながら、バクはこの数秒でバカみたいに感情をころころ変化させた自らの主に心底呆れたように言葉返した。


「そういや……」


「ん? どうかしたか?」


「あー、いや……」


「なに? 面白いことでも思いついた!?」


「いや、そういう訳じゃないんですけど……なんというか……あの時もこんな感じでグダグダ話してたなーって思いまして」


「……あの時?」


 バクの言葉に少し考えるような様子を見せたのち、やっぱり何も思い浮かばなかったようで魔王は首を傾げて視線で続きを促す。


「……あの勇者が初めてここに来た日もこんな感じだったじゃないですか」


「……あれは悲惨だったな。初対面の印象が悪すぎる」


「どのみち魔族を毛嫌いしてる女でしたから大して変わらなかったとも思いますけどね」


 少し迷うような様子を見せたのちに自らの考えを示すバク。

 それに対しどこか苦々し気な表情をしてまるで忘れたい過去だったかのように魔王はポツリと呟いた。


★★★★★


「バクー、ひまー」


「……俺は凄い忙しいです」


 まだ魔王が割とまじめに仕事に取り組んだり取り組まなかったりしていた頃。


 その日の魔王は仕事を真面目に取り組むホワイト魔王だったわけだが、如何せん暇を持て余していた。

 その結果が部下の仕事の邪魔とかほんと救いようがないほどのアホではあるがそのくらい魔王は暇を持て余していた。


 ――その時だった。


「魔王様、『勇者』を名乗る女が貴方の首をとりに来ました。どうされますか?」


「――マジで?」


 セレンが部屋に入り告げたその言葉に魔王は間髪入れず確認の言葉を返した。

 それくらい魔王にとっては意外な事だったのだ。


「思ってたよりメチャクチャ早かったな……」


「魔王様?」


「ん、あー、えっと……うん、ここに案内して」


「かしこまりました」


 魔王の言葉を受けセレンは一礼してその場を去った。


「良いんですか、魔王様?」


「ん? 何が?」


「いえ、ぶっちゃけわざわざ魔王様が直接会う必要はないと思うんですけど。どうせ勇者って言ってもたかが知れてますし」


「……いいのいいの。俺が会いたいだけだから……ってマズイ!」


 バクの言葉にひらひらと手を振りながら応じる魔王だったが、とあることに気付き慌てて立ち上がる。


「……? どうかしましたか?」


「ばっか、バク! 人間第一印象で大方の事が決まるんだぞ! こんな汚い部屋だったらそれだけでこれから先の関係に影響が出るわ!」


「……いや、敵と良好な関係なんか築いてどうするんですか……」


 魔王の発言の意図がくみ取れてくみ取れないバク。

 そんなものは知ったことかと魔王は慌てて床に散らばった書類やらトランプやらを拾い集めだす。


「――覚悟しなさい魔王! 今日がお前の最期よ!」


「…………ほんと早すぎない?」


 しかし、そんな魔王の努力は一切合切否定されドアを蹴り飛ばしながら勇者の少女、ユウキは部屋へと乗り込んだのだった。


次話からまた更新は金曜に戻ります。

また、これまでは週一更新とさせていただいていたのですが、少しばかり忙しくなりそうなので今年は隔週更新にさせていただきます。

余裕があればまた週一更新に戻すかもしれません。

楽しみにしてくださっている方が居られれば待たせてしまうこととなり本当に申し訳ないです。

これからもよろしくお願いいたします。

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