桜の雨と新学期
「…ゼ……テーゼ………ボクは……救われるの……」
歪んだ景色に灰色の亜空間。
其処に唯一人立つのは白銀の髪を靡かせる少年。
手を伸ばし触れようとするが近づく程遠く離れていく。
「ごめん……ね…さようなら………」
脆く儚く少年は崩れて光へと化す。
やがて星屑のように風に流れて消えていった___。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ジジジジジジジ………目覚まし時計が音を立てる。
右へ左へ寝返りして目をこすり、もぞもぞと動いて起き上がる。
夢……だろうか。何者からか助けを求められていた気がするが、気のせいだろうと振り切る。そしてゆっくりと目を閉じる。
目覚まし時計が音を鳴らし始めてから、三分十二秒後。玩具の銃口が停止ボタンへ向けられる。
三分二十七秒後。引き金が引かれ"パンッ"という音が部屋中に鳴り響く。
三分二十九秒後。見事に目覚まし時計の停止ボタンに銃丸が直撃する。
それを"にっ"と笑うのは弾丸を放ち見事に目覚まし時計の音を停止させた少女、"夜桜 一夜"だ。
紺碧の静かな夜に等しい青い髪に、長い睫毛と柚葉色の瞳。
頬は柔らかく膨らみがあり、唇には艶と優しい桃色が備わっている。
一言で例えると、そう、"美少女"だ。
布団から出て洗面所へ駆ける。
顔を洗い、歯を磨く。
髪を梳かし、右から左へかけてのアシンメトリーな前髪のセッティングを行う。左眼に眼帯を装備。リップクリームを塗り、鏡に向かいドヤ顔をしてみせる。
次に寝室に戻り、着ていたパーカーを脱ぎ捨てワイシャツを代わりに着用する。
その後、赤地に黒、緑、白のチェックが入ったスカート、深い紺の様な青いブレザー、最後にネクタイを着て、着替えが完了する。
最後に鞄へ筆記用具等の道具を突っ込み、スマートフォンの通知を確認し、玄関に鍵を掛けて通学路へ飛び出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昨日は雨が降っていた為に、水溜まりが幾つか存在している。
通学路には桜の木が沢山植わさっており、風が吹くたび桜の雨が降り注ぐ。
それが水溜りの水面を撫でるように浮かんだり、水門が出来るような光景はとても綺麗で見物だ。
などと思いながら歩き、バス停へ。バスに乗車し駅へ。二駅先の駅から学校へ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
人が多い。大混雑だ。
流石新学期……と、人が比較的少ない場所を選び校門を目指す。
途中、物凄い視線を感じたが気付かないフリをしつつ無視する。
なんとか校内へと滑り込み、2年B組の教室へ歩き出す。
さぁ、新しい生活の始まりだ___。
こちらで挨拶を済ませて頂きます。
こんにちは。
暁 聖と申します。
この度はPWGを読んで頂きましたこと、誠に感謝しております。
この小説に少しでも興味、好感を持っていただければ、何よりも嬉しいことその上ありません。
無理なく自分のペースで投稿していきますが、長期連載を続けていきたいと思っております。
今後ともよろしくお願い致します。
次話もご期待ください。