誕生秘話
最近、いや少し前、いや10年前、1000年前だったか
1億年以上も前だったかもしれない
とにかく、この世界は花に覆われていた
今は滅び、亡き種から、今も愛される種まで
咲き乱れていた時代があったのだ
その時代、花は妖精で、妖精は花だった
彼らは毎日を踊って過ごした
つぎつぎに咲く新種の花は
みな花の女王の御子だった
突然、一体の龍が舞い降りた
まだ名も色も形すらもない御子の上に
龍は老い、傷つき、血を流していた
流れ出した血で御子が瑠璃色に染まった
龍は言った
なんと美しくかわいらしい花だ
まるでネモフィラ《赤子の青い瞳》のようだ……と
自身の血だとも気づかない愚かな龍が
その神秘的な青さをほめると“ネモフィラ”は恥じらうようにゆれた
そこに異変を感じた花の女王-この世のものとは思えないほどの美しさを持っている-が現れた
女王は静かにしかし威厳をもって言った
龍王よ、お主は今しがた禁忌を犯した
その汚れた血で吾子を染めてしもうた
加えて名まで与えよった
責任を問おうぞ……と
瀬戸際で罪龍はネモフィラに言った
独りはつらかろう
必ず仲間と在りなさい、と
老龍は静かに息絶えた
一陣の風が彼女の前を駆ける
花の女王は
置き土産か、ご苦労なことだ
と、溜息をつき
龍の亡きがらに目をやろうとしたが
目当てのものはなく
そこには
いつ現れたのか
瑠璃の瞳をもつ赤子が無邪気に笑っていたという
こんな絵あったらいいな。




