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死線の戦技士 K-KNIGHTS  作者: 豪魚
書き直し版
6/6

一話 始まりの死線

誤字脱字があると思いますが、それに関しては時間はかかりますが修正していく予定です。


生まれてこの方、冒険という言葉とは無縁だった。

大きな壁に囲まれた町で人は生まれ、死んでいく。

何も知らないまま生きるということは、死んでいるのと同じだと思う俺はきっと異端なのだろう。

壁の外が楽園だとしたら、多くの人がこぞって真実を見つけに行くだろう。

だがそういったことはない。

無限の苦痛が外にはあるというカバーストーリーと共に、

壁は人を守る神が遺した最後の力だという言葉で多くの人は子供の頃から洗脳されるように伝えられている。

こんな小さな世界に神なんて者がいるとは思えないし、居るとするならなんてちんけな存在なのだろう。

でもどうせその無限の苦痛に挑みたい人間を募る。

その志願者で構成されるのが軍だ。

人々は軍を尊敬しているのか、彼らを皇軍と呼んで称えている。

大人たちは子供を軍に入れることを名誉としているが、その一方で苦しませたくないという親がいるのも事実。

俺の親は後者の方だ。

真っ当に会社とかで働いて普通に生きてくれと何度も親に言われた。

俺は嫌だ。

そんな風に壁の中で腐っていくのなら苦痛に挑んでやる。


壁は主に金属を利用して建造されている。

内部もあるらしく、頻繁に憲兵や軍の関係者が出入りするのを昔からよく見ていた。

頂上には何か柱のようなもの、そして棒状のものが空に向けて置かれているのが見える。

果たしてそれが何なのかわからないが、時折テレビで見る銃や大砲なんだと思う。

そんなもの、戦争にしか使われていないのになぜそんなものがあるのか?

昔、人と人は戦争をしていたという。

しかし今は戦争などという言葉とは全く無縁で、むしろ余りに平坦すぎてあらゆる全てが飽和状態だ。

それなのに壁は人を護るためにそこにある。

戦争が今なおも続けられているから?それとも戦争寸前だから?

でも戦争をしているならどうして人が死んだという情報がないのか。

そして何より誰もそのことを、真実を語ろうとしないのか。

誰かがこの瞬間、例えば間食を食べている時、居眠りをしている時、異性と話している瞬間。

たったその瞬間に、誰かが死んでいるとしたら。

誰かが無念を内に死んでいるとしたら。

俺たちはそんな現実を知ることもなく死んでいくのだろうか?

誰もその人が生きていたことを語ることもなく馬鹿みたいに平坦な生活を送るのだろうか?

狂っている。

俺はこの平坦な世界を抜け出して、死んだ者たちの名を胸に刻む。

いつかでしかないが、必ず。


壁によって日の光が遮られ、なにも空から届かないというのに規則正しく仕込まれた体内時計が朝を知らせる。

眠りも深かったからか、体に一切の疲れを感じない。

良く寝たという感覚を口にして、部屋の扉を開けた。

今日も平坦な日常が始まる。

いつものように同じ時間に朝食を食べて、学校の準備して、靴を履いていってきますと言う。

いつもではないけど家の近い友人、『風雁竹斗』が走りながらついてくる。

くだらないちょっとした会話をしながら学校に行って、勉強して、昼になったら昼飯食ってたまに校舎裏でいちゃついてるカップルを見て中学生なのになんだよって思いながら眺めてる。

それで授業終わったら部活があって、いや俺にはないけど、そのまま帰って。

晩飯食って風呂入って寝る。

なんてことのない日常が続いていく。

赤威島中学校なんて島なんて言ってるけど、壁の大きさに圧倒されてか、まるで大陸のように感じる。

こんなにでかいのに島って言い張るのは何故なんだ。

また朝がやってきた。

朝食をとって、学校の準備して、靴を履いていってきますと言って道に着く。

馬鹿みたいな言葉で会話して、学校に行って。

でも少しだけ、冒険をしたくなった時はできるだけ高い場所を探して壁を覗く。

遥かに遠いそれは雲すら突き抜けているような錯覚をおこす。

そして帰って晩飯を食って風呂入って寝て。

くだらない日常が続く。

学校行って、勉強して。

日常をかき消すような耳をつんざく轟音とけたたましい爆音が変わらない世界を急激に収束させた。

遥かに響くサイレンと空高く昇って消える黒煙は、まるで日常の終わりを暗示しているようだった。


Phase.1 日常(メルヘン)ごっこの終わり


「学生はこっちへ!」

先生たちの青白く激しい剣幕は絶望を連想させるに十分な表現だった。

最初に爆音の鳴ってから二十分くらいたった。

何度も束になって爆音が鳴り、街はあっという間に黒煙と炎に飲まれていった。

緊急用のシェルターに集められた学生は皆が皆ではないが、不安な表情をしている。

幾人の生徒はまるで秘密基地にでもいるかのような表情をしているようだ。

「介、ここどこなんだ?知ってるのか?」

竹斗はいつもののんきさと破天荒さが嘘のように縮こまっている。

「わからね。でも、こんなところあるなんて初めて知った・・・。」

薄暗く長い通路の果てには巨大な長方形の空間が用意され、中には食糧庫のような場所に通ずる道もあるようだ。

激しくサイレンが外でなっているが、唐突にすさまじい轟音もなり始めた。

ジェットエンジン特有の音だ。

地下にいるためか大きくは聞こえないが、数は二十以上の地点から聞こえる。

「ここ、本当にどこなんだ・・・?」

「知りたいか、今の状況を。」

誰かがそう言って、俺は振り向いた。

「今、この上では戦いが起きている。」

戦いなどという言葉はこれまで知ったことがない。

人類は三百年以上戦争なんてしたことないはずなのに。

でも、なぜ壁があるのか。

「きっと、三百年の時の間、戦争なんてしていないと思っただろう。」

そうだ、その筈だ。

でも間違いなく、この状況からして今まさに戦いは起きている。

その事実だけで、これまでも戦いがあったことはわかる。

「教えてやる。今、いや人類は、」

三百年以上戦争を続けている。

ようやく声の主が現れた、いや、自分が気づいた。

自分とそう年の離れていない少年。

「元島 公だ。」

彼はそう言った。

「なんで君がそんなことを知ってるんだ・・・?」

「あぁ、そうだな。大人ならともかく、俺のような奴が知ってるのは不自然か。」

恐らく一つほど年上だろうが、もはや戦場にいる子供という時点で立場は近いはず。

だが彼はこの上で起きていることを知っている。

「俺たちの敵は機械生命体『アロウ』。人の言葉を解さず、見るものすべてを破壊する破壊者。」

アロウ、機械生命体。なにがなんだかわからない。

敵がいるのはわかっている。でもそれが人でないというなら。

「だが、悔しいことに通常兵器では足止めしかできない・・・。」

「じゃあこの上で飛んでるのは何なんだ!?」

普通の兵器では、つまり戦闘機などでは倒せないということ。

なら出撃させる意味がない。

「効果はある、少ないけれどもな。」

「無駄死にになるじゃないか!?どうしていかせる必要がある!?」

上にいるのは十中八九戦闘機だ。

「足止めはできる。『それら』が来るまでは、な。」

そういった瞬間再び轟音がなった。 近い。

「アロウに対抗する最も有効な方法、それは思考直結型対アロウ機動人型兵器『要鎧』、そして・・・。」

「対アロウ特殊戦闘技術士、通称『戦技士』・・・。」

ずっと黙っていた竹斗がそう呟いた。

「どうして知ってるんだ!?なんで・・・っ!?」

頭が割れるように痛い。痛みと共に強烈な大量の記憶と単語の羅列が入り込んでくる。

「ようやく情報規制が解除されたか。これで全て話せる。」

話はどんどんと進んでいく。

痛みは脳天をつんざくように頭を襲い、視界がぐにゃりと捻じ曲がる。

何本も太い針が刺さって脳を直接傷つけている、そんな痛みが永遠と続く。

「精神が情報を阻害して痛みが長引いてるみたいだな・・・気絶されても困る。」

元島が近寄ってくるのがわかる。

注射器のようなものをポケットから取り出し、それを俺の首に刺した。

「これで話を聞くぐらいはできるな。聞こえてるなら頷いてくれ。」

痛みは引いたが、今度は体が思うように動かない。

首は動く。だがそれ以上に動かすことはできないようだ。

「なに、単に神経を軽く麻痺させて痛みを感じさせなくしただけだ、それより反応が欲しい。」

震える首をゆっくりと下に動かした。彼はよしと言って話を続けた。

「風雁竹斗、永井介。お前たちにはアロウと戦うため、戦技士になってもらいたい。」

見たこともない敵と戦えと言うのか?

これまで戦争の真実を知ることなく平和だけを教えられてきた人間には唐突すぎる。

確かにこれまで真実を隠し、その裏で誰かが苦しんでいることには嫌気がしていた。

けれど、真実を唐突に教えられてそれで戦えと言われてもただ恐怖に震えてしまう。

それに覚悟もできていない。

せめて嘘なら、彼が言っているのが虚空の話なら。

ただそれだけの救いだけでいい。

戦場に出れば誰が死ぬかわからない。

俺が死ぬならいい、俺だけの犠牲で他の多くの人間が救われるなら構わない。

だがこれから関わる多くの人が苦しむなら。

「介、俺はやる。俺にできるってんならやってやる。」

声が出ない。

「永井介、お前はどうする?また日常に戻るか、それとも人類を護る戦技士となるか。」

その時、地面が大きく揺れた。

視界が強く揺さぶられ、一体何が起きたのかわからなくなる。

体の痺れは衝撃がきっかけとなって弱まっていた。

しかし、視界がやけに明るいことにも気が付いた。

シェルターは崩壊し、天井には大きな穴が開いて空が見える。

そうだ、あれがこれまで眺め続けてきた何よりも青い空。

「こっちだ!永井!風雁!」

指示された道を歩む。

しかし、その先はシェルターの中ではなかった。

「やつらは爆撃だけでなく降下までしてきた!この町はこれから戦場になる!」

巨大な卵のようなものが空から落ちてくる。

行く先行く先で破壊された家屋や燃えているものさえある。

もうここは日常の舞台ではない。

「基地に行く!そう遠くじゃないはずだ!」

そう元島が言った瞬間だった。

それは俺たちの目の前に落ちてきた。

巨大な人型の機械。

胴体部の目玉が俺たちを捉え、それは腕を伸ばした。

最前にいる元島の姿が砂煙に消え、一体が激しい衝撃に襲われる。

砂煙が晴れた瞬間に映ったのは、彼の身長とほとんど同じ大きさの輝く剣を構えた元島の姿だった。

「これが戦技士だ、これが人類最後の希望だ!」

それに向けられた剣は二つに刀身が裂け、その中心から光を放った。

素早い動きで敵の攻撃を避け、その位置は確実に敵に迫っている。

一瞬とてつもない速度で飛んだかと思うと、敵の右腕は宙に浮いていた。

元島の姿は近くの建物の壁にあった。

目で追えないような動きをしながら、敵に反撃を許すことなく切断していく。

きっと全ての人間がそうではないにせよ、この力があるなら勝てているはずなのに、と思った。


Phase.2 戦場にて輝く


無事に最寄りの基地に到着した俺たちは、戦況の絶望的状況を知った。

敵の攻めてきた南方はすでに陥落、その勢いで北進してきている状況なのだという。

通常兵器の非効率性が原因なのだろうが、それ以上に圧倒的な質量もあるだろう。

俺たちが基地に到着するまでずっと敵は空からやってきていた。

いくつものあの敵が絶え間なく落ちてきて、それでは戦技士が居ようともはや質量に押しつぶされるだけだ。

そう、アロウの本当の脅威性は決して攻撃が効きにくいことではない。

押しつぶさんとする強大な質量なのだ。

やがて、敵は中心街を制圧。まさに破竹の勢いだ。

「俺たちは、まだ戦えないんだよな。戦いたいってわけじゃない、あいつらみたいなのに街を奪われたくないだけなんだ。」

竹斗がそう呟いた。

まるで言い訳をするように、きっと自分自身に言い聞かせているんだ。

まだやつらが憎いわけじゃない。

奪われたわけじゃない。

だからこの異常事態をどこかで歓迎しているんだ。

これまで続いてきた日常がたとえメルヘンだとしても、平穏すぎる時間に嫌気がさしていた。俺も同じだ。

その上、恐怖もない。

もくもくとあがる白黒の煙の数々を遠目に眺めながら、いまだ恐怖を感じない心に現実を見せつけていた。

世界がこんな状況なのに、まるで夢でも見ているかのような自分が悔しく思う。

「現実味を感じられないのは自分で信じれないからだ。別にお前が極端に楽観視しているわけじゃない。」

元島は励ますようにそう言った。

「この世界の方が現実なら、いずれ理解できるようになる時がくるのか・・・?」

人は大切な何かを失って初めてその尊さを知る。

まさに、この視界に映る全てはそれを体現している。

「じきにここも戦場になるかもしれない、気をつけろ。」

そう言って離れていく元島の背中を見つめながら、今の休んでいられる時間を理解した。

またここもやつらに攻め込まれる。

たとえ戦技士が居ても、質量には敵わないのだ。

いつの間にか自分も早く戦いたいと思うようになっていた。

こんな状況だからこそ、より多くの力が必要になる。

その力の一つになれる機会を得たのだから、一時も無碍にしたくない。

炎が遠くで揺らめく。

両親の生死も、この世界を見て諦めていた。

たった遺された自分ひとり、強く生きるには戦うしかない。

奴らの獲物になるのではなく、奴らを狩る尖兵として生きるんだ。

絶望するなら容易いだろう。

絶望を否定してこそ真の尖兵たりうる。

遠くで大きな装甲車が溢れんばかりの民間人を乗せて基地の門をくぐってくる。

次々と一般人が基地に避難をする中で、途中で襲撃されたのかボロボロの死体を乗せているものもある。

死体は装甲車が止まった瞬間衝撃で滑り落ち、地面に横たわった。

上半身の左肩から斜めに切り捨てられたような断面が俺を向いた。

吐き気も何も感じることなく、流れ出す血を見て世界の残酷さをふと感じた。

どんな人間でも人間である限り死は唐突に訪れる。

今日からはきっと不幸を不幸とも言えなくなるだろう。

人の命が軽く簡単に吹き飛んでしまう、それが戦場。

これがこれまで壁の外にあると言われてきた苦しみか。

だがそれでも諦めるつもりはない。

何も知らず壁の中で閉じこもったまま死んでしまうより、外でもがきながら野垂れ死ぬ方がいい。

人は知りたいことを知れないような不自由な世界に生きているわけじゃない。

だからこそ世界を知る。

しかしその世界の現実は人類を嘲笑うように目の前に現れた。

それは必然なんかじゃないはずだ。

それは嘲笑うとともに外の世界への誘い、真実を焼き付けろと言うように残酷な日常の崩壊を見せつける。

なら、乗ってみせる。

自分がどうしたいかすらわからないような状態は捨てる。

こんなに残酷でも、俺は知りたい。




かなり時間がたったように思える。

もくもくと上がる煙を立ったまま凝視していた俺の後ろにはいつの間にか元島が立っていた。


「覚悟を聞きたい。」


重い面もちで問いをかけてきた元島は、僅かに冷汗すら見せていた。


「俺は行きます。どんなに残酷なものがあるとしても、俺は知りたい。」


覚悟失わぬうちに、言葉を紡いだ。

最初は震えていた竹斗も目から決めた意思を見せていた。


「ああ、だが気負わなくていい。戦闘は訓練済みの者が担当するからな。」


「参加不参加はともかく、一体どうしたんです。」


「市街戦で多数のアロウが確認されたうえ、各地の基地と連絡が通じなくなった。通信妨害だ。」


通信妨害をアロウが行っているとはあまり考えられない。

人の言葉すら解さないと彼は言ったはずだ。

そんなのがジャミングだったりEMP系兵器まで使えるのか?


「それだったらアロウ全体も連携できてないはずです。人間側の通信装置だけピンポイントにはできないと思います。」


「そうだ、だがそれが厄介なんだ。まとまって動いていたなら一度補足するだけで多くの撃破を狙えるが、分散していると捜索も困難になる上に民間人への被害も増えやすい。」

「そこで俺たちは一度分隊構成人数を縮小してこちらも分散するよう再編成を行う。意思があるならついてきてくれ。」




「よく聞いてくれ、ブリーフィングを行う。」

「ここ、津賀里市[つがさとし]ことここはアロウの爆撃と大量降下によって甚大な被害を被っている。

そして何よりまだ市街地には市民も残っている上、少数のアロウが群れを形成して多数に散らばっている。

そこでこちらも同様に一分隊二人として分隊構成を縮小し、頭数を揃えたうえで各個撃破を目指す。

基地の防衛がおざなりになるという意見もあるだろうが、臨時で五名が戦力として参加してくれることになった。

無論前線には出さず、元島を中心とした六人分隊として防衛を行ってもらう。

元島隊のコールサインはファフニールだ。応援要請があった場合、付近の分隊は至急支援に向かってくれ。

ブリーフィングは以上だ。それでは武運を祈る。」


チームリーダーと呼ばれた男がブリーフィングの場から離れると、周りにいた戦技士と思われる者が離れていった。


「ということだ。永井、風雁は俺の命令下で行動してもらう。いいな。」


元島の右腕に固定された携帯が鳴動した。誰かからの連絡だろうか。


「こちら元島。」


「こちらCP、君たちの戦闘行動の補佐を務めることになった田崎です。

幾つかの通達事項がありますのでよく聞くように。」


CP[コマンドポスト]、つまり指揮所だ。

そんな場所にいる割には随分声が若い。年もそう離れていなさそうだ。


「知っているとは思うけど、その地点には敵が迫っている。少数ではあるけれどね。

これを撃退してそこの基地機能をより前方の地下前哨基地に移す。

当面はそこの弾薬や物資の積み込みを護衛してもらうよ。」


「ここの機能を移せばここの民間人はどうなるのですか。」


「しばらくはそこに居てもらうよ。でも然るべき時が来たら、もちろん動いてもらうけど。」


「それでは市民の無事が保証できません!」

「君、命を戦場に捨てる覚悟はあるかい?」


「もちろん軍人としてそのつもりですが・・・まさか。」


「戦技士隊は基地付近の都市部で派手にゲリラ戦を展開してもらい、アロウの戦略的目標をそこに集中させる。そのうちに二段階で本隊を送る。

一回目は民間人輸送で、二回目は君たちの援護だ。」


「アロウの連携はありません。それでは集中させることは・・・。」


「アロウの動きは確認できている。彼らは連携できていない『ふり』をしているだけだ。

おかしいだろう?アロウはほぼ同じ数の群れで行動をしているし、グループはまず同じ場所にいない。

最近はアロウの動きも単純でなくなっている。戦術を理解し始めたんだろうね。」


「できれば、データリンクを許可してもらえればありがたいのですが。」


「あぁ、でもまだ情報があまり出ていないからね、頼りにはしないように。」


「データリンク接続開始。エラー?」


「エラー・・・。なるほど、こっちのドローンも通信が途切れた。

通信妨害を定期的に行ってこちらの通信網を混乱させているようだ。戦車中隊を追加で送る、恐らく根源は奥地だ。」


「了解、切れたか・・・。」


聞く限り、かなりこちらへの対策をしてきているようだ。戦車がこっちに向かってくるそうだが時間がかかるだろう。


「全員、よく聞け。もうすぐ部隊の行動が始まるが、ここの輸送部隊と共に前哨基地へ向かう。

恐らく基地にはアロウが居るだろう。これを戦車中隊と共に制圧。そこに拠点を置く。」


果たして戦車が有効な戦力になるかは疑問符が付くが、頑丈な装甲を持つ以上先行する盾と見れば心強く思える。


「俺たちはそれまでここの防衛を行う。個々に携帯を取れ、そいつを使って戦技士装備を転送するんだ。

方法は表示されるものに従え。」


自分の名前が書かれた端末を取って起動する。

どうやら武装の転送と通信以外には対応していないようだ。


「それでは総員、抜刀せよ!」


その号令が戦いの始まりだった。

戦技士とはまさしく鎧をまとう歩兵そのもの。

時に死し、時に討つ。

だがこの世界ではそれ以上に人類最後の生存地を護るという使命を持っていた。

時に西暦2302年。人類はまた新たな戦場の中で希望を生み出そうとしていた。

だが、きっとその希望があらたな絶望へのきっかけになることを誰も知らず、疑ってさえいない。

未来がなければ、希望も絶望も生まれない。

未来を創ることとは、賭けそのものだ。

そしてまだ、誰も知らない。

拙い文章ではありますし間違った表現もあるかと思います。

ですがそういった所には是非指摘をお願いします。


ちょっと手を付けられないこともあって次話投降日を未定にします。

恐らく十一月には落ち着くかと…

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