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死線の戦技士 K-KNIGHTS  作者: 豪魚
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 サイレン

ようやく恐ろしい訓練があと一日に迫った十三日目の朝食中に、突然サイレンが鳴った。

放送で全員緊急招集がかかり、ブリーフィングルームに集められた。

「全員集まったか!」

元島があわただしく部屋に飛び込んできた。

「超大型種であるプラネット級アークトゥルスがここに接近しているという連絡があった!この戦技士訓練所は柵外にある。このままだと直接攻撃を受ける可能性が高い!」

「また、他の基地からの戦略兵器 要鎧による部隊は到着まで二時間ほどかかる!お前たちは約二時間アークトゥルスを足止めしろ!これまでおしえこんできたことを存分に発揮すれば必ずできると考えている!以上だ健闘を祈る!」

戦地への転送が始まった。全員が混乱した様子で装備を転送していた。

そして、人の転送が終わった。

そこには、破壊された戦車がすでにあった。

空には戦闘機、しかしほとんどは通った瞬間にレーザーの様な物で撃破されて地に着く。

そして、巨大な敵、介にはすぐに理解できた。あれがアークトゥルスだと。

「あんなのと戦えるわけねぇだろォ!」

何人かが逃げ出す、そうだ、あれは悪夢だ。だから存在する。介の精神を恐怖が支配した。

「俺に続け!」

元島がアークトゥルスに向けて走り出す、身体と大して変わらないぐらいの大きさの大剣を片手で持って。

「いくぞ介!ここでかっこつけねぇでどこでかっこつけんだ!?」

竹斗も駆けだす、介も駆けだして、いつの間にかその場にいた全員が交戦していた。

元島の剣が形を変え、レーザーを撃った。

アークトゥルスは元島に反応し、攻撃をしてきたが、すべて防御か回避で防いでいた。

「その程度かアークトゥルス!」

跳びび上がったかと思うと目の様な部分に剣を突き刺し、レーザーを撃つ。その後剣をえぐるように抜いて地面に投げ、腰の左右から銃を取り出し、乱射した。

竹斗が続く。巨大な槍でアークトゥルスを貫通した。

そして介が攻撃を開始し、左手で持つアンカーを突き刺し、右腕のパイルバンカーでアークトゥルスをぶち抜いた。

そのころには増援の戦車部隊が到着しており、激しい砲撃を始めた。

しかし、僅かな時間で戦車を殲滅してしまった。

アークトゥルスもレーザーを戦技士にも撃ち始めた。

一撃で半数近くを殺した、しかし、元島をはじめとする三人には一撃もあてることができていない。

「一度態勢を変える!奴の後ろに離脱しろ!」

「「了解!」」

ジャンプしたのはよかったが、着地するであろう地点にはすでに小型種が集まっていた。

「邪魔だジャンク共!」

そういうと元島は銃を撃ちながら地面に接近。刃をかざしていたヴェルネ級を蹴り飛ばすと地面に突き刺さった剣をぶん回した。

竹斗は盾を転送し、その盾で勢いよく敵を押しつぶした。

介は比較的大型の敵を見つけ、アンカーで近づき、パイルバンカーで破壊、その反動を利用して着地した。

「要鎧が来るまで時間がある。要鎧部隊の連中を給料泥棒にするぞ!」

「それってどういう意味ですか!?」

「アークトゥルスをここで仕留めるって意味だ!」

「何か策でもあるんですか!?」

「あるわけないだろ!野郎に人間の恐ろしさを教えてやるだけだ!」

そう言うと、元島が地面を蹴り、アークトゥルスに新体操の如く回転し、大剣で大きな傷をつけた。

全力で介と竹斗が小型種をかきわけてアロウの軍勢を突き抜ける時には既に大勢が決していた。

「永井!風雁!アークトゥルスを逃がすな!」

アークトゥルスはもはや原型を残した見た目ではなくなっており、外装がほとんど剝されていた。

その上、戦闘の続行が困難と判断したのか、撤退を始めていた。

「言われずとも!」

介がアンカーで接敵する。

しかし、尋常ではない対空砲火によって行く手を阻まれる。

「これじゃ近づけねぇ!」

「剣は持つためだけの装備ではありませんよ!」

一馬がそう叫び、剣を投げ飛ばし、ワイヤーで引っ張ってアークトゥルスの胴体から引っこ抜いた。

「永井!風雁!離脱しろ!奴のブースターの炎に焼かれるぞ!」

そう言った途端、とてつもない熱風が介たちを襲い、吹き飛ばされた。

「逃がしたか・・・!何もしなくても要鎧部隊は給料泥棒だったな・・・。」

体勢を安定させたときには既にアークトゥルスは空高くに飛び上がっていた。

「任務完了だ、永井、風雁、岡島、帰投するぞ。」

次々と帰還していく仲間たちが見える。しかし、明らかに人数が減っていた。

「今回の戦闘でどれだけの仲間が死んだんだ・・・?」

「さぁな、だが気を抜くな。これが戦場だ。これが人類が生きるための戦いなんだ。」

元島が答えた直後に、全員が訓練所に帰還した。

報告では半数以上の人間が戦死したそうで、行きのブリーフィングルームと帰りのブリーフィングルームでは空気がすべてを物語っていた。

中には泣いている者もいたが、介はなぜかなんとも思えなかった。

むしろ、戦わなかったという道を進んだ自分の末路を恐れていた。

「戦技士になる者はこの戦いを繰り返さなければならない、故に、死と隣り合わせの日常を送らなければならない。」

「それでは最後の辞退する者を募る。辞退する者は前へ。」

多くが前に出た。出なかった者たちは決意を固めていた。

もう、後戻りはできない。これまでの日常には戻れない。しかし、残る者は他の戦いを知らぬ人たちを守らなければならない。

この戦いで介の思いは大きく変化した。ここで逃げる奴は、大人たちと同じだと思うようになっていた。

そして、訓練最終日。ほんの十三人だけの式が開かれた。

半分が死に、また残った半分は戦いを恐れて脱落した。

その十四日間の訓練を終え、再び中学生としての生活が始まった。

授業の終わりを告げるチャイムはまるであの日鳴ったサイレンの様に聞こえる。

いつ自分が死ぬかわからない、そんな恐怖を介の精神を蝕んでいく。

ふと考えればこの街の焼ける風景が目に映る。

もし、自分が逃げれば、この街はこうなってしまうかもしれないという逃げないための考え方さえも介の精神を潰そうとする。

気づけば、もう、あの戦いから三週間がたっていた。

その日、元島から電話があった。

「永井か、元島だ。」

「あぁ・・・どうも、永井です。」

元島には介がまるで、死にかけているような声に聞こえたが、理由がわかっている以上、詮索をするつもりはなかった。

「お前の名が、作戦司令部で取り沙汰されている。初陣でプラネット級を撃退したエースとな。」

「そう・・ですか。」

介は怯えきっており、どれだけエースと言われようと嬉しくもなく、死んだ仲間を助けられないエースと自分から蔑んでしまうようになり、もはや自分だけで戦った方がいいのではないか、と思った。

「お前の言いたいことはわかる。自分が一人で戦いたいって言うことだろう?」

「えっ、まぁ・・・そうですけど。」

「なら、これはお前にとって朗報になるだろう。」

「朗報・・・?」

「ああ、そうだ。お前は新規に創設される少数精鋭部隊のメンバーに選ばれることが決定した。」

「少数って、何人で?」

「五人だ。」

「五人?」

「選ばれる奴は全員怯え知らずのメンバーになるそうだ。明日、そのメンバー全員がお前が最初に行った基地に集合する。準備しておけ。それでは失礼する。」

「了解しました。」

電話が切れた途端、介は少し気が楽になった。

いま、自分は戦技士だ。だから、戦わなきゃいけない。でも人が死ぬのはごめんだ。

そう介は気を引き締めた。





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