戦技士
書いている途中、ハートマン軍曹が頭に浮かびました。
介の親は両親共に介が戦技士になることを知っていた。
そこで介は気づいた。
外の惨状は大人たちが子供たちから隠したいほど、悲惨なものであることに。
しかし、もっと悲惨なのは、戦技士になるための訓練だった。
「貴様らが戦場で使い物にならなくては困る!だからこそこの訓練所にいることを許されているんだ!わかったか甘ったれ共!」
朝っぱらから怒号が介たち-戦技士候補生たちに浴びせられる。
全員が朝五時にたたき起こされ、ここに呼び出され、今こうやって小一時間も立たされているのだ。
しかも、怒号を散らしているのはあの元島である。
「俺はこの訓練に挑む自信のある奴を歓迎する!だが、この訓練に耐えられない奴は片っ端からお家に投げ返してやる!いいか!」
元島の声が途切れると「先輩になに口きいてんだよ」という声が元島共々、全員の耳に入った。
「誰だ!?今年齢でどうにかなると思った糞は!?」
元島は顔に冷淡な笑みを浮かべ、言葉を言い放った男の前に立った。
「お前か?」
「いいえ。」
「そうか嘘つきめ!どうだ戦場で死ぬ気になったか!?」
「いいえ!」
「そうか、ならここをさっさと出ろ!十秒与えてやる!貴様がここを出るためのな!」
「無理です!」
「なんだと!?簡単だろうここを出るのは!そこの門を通ればいいんだからな!」
「出るための準備があります!」
「準備ィ?貴様にそんなものいらん!後でズタズタにして前線に送り付けてやる!」
「やめてください!」
「たったの二週間も耐えられない根性無しに生なんぞいらん!」
恐ろしい言葉が次々と飛び出した後に訓練が始まった。
「まずお前たちに教え込まなければならないのは白兵用装備の転送だ。三つ装備を用意した。お前たちに配布した端末から三つ全て武装転送をしろ。」
全員が一斉に端末を起動して試行錯誤し始めた。
「どうだ!できたか!?できた奴から待機の姿勢をしろ!」
介が端末に触れていると理解できないまま一つ目の転送に成功した。
すると他の者も少しづつ成功するようになった。
ふと介が竹斗を見ると、すでにすべて終わらせていた。
「風雁、お前は全てこなしたのか?」
「イエスであります、サー!」
「そうか、全部ダミーだったら殴るからな!」
竹斗と元島がそういった会話をしている間に三つ全ての転送を終了した。
「今の時点で完了した奴はそのまま待機と言ったはずだが?」
元島が一人の女にカミツいた。
「誰が座れと言った?」
なんと座っているのである。
「さっきっから何?ウザいんですけど。」
「ウザい?そうか俺はウザいか!なら明日にでもお前を前線にぶちこんで肉塊になるまでこき使ってやろうか!?それともここから退場して骨無しとでもあだ名をつけられたいか!?」
「知るかよ。」
「そうか、ならお前は前線行きだ!明日までに支度しろ!」
そう言い放つと元島は離れていった。
「次に行うのは、戦闘服の転送だ。説明はあえてしない!かかれ!」
これに関してはほとんどがすぐに成功した。しかし、驚いたのは見た目で、防刃ジャケットや防弾チョッキなどのようなものは一切ついておらず、飾り気だらけのような見た目だった。
「そいつが見た目だけと考えるな!そいつには全身にシールドを展開する機能がある。故にそのようなものになったんだ。」
ほんとうにそんなものあるのかというような感じではあるが、その時には全員が渋々信じることにした。
そして、次にあった訓練(?)は座学だった。
「本日から皆さんにアロウと戦う上で必要な知識を教える役となりました。岡島 一馬と言います。皆さん、よろしくお願いします。」
なんと、座学に関しては戦技士らしくないメガネをかけた介たちと同じ年齢ぐらいの少年だった。
「まず、アロウとは機械生命体です。故に非常に統率のとれた行動をとります、が、彼らが生命体と言われる理由として、物を食すことがあります。」
物を食す。その内容はかなりきついものだった。
「アロウの主な食糧は人間です。しかし、多くの肉食動物の様にとらえてその場で捕食するのではなく、アロウの拠点で捕食することが分かっており、この点から一定の知能を持つことがわかります。」
「また、彼らは物を体内で、無理矢理陽イオン化し、電子を取り出します。それによって、体を動かすエネルギーを確保しているのです。」
「しかし、無理矢理イオン化するので非常に機関の寿命が短く、一年がようやくであり、ここで自己再生を行って修復しています。ここが代謝に近い働きをするために生物とされています。」
「ですが、この捕食機能がついているのは大型種のみであり、小型種にはありません。そのため、アロウの拠点には、エネルギー源となる大型種が一体以上います。」
「小型種に関しては、コンデンサー、もしくは、知能回路を破壊することで撃破できます。」
「しかし、アロウには通常兵器はあまり効かず、戦技士の武装のみが効果を発揮することができるゆえに戦技士と呼ばれる歩兵戦力が作られたのです。」
「また、アロウの攻撃はとても生身では耐えられません。そのため、戦技士は戦闘時のために戦闘装備兼制服があり、この服のシールドによって攻撃を直接当たらないようにしています。」
そのあとまさに訓練というものがあったのだが、それがむちゃくちゃに厳しく、とてもではないが介は弱音が抑えられる状況だとは思えなかった。