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死線の戦技士 K-KNIGHTS  作者: 豪魚
書き直し前
2/6

現実

放課後になり、多くの生徒が帰路につく中、介と竹斗は元島に言われた通りに来ていた。

人混みから一人此方に向かってくる。

元島だ。

「どうやら、本気で外を知りたいらしいな。」

介は無言で強く頷いた。

近くにある車まで案内されたのだが、その車は朝に見た装甲車と同じ形のもので、四方が僅かに吹き抜けた天井には凄まじい存在感を放つ物-人の腕の二倍はあるかという大きさの機銃が取り付けられていた。

「事前に聞くが-」元島が一方的に話し始めた。「何か質問はあるか?」

介は後部座席の左端の席につくと話し始めた。

「なんで俺たちは外を見ることを許されるんですか?」

少し悩んだ末、元島は答えた。

「お前たちが特殊な適正を持つからだ。」

適正、創作物などでしか聞いたことのない言葉が言い放たれた。

なぜ、いま元島が悩んだのか、意図したものではないにせよ、恐ろしい何かが一寸先に見えたような気がした。

「特殊な適正って-」

「じきにわかる。」

その途端、車が止まった。

「着いたぞ。」

降りた先は柵の外だった。

そして、建物。

「ここが基地だ、説明はここで行う。」

コンクリートで固められた建物へと入り、スクリーン室という部屋へ入った。

中では何人かの同年代ほどの少年少女がスクリーンを中心に置かれた椅子についていた。

「説明を行う。」

出てきたのは軍服を着た男だった。

「ここに来てもらったのは他でもない、君たちがこれから説明する『敵』と戦う上で必要な適正を保持するためだ。」

男が指示棒を取り出すと共にスクリーンが映る。

スクリーンに映ったのは人程の大きさの二足の足をもつ機械。

形は人に近く遠いフォルムをしている。

「これが先ほどいった我々の敵『アロウ』だ。」

「アロウは我々人類を殲滅するためにこれまで何度も攻撃を仕掛けてきた。」

そして、その一体から視点が離れ、さらに大きな個体に移った。

「先ほどの個体がヴェルネ級といい、大きさは成人男性の平均身長と同じぐらいだ。」

「この個体がガーリッズ級で、大きさは三階建ての建物に近い。」

再び、視点が動く。

「更にこいつの上級種も存在し、その種こそがこのハンドック級だ。」

「大きさは六階建てのマンションに匹敵する。」

「そして、絶対に交戦を避けるべき個体がこのプラネット級である。」

再び視点が移動すると、幾つもの個体が一度に映った。

「プラネット級は個体数が少ない、故に一体一体に個体名がある。」

指示棒を挙げるとその一体一体の下に呼称が映った。

右からシリウス、カノープス、ケンタウルス、アークトゥルス、ベガ、カペラ、リゲル、プロキオン、ベテルギウス、アケルナル、ハダル、アルタイルという名だ。

「以上だ、その他の説明は君たちの意向に沿って明日行う。」

「これから君たちが体験をするものは君たちの命に関わるものだ。ここで一端辞退する者を募る。」

そして渡された紙には辞退届と書かれている。

介にはその紙を基地からでたその時に提出しようと思った、しかし、介には人類がこれまで戦ってきたことを信じることができていなかった。

「永井、風雁、お前たちは辞退しないのか?」

基地を出たところで元島が介たちに声をかけた。

「俺、まだ実感がないんです。人類が戦ってきたなんて・・・」

竹斗が声を張り上げて言い張った。

「俺は介がなんと言おうと辞退しませんよ。」

「なぜだ?お前が死ねば家族が悲しむはずだ。」

元島の問いにも竹斗は全く動じずに答えた。

「家族つったって、ほとんど縁らしい縁なんてないっすからねぇ。」

にやついた顔で答えたが、介は少し暗いものを見たような気がした。

「ただ、辞退しなかったらしなかったできつい訓練があるが?」

「うわぁ、それは嫌だな・・・」

介だけ、何もない場所に取り残された様に感じていた。

あれだけ、ずっと前から憧れていた場所。

そこへあと少しの所に来ているのに、まだ一歩も踏み出せない自分が情けなかった。

「俺はッ!それでも辞退しません!」

竹斗と元島がふと顔を介に向けた。

「永井、お前もなのか?安易な考え方はするな、後悔することになるぞ。」

子供だからといってまだ早いと言われたような、馬鹿にされたように聞こえた介はそれだけで憤りを感じた。

「後悔は俺は絶対しません。絶対に!」

「俺にとってここで踏みとどまることが後悔になるんです!」

元島は驚いた表情を見せなかった、それが介にとっても、竹斗にとっても意外だった。

「なら、お前が一人の『戦技士』として戦場に立った時にもう一度聞いてやる。」

戦技士、介にも竹斗にも簡単にその言葉が理解できた。

そのまま一日が過ぎ、介と竹斗の戦いへの距離も近づいていた。





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