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死線の戦技士 K-KNIGHTS  作者: 豪魚
書き直し前
1/6

街の外は

ある時、教わったことによれば、海など無く、この街だけがテーブルの様になっているらしい。

昔の文献でそんな話があったはず。

でも、それは同じころぐらいにひっくりかえされてたように感じる。

下は地獄か無か。

まだ地獄の方がいいかな、と思っている。

でも、ある日夢をみた。

自分と何人かが、砂の大地や、氷の大地、そして静かな海に立っている夢。

そこで、誰かが奴らの名を言う。

でも、その所だけノイズが入ったように聞こえなくなる。

妄想かなんかかな、とも思った。

夢だから何でもいいだろっていう理論。

それが一番手っ取り早いだろうな。

はっきり言って、夢なんかは好きな職業に就くとか、そんなのでいい。

でも、夢に出てきた景色は、美しかった。

青く澄み、生き生きと泳ぐ魚達がいる海。

ていうかなんでそんな妄想してんだよ。

自分で自分にツッコミをいれる、俺はそんなくだらないことにしがない中学生だ。

広く蒼く、空はあるが、飛べないんじゃ意味ねぇだろ。

鳥がそんなことを言いたげに寝起きの少年-介を見つめた。

知らねぇよんなもん。

そういう風に目で返してやった。

ふと時計が目に映る。

五時、相当早く起きたようで、まだ少し暗い様な気がする。

こんな日は三文貰えるらしい。四字熟語がそういってた。

テレビを付けてニュースを見ても大したニュースはなく、いつも通り政治家が汚職だのなんだの言っているのみ。

賄賂とかする奴よりそれを追う奴も大概だよなーなんて思うだけ。

つまりはそれがどうした?という程度。

介にとっては街の外の方が興味を引くものだった。

双眼鏡なんかで見ても建物があるようにしか見えない。

-人がいる。-

そう見えたこともある。

何が下は無だ。

この世界はきっと広いだろうと思う。

そして習慣のようになった双眼鏡で外を見ることを始めた。

そこで見えたのは、兵器。

一列になって走る戦車。

その隣を多くの装甲車が左右に一台ずつ並走している。

ときどき見る光景だった。

戦争でもあったら、ニュースではあんな賄賂だの汚職だの言えなくなるぐらいの特集が組まれるほどの大きなネタになるだろう。

彼らは人が死んでもその名をテレビで挙げるかもしれない。

よくよく考えれば恐ろしい。

最後の一両が舞い上がる砂埃で見えなくなったときにようやく我を取り戻して時計をちらっと見た。

もう七時だった。

約二時間も見ていたことを知ると介は自分で感心した。

自分の部屋がある二階から一階へ降りるともう父親は仕事に出ていた。

母親に挨拶を交わすとすぐに朝食を食べ始めた。

「母さん、俺はいつになったらこの街の外を見れるんだ?」

少し笑いそうな表情で「いつも見てるじゃない」と答えた。

いっつもどうかされて答えを聞くことができない。

そんな調子で身支度を済ませて家を出た。

「やっぱりこの時間だったな介!」

家をでた直後に見慣れた顔-竹斗を見つけた。

「竹斗、お前もうちょっとその頭を勉強とかに使えよ。」

「この頭は対人用なんでね。」

そう言って竹斗は褒められた直後の様な反応をした。

「ま、学校行こうぜ。」

「あぁ。」

そう言って置いていた自分の自転車に乗った。

「で、外はなんかあったか?」

竹斗は唐突に外について聞き始めた。

「ああ、なんか戦車がすっげぇ走ってた。」

「マジでか?すげぇな、何と戦うんだろうな?」

適当に考えて思いついたのは。

「機械?」

そう言うと、竹斗は爆笑し始めた。

「なんで人が機械なんかと戦わなけりゃいけないんだ?」

「わ、わかんねぇぞ?だってそういう本あるだろ?」

と言っても根拠にはならない。

「もし、お前が外に出れるとしたら、本当に出ていくのか?」

「あぁ、もちろん!」

『出れるとしたら』の話は何度もしたが、介の心が揺らぐことはなかった。

「俺は少し悩むかもしんねぇな。」

「なんでだ?」

「外ってよ、ちょっと怖えだろ。」

そして、学校に近い道に来ると、ある男が前に立った。

「そんなに外に行きたいか?」

余りにも驚いた為に即座になんのことかを理解することができなかった。

その男は、近づいてこう言った。

「そんなに外へ行きたいなら、放課後、ここへ来い、外を見せてやる。」

そう言って男は立ち去った。

「あいつ、もしかして三年の元島じゃあないか・・・?」

竹斗が小声で言った。

三年、介たちは中学二年のため、元島は一つ上のクラスだ。

だからこそ、介には見覚えが無かった。

しかし、あの言葉が本当なら、と思うと、介は心の中で少し怯えていた。


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