第17羽 ~棺桶から産まれた木太郎~
早めに書けました。ここまで書けると、
あと2、3話ぐらいはペースが持ちそうです。
・・・・・・多分。
「もうちょこっとだけ続くんじゃ!」と、軽く悪ふざけのように呟いてみたが、不安が
拭いきれずにいた。爺さん……コウ 御院主に修行はつけてもらい、人の姿へ
変化する事が可能になったり、帝の使いが刀になったりはしたが……実践はまだだ。
「ってか、あの爺さん……もっと別れを悲しんでくれても良いのになぁ……ほぼ、
追い出された形だし」
そうぼやくと、いつの間にか狐っ娘へ変化していた帝の使いが、やれやれ
といった表情で、首根っこをつかんできた。
俺が「お、おい! なにすんだよ」と聞くと、その表情を崩さずに……。
「アンさん。向かってる方向、まったく真反対に行ってしもうてるよ」
と、静かに言われた。いつも通りの、俺らの日常。でも、ここに来てからの“非”日常
と言う名の日常は、アイツに作られた物で、その日常が続くかは、アイツの判断に
よる物だって、知っていたはずなのに……。
「あ、“こ~ちゃん”! アレじゃない? アレが“帝”くんが言ってた奴じゃない!?」
「そうなんじゃない? 見た目は“ぬこ”と同じくらいだけど……感じる妖気が貧弱ね」
いざ、壊れ始めると……頭が真っ白になって、何もできずにただ呆然と、壊れゆく
日常を眺めることしかできなかった。
俺には、相手の妖力の大きさを知る事なんてできないハズなのに、虫唾が走るほど
気持ちの悪い妖力が、体を這い回る。その感覚が消えたときにはもう、
大小二つの人影は、山の木々に紛れ消えてしまっていた。
「い、今のは……帝の仲間か?」
未だに震えが止まらない体を抱くように腕を組みながら、帝の使いの方を振り向く。
でも、返ってきた言葉は……。
「アテは……あんな奴ら見たことあらん。と、思うわ」
と言う、曖昧なものだった。少し怪しく思い、ジト目で見てみると……帝の使いも
震えていた。顔が青くなっていた。彼女も、俺と同じように畏れを感じた
のだ。なら、これ以上詮索する意味は無い。
「と、とりあえずアンさん。あっちにまっすぐ行ったところから、川下に降りて
行けば着くはずやから……はよ行こか」
「そうだな……一旦、さっきのは忘れるか。あまり深く考えても意味ないだろうし。
ただ今は……“強い男になる”事が先決だしな」
そう、ごく普通のことを言うようにサラリと言うと、「……せやな」と返してくれた。
■■■
「川について、下るなら川の流れに乗った方が早いという結論が出て、イカダを
作ろうとしたわけだが……」
作業量の割合として、俺 3:帝の使い 7。手先が器用ではない上に、この“人の体”に慣れて
いない俺としては、ありがたかったのだが……。
「なぁこれ、アレだぞ? 葬式の時に見たぞ? どう見たって棺桶じゃね? 死ねと?!
刀に変化したと思ったら、勝手に宙に浮き木を切り始めるから驚いたが……。
それでだよ、そんでから丁寧に板状にしてから作りぃ、仏の顔が見られるアレも完備させて
んじゃねぇーよっ!! ワザとやったろコレ!」
「ち、ちゃんちゃらおかしい事言いはるなぁ、アンさんは……。素材削減・作業量削減・耐久性
の全てを兼ね備えてると言ったら、この形しかないやんか。ま、まぁアテも作り終わってから
棺桶だって思たけど…………思いましたけどっ!!!」
狐っ娘の姿で棺桶[仮称]に腰掛け、縁をペシペシ叩きながら抗議してる姿に、少しカワイイと
思ってしまったが、今、その事は頭の“新しいフォルダ”にコピペしとく。って、そうじゃない!
「思ったんなら……少しぐらい改良しろよ!!! ったく、出来てしまったなら何言っても
仕方ないけどさぁ」
まあ、作業量3の俺が言えることじゃないが……それにしたって酷い。酷いけど、せっかく
作ってくれたんだし、口では色々言っても、ありがたく使わせて貰うが。とりあえず、上面に
備え付けられている出入り口[らしき場所]から体を入れ込んでみた。でだ。
「どうやって進むの? これ」
と、訪ねると……。ガタガタと棺桶が揺れ始め、大きな水音まで聞こえだした。
「アテが川に流すに決まってるやんか。流れ出したら、アテが刀になってアンさんと一緒に
イ・カ・ダに乗れば良いかんなぁ」
「そっか、なるほどな。全て理解した……。お前って意外と、馬鹿なんだな。狐耳の癖に」
■■■
暫く、ウトウトしながら川を流れ、数時間が経った頃……。何かにぶつかったような振動と、
「アイタッ」という、聞き覚えがない少女の声が聞こえた。絶対、誰かにぶつかってしまった。
すぐに現状を確認しようと、棺桶から勢いよく飛び出してみると……。
「は、裸? …………もしかして、水浴び中とか、そんな感じだった?」
「ひっ、き……キャァアーーーーーーーー!!!! 誰か分かんない人のエッチィ!」
さえないメガネ少年と、お風呂好きの少女が織りなす、ラブコメ漫画のようなシーンのように、
俺は少女の裸を目撃してしまった。首元は、マフラー[毛糸じゃなく織物?]で隠れているが、
それ以外は全部見えている。これが漫画やアニメなら、不自然な光さんが働くが、俺の目には、
そんな機能は備わっていない。俺自体は、アソコから大事な部分まで丸見えだ。とりあえず、
悪気がないことを証明するために、浅い川に飛び込んでみる。ん? 何で飛び込んだし俺。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」
そしたら、川に電流が流れ出し、俺をどんぶらこ と流し始めた。




