第16羽 ~妖の力~
ネット環境亡くなりました。
お久しぶりです。詳しくはTwitterで。
戦うわけでもないのに、ずっと刀を抜いたままじゃ目立つので、とりあえず
鞘に戻す。炎の刀身は、俺の念によって消えるらしく、しまおうとした
段階で、鉄部分のみを残し、スッと消えた。
今までに無い、確実な”攻撃手段”を前に圧倒されるが、とりあえず今は
ボーっとしている時じゃない。帝の使いに聞きたいことが山ほどある。
「……帝の使い。人間の姿に化ける力を無理矢理引き出したのって、お前の
仕業なんだろ? それって、この刀……お前を武器として使う為か?」
そう、問いかけると。刀の持ち手……頭の部分から、小さな尻尾が生え、
それと同時に帝の使いが喋り出した。
「それも訳やけど、もっと別の理由があってなぁ。なあ、クソジジイ。
アンタだったら、この姿の利点は分かるやろ?」
そう、話を振られた爺さんは、少し驚いた後に、わざとらしい咳と
腕組みをしてから話し始めた。
「そうだのぅ、利点だけ言えば結構あるのぉ。一つ言えることは、
”三霊神”級の幻獣……膨大な妖力を持つ為には必要不可欠ではある。
ただ……私らのような、体が出来上がってる者なら良いのだが、鶏……
お主の未熟な体じゃ、妖力を制御できずに、暴走してしまう可能性が
とても高かった。ただ、お主は……私が思った以上に、強かったという事だ。
ただ、一つ不安感が残る部分がある。スキルの中に、”不明”な部分があった
だろう。おい、狐よ。どういう事なのだ?」
「さてな。アテにも分からんよ。アテも昔から同じスキルを持っているん
やけど、何をしても明らかになることなんて無かったさかい、もう諦めたわ」
「ふむ、ならば”妖”関連であることは間違いないであろう。
……面倒な事になったな。帝の奴が、悪さをしてなければ良いのだが」
そんな、小難しい話ばかり聞いた俺は、全く話しについて行けず、二人(?)に
「すみません、さっぱり分からないです」と正直に言うと、ため息交じりに
再度、馬鹿でも分かりやすく教えてくれた。
■■■
で、話を要約すると……。
[帝の使いは、狐の妖]
[膨大な妖力を使う・押さえるには、人の姿に化ける必要がある]
[スキルの■-不明-は、妖関連だから要注意]
らしい。最初っからこれだけを伝えてほしいものだ。
「で、結局……俺は、妖力を使えるようになったんですか?」
「まだ無理だのう」
一瞬で、俺の期待をぶった切られた。
(え、使えないの? 使える雰囲気だったじゃん……)としょげていると。
「まあ、修行次第だのぉ。だが、私からは教えられん。私のは、ちょいと
特殊な部類だからのぅ。……この山を越えた先、小さな集落がある。
その近くに、二人の兄妹がいるはずだ。その者達に教わると良い」
よくは分からないが、[私から教えられることは以上だ、さぁ行けぃ!]
という展開だろう。じゃあ、すぐにでも旅立たなくちゃな。
「鶏よ、少し待て。一度、荷物を持って本堂へ来い。私からの贈り物を
やろう。この先、必ず使うときが訪れる。……先に帰えっとるからの」
それだけを言い残し、颯爽と森を駆け抜け、爺さんは山を下っていった。
……それと共に、辺りから低いうなり声が聞こえ始める。
「なるほど。そういう事か……。よし、逃げよう!」
俺は、すでに虎なんて目じゃないほど早く走れるのに、それすら忘れて、
とにかく全速力で寺まで走った。
■■■
「えっと、風呂敷と……いつの間にか外されてた鉄爪っと。これで、荷物は
ちゃんと持ったな。って……てか、荷物少ないなぁ」
床に並べ、遠足前日の小学生のように準備をしているのだが……。
遠足に行くときより荷物が少ない状態に、自分に対してあきれてしまう。
「アンさん、まだ産まれて1週間も経ってない事、忘れてるん?」
「あ、忘れてた」
鶏になり、虎から逃げて、虎から逃げて、虎を戦って、虎と戦った。
今までに無いスリリングさを味わってきたからか、時間感覚が相当狂ってる。
ってか、俺の数日……虎関連ばかりだな。なに? 前世、虎に何かしたっけ?
「ま、まあいいや……。とりあえず行ってみるか……貰えるもんは貰いたいし」
■■■
「遅い! 準備だけで何分待たせるつもりだ! お主はアレか? 近頃の
女子かのぉ!?」
本堂の戸を開けた瞬間、爺さんの怒号が飛んできた。
「ちょ、ちょっと待て爺さん。それはちょっと違うぞ……」
と、返した後、すぅ~っと深く息を吸い込んでから……。
「女は“昔から”支度が遅い」
「んなこと、どうでもええよ…………」
呆れ顔の帝の使いに同調するように、爺さん (話の現況)がウンウンと頷く。
「で、鶏よ。……ん? 今は“人”と言った方が良いのかのぉ。まあ、
いいわ。お主が、“神狼村”の村長から買い付けた風呂敷・鉄爪を、一旦私に
預けてくれんかのぉ」
「あ、はい。分かりまし……ん? なぜ、村長から買い付けた事を知っているん
ですか……?」
「そうなるように、私が予め準備したからに他ならないのぉ」
(元・神の側近は伊達じゃないって事か……)と、改めて爺さんの凄さを
実感しつつ、俺は言われた通りに爺さんに手渡した。
「ふむ……おお、ロウの奴め、こんな上質な布を……。物は充分だのぉ。」
まるで、某・鑑定番組の鑑定士の如く品定めをした後、帝の使いに
「“アレ”を頼めるかの」と言うと、何度も同じ事を言われてきているかのような
振る舞いで、「はいはい、持ってくるわ」といい、本堂から出て行った。
「……そういえば爺さん、一体何を始める気で」
「なあに、ちょっとだけ“造って遊ぼ!”するだけだのぅ」
と、話している間に、バタバタとした足音が聞こえ始め……。
「持ってきたわ。ほれっ」
帝の使いが、扉をバチコーンと開け、それと同時に“何か”を爺さんに放り投げた。
「ほっと。そうそう、これよ、辰の髭。あまり使いたくはないが……
仕方ないわ。……よし、造り始めるかのぉ。鶏よ、よく見ておくようにの」
「はい!」
「これを……こうして……こうじゃ! よし、出来た! “蓬莱の薬入り首飾り”~」
「いや、全くわかんねぇーよ!! QPでももっと詳しくするわ! って……。
本当に、どうやって造ったのですか……?」
と、爺さんに聞くと、帝の使いが軽くため息をついて。
「アンさん、これはジジィの“スキル”さかい、マネしようと思ても無駄なんよ」
「な、なるほど……。で、爺さんは俺に何を造ってくれたんだ?
蓬莱のなんたらって言ったけど……」
「使うときが来たら教えてやるわ。四六時中・肌身離さず、首から掛けておく
ようにの。」
そう言われ、慌てて爺さんから首飾りを受け取り、首に掛けた。
すると、爺さんが俺の姿をじぃーっと見てから……。
「よし、忘れ物はないのぉ。では……さっさと出て行けぇい!!!」
「あ、ああ……はい! お世話になりました!」
長く、短かったような修行の日々は、爺さんの大きな声で終わった。
「なぁ、帝の使い。方向合ってる?」
「こっちのはずやわ。さ、さっさと行くかんなぁ」
そして俺たちは、また新しい一歩を踏み出し始めた。
「俺たちの冒険はこれからだ!!!」




