幻想と呼ばれて
七色の光を抜けて眼前に見えたのは巨大な湖だった。
落下のスピードと共に水面を轟音を轟かせながら水中にダイブした。
動揺して水中で藻掻いたが、原初ちゃんに落ち着くように言われて冷静さを取り戻した。
冷静に周囲を見回して上を確認した、陽の光が漏れ出ている姿は天界への階段を彷彿させ、そこを目指す。
上昇して水面へと顔を出した。
「ぷはぁ! はぁ、はぁ、げ、原初ちゃんここは……」
『うん、『縦』世界にやって来たよ。どうやら森の中にある湖みたいだ』
確かに、水面から観える景色は見渡す限り深い森だった。
『取り敢えず湖から出よう』
「うん」
泳いで湖の岸辺へと辿り着いた。
大地に立つと本当に異世界なのかと思う程に目新し物は見つからない。
湖と森、後は草木だけだった。
『異世界だからって基本はまーちゃんの世界と変わらないところは多いと思うよ? 人がいる街なら文化の違いとかあるから異世界って感じになるかもね』
「そうだよね……ちょっと期待しちゃってた」
何気なく下をむくと肌の色が元に戻っていた、原初モードが切れたらしい。
おそらく湖に突っ込んで動揺したから解けちゃったんだ。
体が重い、やっぱり精神世界と現実の身体に誤差が出ているんだな。これからは身体を鍛えようと思う、少しずつでも体力つけなくちゃ。
なんて考えていたが肌色を眺めていて思い出した。
私は完全無欠の素っ裸だったことに。
「あっ! 私裸だ……」
恥ずかしい所を隠した。
『水浴び途中で逃げたからね……ああ、でもまーちゃんの身体は美しいね、良いよこのままでも!』
「良くない! これじゃあ変態さんみたいだよ」
服はどうしよう、葉っぱをなんとかして取り敢えず大事な部分だけでも隠したい。近くに街があったとしてもここの文化が分からない、ヘルヴェルトなら物々交換が有効だけどここは通貨とかあるのかな?
それに裸の女性が突然現れたらどうなるか、騒動になるかもしれないし、危険な奴に目をつけられそう。
そもそもここがどんな世界なのか分かってない。
困ったと思いながらどうするべきか思案していると私の聴覚は足音を捉えた、後方から聞こえた。
丁度森の中、誰かいる。
緊張感に固唾を呑み、ゆっくりと振り返る。
「…………綺麗」
素直な感想が自然と零れた。
ふわりと舞う黄金色の長い髪の毛は陽光を浴びて神々しく輝き、絹を彷彿させ滑らかに風に吹かれて自然と視線を奪う。
神々しい髪から覗くまつ毛に囲われている青い瞳はまるで星を思わせるように輝き、吸い込まれそうな錯覚が胸を高鳴らせた。
透明感ある白い肌に微かに紅に色付く頬、少し低い鼻、小さな口が黄金比に配置され少し幼さの残る少女の美を知らしめる。
これこそが美少女と該当する存在だと認識した。
大きなリュックを背負い、緑色のサファリジャケットを纏い、ズボンにはポケットが沢山あって冒険をする服装だと思った。
そんな格好でも彼女の美しさは損なわれない。
若い人だ、もしかしたら二十代前半か十代後半か。
『本当に綺麗な人だ……そうだ、話し掛けて情報収集をしよう!』
「そ、そうだね…………えっと、こ、こんにちは……」
あれ、そもそも言葉は通じるのだろうか?
そう思っていると金髪の彼女は颯爽に私に近付いてくる。目の前まで来るとしゃがんで背中に背負っていたリュックを下ろして荷物を漁る。
少し混乱しているとリュックから真っ白なワンピースを取り出して私に差し出した。
「あ、私に?」
頭を縦に振り肯定した。
「ありがとう、ございます」
そう言ってワンピースを受け取ると子供のように笑う。
『本当に可愛い……この子にバニーガールの格好させたら最高を超えて最強だ…………と言うか言葉通じてるっぽいね? 私にって聞いたら頭下げたし』
確かにそうだ、なら日本語が通じるんだろう。
私はワンピースに着替えた、うんぴったりだ。ただ、真っ白だから色々透けてるけどさっきよりはマシ。
服を貰っておいて文句は失礼か。
「私は皆川真って言います、貴女は?」
「……あう! あうあう!」
あれ、もしかして言葉喋れないのかな? それともここの言葉?
でもこっちの言葉は通じるんだよね?
『うーーん、もしかしたらこの世界に何か特殊な力が掛かっていて言語を理解出来るようになってるのかも、ほら異世界物とかの小説を読むと魔法とか特殊な力が働いているってことかもね』
なるほど。
「えっと私の言ってることが分かりますか?」
「あうっ!」
元気よく拳を天に掲げて私わかるよって言ってる気がする。なんか第一印象と違って結構アクティブな人かも。
「あう、ああう、まーーとぅ! まぁーーうっ! まーーとぅ!」
なんだろう、何か言いたそうにしている。
『あっ! まーちゃんもしかしてこの子、まーちゃんの名前を言おうとしているんじゃない?』
そうか、そう考えると言えない言葉を一生けん命に言おうと努力している姿がとても愛おしい。
可愛い。
「まぁーーとぅ! ま、まっ、まぁこーーとぅ!」
惜しい!
懸命な練習を越えて等々私の名を呼ぶ。
「まぁーーこぉとぉ!」
「そうそう! まことだよ、まこと!」
「まぁこと! まーーと、まことっ! あう! まこと! まことまことまこと!」
「言えたよ! おめでとう!」
「あうあう! まこと!」
私の名を呼びながら全力で私に抱きついて来た。
柔らかな感触、石鹸の良い匂い。こんなに可愛い子に抱き締められて女の私でも顔が熱くなった。
『…………あれ、この子……もしかして……』
何かを原初ちゃんが言い掛けた時だった、森奥から人影が映る。
「どうしたんだよ急に走って、心配するだろ? 森の中で逸れたら大変だぞ?」
声からして男の人、内容的にこの子の知り合いだと思う。姿を現した男性はこの子と同じように緑色のサファリジャケットとズボンを履いている、そして大きなリュック。
仲間だと認識できる。
ただ、腰の辺りに長い物が見えた、それは刀だった。
武器を持っている。
少し身構えた、森の影から出てきて陽光に辺り顔が認識出来た。
短い黒い髪、後頭部の部分が少し長くなっているらしく紐で束ねていた。鋭い目、少し高い鼻、怖い印象だと思ったけど金髪の彼女を見付けるととても優しいく安堵した表情をする。
それだけでこの子が大事な人だと理解できる。だってしゅーが私に向ける笑顔に似ているから。
鋭い目の二枚目な彼はこの子といる私に気が付いた。
あれ、この顔……。
「………………ま、まこと? 皆川、真……だよな?」
私を知っている?
ああ、やっぱりそうだ。
「…………護、お兄ちゃん?」
信じられなかった。けど目の前にいたら信じるしかない。
眼前にいるこの人は護お兄ちゃんだ、私の従兄弟、神代護だった。
「久し振りだなぁ! 何年ぶりだ? 大体三年くらいか?」
「うん! 護お兄ちゃんが家に泊まりに来た日からそれくらい経ってる! 本当に久し振りだね! どうしてこんな所にいるの!?」
「いや、それはこっちのセリフだ。何でまことが『幻想の大陸』にいるんだ! まさか向こうで魔法陣を発動させてしまったのか!?」
「ま、魔法陣? それに向こうって……」
『まーちゃん、ここは落ち着いて彼の話を聞いた方がいいよ』
そうだね、落ち着いて聞いた方がいいか。
「とにかく護お兄ちゃん、何処かゆっくりできる場所で話さない?」
「あ、ああ、そうだな……エリス、まことから離れろ? 苦しそうだぞ?」
エリス、それが金髪の子の名前。
「あう! あうあう、まもるぅ!」
彼女のロックが外れ護お兄ちゃんへ目掛けて突進、そのまま彼の胸の中に埋もれた。頬を赤くして甘えている。
そうだよね、護お兄ちゃんが優しい表情をするなら彼女にとっても大切な人なんだ。
護お兄ちゃんに連れられて森の中を歩いていた、予備の紺色のサファリジャケットと紐靴を貰い先に進む。エリスちゃんは嬉しそうにお兄ちゃんの手を握り、反対の手で私と手を取っていた。
まるで子供の頃にやった電車ごっこみたいで少し懐かしくなる。無垢な笑顔の彼女は本当に楽しそうだ。
時折お兄ちゃんを見詰めて顔を更に赤くしていた。
なんか初々しくてこっちが照れちゃうな。
暫く進み森の中で開けた場所に出た、茶色い地面が多く顔を覗かせ、近くには川が流れていた。
「良し、今日はここでテントを張るか。地面も平らだしテントが建てやすい。川が近いから少し離れた場所に建てようか」
「護お兄ちゃん、どうして川から離れた場所にテントを建てるの?」
「川や池の直ぐ側だと虫が多い。ここは気温がずっと一定で過ごしやすいんだが温かいから蚊とかバグラとか出てくる……あ、バグラってのはこの世界のハエみたいな奴だな、赤くて小さくて下手したら噛み付くんだ。結構痛い。後は水近くだと夜は冷え込みやすい、水場から大体100mくらい離れた場所がベストだな」
「へぇ、お兄ちゃんプロみたいだね」
「ま、親父と世界中旅してたし慣れてるよ」
「まもるぅすごいーー! あうあう!」
と言ってエリスちゃんはお兄ちゃんに抱きついた。
「あはは、お転婆だぞエリス? ほらテント建てるから手伝ってくれ」
「あう!」
本当に仲良しだな、二人の姿を眺めているとしゅーの事を思い出した。今頃どうしているんだろう、無事なのかな、怪我してないかな、ちゃんとご飯食べてるかな。
心配でならないけど今はどうしようもない、とにかく前を向いてポジティブになろう。強いしゅーだもん、きっと大丈夫。
「お兄ちゃん私も手伝うよ?」
「おう、ありがと」
慣れない作業に悪戦苦闘し、テントが建った。
「飲み込み早いな、昔はアウトドアとか苦手だったろ? 小さい頃皆川家と神代家でキャンプ行っても苦手そうにしてたのに」
「あはは、懐かしいね。まあ成長したということで…………エリスちゃんと二人で旅をしてるの?」
「ああ、約束したんだよ世界中を旅しようってさ。この『幻想の大陸』と外の世界の2つをな。さて、食事の用意をするか、飯食ってから話をしよう、多分夜中まで掛かるかもな」
「分かったよ」
食事の準備を始めた、薪を拾いに行く。ここにはアギトモドキと呼ばれる猛獣が出ることが稀にあるらしい、例えるなら中型犬くらいの黒いライオンのような動物らしい。
そいつが出た時にすぐに助けられるようにと三人で行動した。
数分後、三人で行動したのは正解だった。
中型の獣が森奥から現れた、漆黒の毛並みを靡かせた小さなライオンが唸り声を上げる。これがアギトモドキ、獣臭さが一気に広がり緊張感をもたらしている。
護お兄ちゃんは隙かさず前へと出る、私達二人を守る為に。
刀を抜き、アギトモドキと対峙する。
「ふぅ、二人とも下がってろ! 覇皇極心流剣術壱の剣、水龍!」
一閃、剣の軌道はアギトモドキの前足を目掛け放たれた。
水龍と言われた技、その名の如く水を泳ぐ龍の滑らかな動きを刀が再現し、食らいついた。
アギトモドキは悲鳴を上げお兄ちゃんから距離を取った。
剣士の睨み、それが決定的な力の差を知らしめ脚を引きずりながら獣は森奥へ。
暫く警戒したがどうやら本当に逃げたらしい。
「……ふぅ、もう大丈夫だ」
「あう! まもるかっこいい!」
「剣術って奴だね、そう言えば伯父さん剣術も嗜んでたね」
「ああ、小さい頃から叩き込まれたよ」
「だから強いんだ……今のはどんな技なの?」
「水龍は下半身、特に足を狙ってい放つ技だ。相手の機動力を奪う為の技だ……まあ剣術の話は女の子には退屈だろう、さっさと薪拾い再開だ」
再開した薪拾いを終え、お兄ちゃんは折畳式のバケツで水を汲みテントに戻った。
地面に薪を並べるとお兄ちゃんは茶色の布製の袋をリュックから取り出して袋から何かを取り出した。
それは石だった。
「何それ?」
「これは発火石って言ってな、この世界で取れる珍しい石だ。こいつに水を掛けてやると発熱する。これで薪に火を点ける。高温になるから普段は水に濡らさないようにしないといけないんだ……この前荷物一つ駄目にしたしな」
「珍しいね! ……本当に異世界なんだ」
聞いたことのない生き物に珍しい石、森を抜ける時もたまに珍しい形の植物を発見したりして私のいた世界とは違うと感じた。
護お兄ちゃんも別の方法でこの世界に来ているらしい。
この出会いって偶然と言えるのだろうか?
ゲートを開ける時どこでも良いと思って開けたのに、別世界で同じ世界の人間、しかも従兄弟のお兄ちゃんと出会うなんて偶然なんて信じられない。
『まーちゃん、おそらくゲートをランダムで開いたと思っているけど実際は自分を知る者がいる世界を無意識に望んで従兄弟さんを感じ取ったんじゃないかな? そう考えるとエリスちゃんと従兄弟さんが近くにいてもおかしくないよ』
なるほど、無意識にか。
『知らない世界だもん、誰か知っている人の所に行きたいと思うのは自然な行為だよ。実際にこうやって出会った、そのお陰で今助かってるから問題ないよ』
そうだね、一人でこの世界に来ていたらどうしたらいいのか分からなかったよ。
本当に二人には感謝しかない。
食事の用意が出来て私達のお腹が膨れた、お兄ちゃんが作ってくれたスープはとても美味しくて心までも満たされた。
しばらくして火を囲みながら私達はお互いの事情を話した。
数年前、護お兄ちゃんとお兄ちゃんのお父さん、つまり私にとって伯父さんとなる神代源一郎の二人はこの幻想の大陸にやって来た。伯父さんは民俗学者で『第七の一族』という特別な部族の研究をしていたそうだ。
世界中を探してこの幻想の大陸にはなんでも魔術師が魔法陣で行き来出来るようにしていたと言う。
私の世界に魔術って言うのがあるなんて驚いたけど、実際にこの縦世界にお兄ちゃんがいるのが証拠だ。
二人は幻想の大陸へとやって来て第七の一族と接触、それが彼女エリスちゃんだと言う。
エリスちゃんは第七の一族の中で『七の巫女』と呼ばれる存在で特別な力を持っていた。
七つの不思議な力を操れたのだという。
この幻想の大陸を支配しようとしていた組織『ヴァンクール』はエリスちゃん狙っていた、彼女と大陸を守る為に二人はこの世界で出来た仲間と共に戦い、その果てに守り切った。
「で、そのヴァンクールの一番偉い奴ってのがやっかいでさ、滅茶苦茶苦戦したけどエリスのお陰で対処出来た。しかし奴は操られていただけだった……別の世界から来た、えっとなんて言ったかな…………じ、じごく……地獄の……住人、そうそう! 地獄の住人って奴が大昔にこの世界にやって来て人間に取り憑いて悪さをしてたってのを白状し始めたんだ」
「え! 地獄の住人!? 嘘、じゃあ幻想の大陸にゲートが開いたの!?」
「まこと……?」
「あ、ごめんね。実は……」
地獄の住人と言う言葉に反応するしかなかった、私が体験した非日常の根幹をなすものだから。
なので私のことを話して聞かせた、ある時地獄世界ヘルヴェルトと通じる門を力を暴走させて開いてしまったこと、そして命を落としたこと。
他の世界に感触するのが罪であり本来なら魂と肉体をヘルヴェルトで幽閉される筈だった。
だけどその罪を佐波峻が肩代わりした、ゲートが開いてしまったマンションから地獄の住人を人間界に出さないようにする門番になった。
しかし罪には罰がある。
私は佐波峻の記憶を忘れて過ごすことになった、そのせいで何かが欠けたような感覚が纏わりついて偶に憂鬱になることがあった。
無くしたものを求めるように。
しゅーのお陰で見事に門番の役目を果たし、そのご褒美だったのか私の記憶を蘇らせた。
後にスミスちゃんがこっそり教えてくれた、記憶を戻さなくても良かったらしいがルベスさんの恩情で戻してくれたのだと。
本当に優しい地獄の番犬だ。
そうして平穏を取り戻したけど悪魔がやって来てしまった、私のゲートを開く力を欲っして。
精神的に追い詰められまたゲートを開いてしまった、中途半端なゲートだったので今思えば消費精神力は少なく済んで生命を削られたと思う。凄く弱ってたってことだから。
後はヘルヴェルトでの出来事を話した、友達の死神に助けられて、地獄王に会い監禁されたこと。悪魔がやって来てしまったこと、しゅーが悪魔を探して戦ったこと。
後は覚えていない、悪魔が襲って来て、しゅーと王宮から逃げて、それからのことは空白だ。
結果は悪魔に捕まった。だけど私の精神世界に原初ちゃんが来てゲートの使い方を教えてくれた。後はその過程で覚えた力でなんとか悪魔から逃げて幻想の大陸にやって来た。
話し終わる頃にはすっかり世界は夜の帳が降りていた。
火を囲んでいた、エリスちゃんはお兄ちゃんの膝を枕にして眠っている。優しく頭を撫でていた。
「…………そう、か。大変だったんだなまこと」
「お兄ちゃん達だって大変だったんだね、まさか凄い冒険をしていたなんて考えもよらなかったよ」
「ああ、互いに頑張ったんだな……俺はエリスと出会って全てが変わったよ、特別な力を貰ったし、彼女を愛した……エリスは七の巫女、この幻想の大陸を再生させる為に生まれてきた存在なんだ」
幻想の大陸は高度な文明が栄えていたがそれが滅び、幾度も繁栄と滅びを繰り返し世界の寿命が迫っていた。
人々の願いがこの世界に七の巫女を出現させた。
七の巫女の力の七つ目、『再生』は命と引き換えに世界に生命力を注ぎ込む。
それを繰り返してこの世界は存続している。
「……死にたくないと願ったのだと思う、その結果七つの能力と記憶を失った、言葉すら忘れる程に彼女はからっぽになってしまった」
記憶をなくしてしまった、私もかつて無くしていた。だから親近感を感じでエリスちゃんを眺めた。
「……今はお兄ちゃんがいてくれるから新しい記憶を作っていってるんでしょ? 凄いな、本当にエリスちゃんを愛しているんだね」
「……愛しているよ」
優しく呟く、しかし同時に眉間のしわを寄せ苦悩する。
「エリスが命を落とすと聞いて俺はそれを拒んだ……エリスにそんな事をさせない為に連れ戻そうとした、それは世界の崩壊と同じことなのに…………その行為が仲間だった者と戦うことになった、つまり俺は悪ってことだ……結局エリスを止められなかったし、落ち込んで反省もした、無気力なままな……まことと最後に会ったあの時がどん底だったな、エリスは死んだと思ってたから」
思い出した、最後に会った時私の家に数日泊まったことがあった。久し振りに会えたお兄ちゃんと暮らせるのは嬉しかったけど、何処か上の空でずっと空を眺めていたな。
大切な人が亡くなったと思っていたか、今なら気持ちが分かると思う。
私もしゅーを失ってしまったらきっと同じようになる。
「仲間達に再会して謝った、許してくれたが……時々思うんだ、許されて良いのかってな、俺はエリスを助け出してこの大陸を見捨てようとしたクズだ、許されて良いのか今だに心の底で思っている……エリスの事は、愛している、だけどそれは……罪を償うような……代償行為なのではと時折思う事があるんだ……」
お兄ちゃんは固く手を握り締めた、震える程に強く。
心の底に居座る負の感情、それがずっと自分を責めている。
だけど。
「絶対に、それは違う!」
「ま、まこと……?」
大きな声にエリスちゃんが起きて目を丸くして私を見ていた。
「お兄ちゃんがエリスちゃんを愛しているって見てるだけでわかるよ! エリスちゃんと話す時だけは私にも向けないもっと優しい笑顔になってる、代償行為で優しくしてるって言うけど、もしそうならエリスちゃんだって感じ取れる筈だよ! エリスちゃんの笑顔は本当に大好きだって感じ取れる、だってそれはお兄ちゃんがエリスちゃんを大好きで愛してるってちゃんと伝わってるから出来る笑顔だよっ!」
偽物の感情に本物は宿らない。
「お兄ちゃん、エリスちゃんのこと愛してる?」
「ああっ、愛している!」
「なら、それを信じて! エリスちゃんの笑顔を信じてあげてよ! 本当はお兄ちゃんが一番知ってるでしょ? エリスちゃんの笑顔は自分だけに向けられた特別なものだって……それが答えなんだって」
「…………そ、そう、だな……ああ、そうだな! 俺の考えはエリスの笑顔を疑うことだ……」
「だから、しっかりしなきゃ! エリスちゃんはお兄ちゃんを見ている顔は恋する乙女なんだよ? お兄ちゃんの心が通じているから出来る笑顔なんだ」
不思議そうに私とお兄ちゃんを眺めるエリスちゃんは心配そうにお兄ちゃんを呼ぶ。
「あう……まもるぅ?」
「……ごめんエリス、ちょっと自己嫌悪してた……エリス、俺はエリスの事が大好きだ! もう疑わない、これは俺の本心だ……」
「あう! まもるぅ、好きぃ! まもる大好きーー!」
力強く彼を抱き締める、無垢な笑顔で。
「……ありがとうまこと、そうだよなエリスの笑顔は偽物なんかじゃない、本当の笑顔だ」
「うん、二人はとても素敵だよ」
羨ましい、仲良しの二人を眺めているとしゅーの事を思い出す。
彼の笑顔を思い出す。
私にだけ見せてくれるしゅーの優しい笑顔、世界に一人だけの、私だけの彼の笑顔。
狂しくそれに見惚れている、ああ私は本当に大好きなんだな。
バカな程に。
彼に、しゅーに会いたい。
『ふふっ、本当にバカップルなんだねまーちゃん。愛した者と狂しく愛し合う、ああ、私らしい。お熱いことで』
原初ちゃんに冷やかされたらしい。
『まあでも、佐波峻に再会したらいっぱい慰めてもらうといい、まーちゃん、貴女は本当に苦しんで来た、あり得ない程に。だから頑張ったご褒美くらいあったっていい。貴女は幸せにならなきゃ、その幸せに導いてみせるから。愛しい私、愛らしい私、貴女には幸せこそお似合いだ』
ありがとう、原初ちゃん。
不意にエリスちゃんが私に抱き着いた。
「あう! まことも好きぃ!」
「あ、ありがと……うわぁ、可愛いよぉ」
思わず頭を撫でてしまった、妹とかいたらこんな感じだろうか。弟の可愛さは充分理解して堪能しているけど、妹も悪くない。
『あ、やっぱり……』
原初ちゃんが何かに気が付いたらしい。
どうかしたの原初ちゃん?
『今頭を撫でて彼女を調べてみたけど記憶は確かに消えてしまっているけど、残骸が残ってる』
残骸?
『うん。完全に記憶を消された訳じゃない、記憶を少し残して大半を持っていかれている……一つ一つの記憶が欠片を残して彼女の中に残ってるそれがバラバラに絡まって繋がり今の人格を形成している』
それってまだ完全に記憶をなくしてないってこと?
もしかして、それを綺麗に整理して繋ぎ合わせれば記憶が蘇るの?
『うーーん、それだけだと難しいね。まーちゃんは映画好きだよね? その映画でランダムで色んなシーンが連続で見せられても分かりづらいでしょ? 例えば食事のシーンを観ていたら次に映ったのは主人公が泣いてるシーン、その次は人々が喜んでいて、次は宇宙の映像、さらに裁縫している姿が映ってヒロインが主人公を平手打ち……なんの映画って言われて答えられる?』
確かにどんなストーリーか分からない。
『一つ一つに意味があったとしても連続性がない、関連もない。それを繋ぎ合わせても本人が混乱してもしかしたら最悪精神崩壊するかもしれない』
そんな。
もしエリスちゃんの記憶が戻れば良いのになって思ったのに。
二人を幸せにしたいなって思った。
『…………あ!』
原初ちゃんが何かに閃いたらしい。
『意味を持たない記憶、発生した記憶と同空間に存在していたのならば他方の視点……自らが生じさせたものではなく他から生じさせたものならば辻褄は合う……ああ、成る程、事象観測は多角的に見れば出来るか。その可能性は……うん、彼なら妥当か、ならばそれにて補修し補完すれば……』
原初ちゃん、何言ってるか分からないよ。
『あ、ごめんごめん、また悪い癖が出ちゃった。最近はあんまり出ないから油断してた。つまり私が言いたいことは一つ、彼女の無くなった記憶の欠片を他の記憶で補完して補修する、それを繋げれば理解出来る記憶だから綺麗に繋がるよって話』
他の記憶?
『うん、つまり彼女と同じ時を過ごした者の記憶を使う。そう神代護の記憶、エリスちゃんと過ごした記憶を使い壊れている記憶を直す。ま、神代護の知る記憶のみを使うから完全に元には戻れないけど、限りなく本人に近い彼女が帰還すると思う。どうする? 彼に聞いてみて?』
分かったよ。
「護お兄ちゃん、いきなりの話なんだけど、えっと、原初ちゃんの話をしたでしょ? その原初ちゃんがエリスちゃんの記憶を修復出来るかもしれないって言ってるんだけど……」
「何……?」
見開く瞳に驚愕と戸惑いが垣間見えた、唐突な話を聞いてしまったら私でもこうなるだろう。
暫く動揺して視線を空に彷徨わせながらエリスちゃんに止まる。
「…………詳しく、教えてくれ」
「うん。今エリスちゃんの記憶は完全に無くなった訳じゃなくて少し残っている感じなの。一つの記憶の小さな欠片がいっぱいあって、それがバラバラに繋がっていて、それが今のエリスちゃんを形成している。護お兄ちゃんの記憶を使って足りない部分を補完して補修する。ただ、補修出来るのはお兄ちゃんが見て来た記憶だけだから完全には元には戻らないけど……元と限りなく近いエリスちゃんになるって原初ちゃんが言ってる……それでお兄ちゃんはどうしたいかって聞いてる」
真剣に話を聞いていた、エリスちゃんを眺めて暫く思案していた。
「俺の……記憶が、エリスを元に戻せるんだな?」
「うん」
「そう、か…………俺の記憶が……エリスを救える……なら迷いは無い、例え俺の記憶を全て差し出すことになっても俺はやり通すだけだ。真、それにえっと原初ちゃんだっけ? 頼む、エリスを救ってくれ!」
深々と頭を下げた。
「うん、分かったよ!」
『やりましょうまーちゃん! 美少女の記憶復活大作戦決行だよ! 先ずは原初モードになって、それからエリスちゃんと神代護の頭に触れて精神改善を発動! まーちゃんが外部接続要因として私はそこを経由して操作する、記憶を見聞しながら補完と修復を始める。時間掛かるけど精神改善の維持を頑張って!』
分かった!
「原初モード!」
白銀の髪と褐色の肌、そして鍛え抜かれた肉体を現実世界で再現する。
「な! ま、まことが変わった」
「あうっ! まことへんしん! かっこいーー!」
「え? かっこいい? あ、ありがと……じゃあエリスちゃんとお兄ちゃんの頭に触れて始めるね?」
「ああ、始めてくれ」
二人の頭に手を添えた、目を閉じてどうか元に戻ってと願いを込めて精神改善を発動する。
私は二人を繋ぐ橋、このままを維持して原初ちゃんの補助をする。
『良し、二人の記憶と繋がった。えっと先ずは彼女の記憶の欠片から逆算して彼の記憶を捜索。これは彼に歌を聞かれて恥ずかしがってる姿…………うん、これだ。ここを繋げて、固定、補修……良し! 上手く行った。次! この欠片は、雨に打たれて二人きりの小屋、ロマンチックだね。これも……うん、この記憶と繋げてっ……と。良し良し、この調子で他の記憶も修復していく……』
こうやって壊れている記憶の欠片を使い護お兄ちゃんの記憶を捜索、探し出した記憶と欠片を合わせて一つにする。一つ一つ丁寧に、時間が掛かるけど地道にやっていけば補修していける。
私もその記憶を垣間見えた、エリスちゃんと護お兄ちゃんの出会い、お兄ちゃんに力を与えて能力を与えた。敵と戦って、逃げて、様々な仲間達と出会っていく冒険。
その過程で彼女は彼に惹かれていく、お兄ちゃんも。
多くの困難を越えて敵を倒す。しかしその後は彼女の使命、星の命を再生させなければならない。
それを良しとしなかったお兄ちゃんとの苦しい記憶、拒絶と後悔が二人の間で涙となる。
でも、その果てに今がある。
悲しい思いをして来た、なら次こそ幸せであって欲しい。
私も他人事ではないけど、悲運なんか今度こそ追い出してみせる。
自分と重ねて見ている、だからそれが余計に放って置けなかった。
彼女の記憶を見てしまったら手を伸ばさずにはいられない。
長い時間、全身から汗が噴き出していた。手も痺れて来た、それでもこの状態を維持する。下唇を噛み締めて耐える、私が出来るのはこれだけ。一番大変なのは原初ちゃんだ。
無数の欠片を一つ一つ丁寧に補修していくのだから。
瞼を跨いで光を感じた、もう夜明けだった。
『……まーちゃん、終わったよ。補完と補修を行い全て記憶の順番に繋げた。これで前の彼女と今の彼女が融合している筈、ははっ、さすがに疲れちゃったよ』
ありがとう原初ちゃん、お疲れ様でした。
精神改善と原初モードを解除した。
「……はぁ、はぁ、終わったよお兄ちゃん……」
二人の頭から手を退ける、腕の痛みが襲う、苦痛に藻掻くのは後でにして私は瞳を世界に晒し原初ちゃんの成果を見詰める。
心配そうにエリスちゃんを覗くお兄ちゃん、そして微動だにしないエリスちゃんは眠っている様に錯覚するが意識はそこにある。
それは記憶を馴染ませるように、静かに受け入れている。
そう思わせた。
そして、金色の美しい髪を持つ彼女は静かに目を覚ました。
「あう、私、お腹が空きました、まもるご飯食べたいです…………あれ?」
自分の放った言葉が不思議で目を丸くしていた、流暢に言葉を操る事が信じられなかった。
「どうしてこんなにスムーズに喋れるのでしょうか……それにもやもやしていた意識もスッキリしていて、霧が晴れたような……不思議な感じです」
凄い、いっぱい喋っている。これがエリスちゃんの本来の喋り方なんだ。
「まことが私に何かしたのですか?」
「うん、記憶の整理とか欠けていた記憶を補完して補修したんだよ……護お兄ちゃんの記憶を使って」
「まもるの記憶……そうですか、だから記憶の映像に私自身が出てくるのですね? 少し妙な感覚です…………あれ、まもる?」
気が付くと護お兄ちゃんは静かに泣いていた、心配そうにエリスちゃんはお兄ちゃんに近付く。
「まもる? どうかしましたか? 何処か痛いんですか?」
「……だ、大丈夫、大丈夫だよエリス……俺は嬉しいんだ、嬉しくて泣いているんだよ」
強く、エリスちゃんを抱き締めた。
「あうっ! ま、まもるぅ、は、恥ずかしいですよ!」
「……何を言っているのか分からないだろうけど、謝らせて欲しい。あの日の俺を許してくれ……すまなかった」
「まもる……? よく分かりませんけど、謝らなくて良いんですよ、だって私は怒ってませんから」
二人は強く抱き締め合った。
ああ、本当に良かった、これから二人は幸せになって行くんだ。
『……まーちゃん…………あ、いや……なんでもない、忘れて』
原初ちゃん?
何かを言い掛けた彼女はそれを止めた、何か引っ掛かるけど今は二人を祝福しよう。
暫くして抱き締め合っていた二人が離れた。
お兄ちゃんは落ち着いて笑顔を見せた、それにつられエリスちゃんも笑う。
「お腹空いたんだろエリス? ご飯の準備しようか」
「あうっ! まもる好きーー!」
エリスちゃんはお兄ちゃんの胸に飛び込んだ。
抱き着いた瞬間に正気に戻り、顔を真っ赤にさせる彼女は慌てて離れた。
「あうっ、はうっ、ど、どうして私はこんな事を…………こんなの、いけない事です!」
両の手で顔を隠し、悶絶していた。
『今の彼女は記憶を無くした後の人格がベースだからこういう事が起こるよ、好きを体いっぱいに表現してきたから好きの感情が強くなればタガが外れ爆発しちゃう……そして元に戻っちゃって恥ずかしくなる。うん、恥ずかしくしている姿は可愛いね』
悪趣味だよ恥ずかしそうにしている姿を可愛なんて。
まあでも気持わかるかも。
護お兄ちゃんはそんなエリスちゃんの姿を懐かしそうに眺め、微笑んでいた。
食事の用意をして三人でご飯を食べた、お腹が膨れると夜通し抑えていた眠気が復活を果たした。
護お兄ちゃんは安堵と疲れからかエリスちゃんの膝を枕にして眠る、その顔が子供みたいだった。
「まもる、いつもありがとうございます……ゆっくり眠って下さいね」
お兄ちゃんの頭を愛おしそうに撫でている。
「エリスちゃんも眠いでしょ? お兄ちゃんが起きるまで見張りしてるから一緒に寝ちゃって良いよ?」
「ありがとうございます、まことは優しい人ですね」
「そ、そうかな? なんだか照れちゃうよ」
「ふふっ、顔が赤いですよ? まことはお礼を言われ慣れてないのですか?」
そうかもしれない、お礼とかお世辞とか言われると顔が赤くなってしまう。そう言う耐性が低いのかも。
『恥ずかしがるまーちゃん可愛い! さすが私、最高私っ!』
また原初ちゃんが暴走している。
「褒められると顔赤くなるのは昔からだよ」
「そうなんですね、昔から……」
あれ、どうしてだろう笑顔に影が差していた。
「……昔って一体なんなのでしょう」
「え?」
「……私の記憶が言うんです、私には兄がいる……らしいことを。それが本当なのかとまだ信じられないんです……」
どういう事? 記憶に兄がいるって分かっているのに信じられないって。
『……やっぱりそうなるのか。まーちゃん、例えば何も知らない状態を思い浮かべて? 何も知らない頭がからっぽで空白、そんな自分に写真をみせてこれが君の兄だよって言われたらどんな気分?』
何も知らない状態で写真の人物が兄だと言われる、そんなの唐突で混乱するし本当に兄なのか確証がない。
写真を渡した人物が本当のことを言っているのか、嘘を言っているのか分からない。
あ、まさか。
『うん、エリスちゃんは今そんな状態なんだ。記憶を別の記憶で補うのは確かに効果はあったけど、もしかしたらこういった弊害を生むかもとは思った……やはり出てしまったらしい。見せられている記憶が本当にそうなのかの確信が得られない。記憶の蓄積、言葉使いだって飛躍的に上昇してこれからの彼女にとって大切な…………いや、これは言い訳ね。安易な思い付きだったと言わざるおえない』
そんな。
「私の知らない私がいます、けれどそれは私ではないと思います。それは疎外感に似てますね、私だけが置いてけぼりにされた感じです……知らない誰かが兄と言う、知らない誰かが友達と言う、知らない誰かが知人と言う…………私は孤独です」
その感情は私が記憶を無くしていた時に感じていた事だ、自分だけを残して世界が回っている感覚。
そんな孤独を感じさせてしまっている。
「あの、まもるにはこの事を言わないで下さいね? 心配させたくないし……それにこれは受け入れなければならない事です」
「…………どうして?」
「記憶の中で私はまもるを悲しませています、暴言を吐き、彼を傷付けてしまった…………だからこれは罰なんです。大切な人を傷付けた私は罪人、この孤独を抱えたまま私は生きていきます。悲しそうにしないで下さいまこと、この記憶達は苦しめる要因になるかもしれませんが、まもると旅した確かな記憶は本物です。それがあれば私は生きていける、笑っていられます」
そう言って彼女は笑う。
『まーちゃん、記憶を確信するまでには時間が掛かるよ。記憶の人物と触れ合い、記憶と照らし合わせて答えを出す。彼女のこれからは決して不幸なんかじゃない、大切な人の確かな記憶が彼女を支えているし、これから先だって糧となる記憶は作られ続ける……時間は掛かるけど絶対に彼女は幸せになるよ』
私は記憶をなくしてから佐波峻と出会い彼を好きになった。そして記憶が戻って昔の私が帰って来た。
二つの記憶を同時に持つ、最初は混乱したけど今では二つは一つになり、どちらも大切な思い出だ。
ならば原初ちゃんの言ってることも理解出来る。
これから先に苦難が待っていても幸せになれると信じられる。
だから、お兄ちゃんとエリスちゃんが幸せであることを願っている。
「……きっとお兄ちゃんがエリスちゃんを支えてくれるよ。私も同じような体験をしたから……そこに私の大切な人がいてくれたからここまでこれたよ? だから大丈夫だと思う……きっと、エリスちゃんは幸せになれる! お兄ちゃんと一緒に!」
「……ありがとうまこと、嬉しいです」
どうか、この二人に幸福な未来が訪れます様に。
ようやくエリスちゃんは眠りにつく。
これからどうするのか考えないといけない、幻想の大陸に逃げて来た。
ヘルヴェルトは悪魔が災難を起こしている、そして胸騒ぎがしている。
『二人が起きたらまーちゃんも眠るといいよ。そうすれば訓練を再開出来るからね、今度は起こされる心配はない、時間の許す限り訓練をして精神力を上げよう』
うん、そして起きたらヘルヴェルトに戻ろう。何か嫌な予感がする、何故かは分からないけど悪魔を止めなくちゃいけない気がする。
『うん、それは私も同感。この不安、おそらくマギサちゃんの不安が伝染していると思う。同じ存在だけが感知出来る感覚、きっと数日の内に何が起こるよ』
止めないといけない、皆と合流して悪魔を倒す。これが一番理想的だけど上手くいくかは分からない。
それでも行こう、私の力が悪魔を招いてしまったのだから。
私が止めないといけない。
懐かしき再会と出会い、それを過ぎて私は私の物語を進めよう。
地獄と呼ばれた異世界へと戻る為に。




