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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第十三章 深層より原初が来たりて
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迷宮の果て


 不自然な光景だと思った、どうしてそうなってしまったのか理解が出来ない。

 柔らかな感触が背中にある、どうやら私はベットで横になっているらしい。

 しかしここは私の部屋ではない。

 天井は見知らぬピンク色、視線を動かして周りを観察した。天井と同じ色で部屋全てが色付けされていた。


 大きな丸型のベットを囲む見知らぬ影に気が付く、数人の見慣れない男が笑みを浮かべて私を見下ろす。


「へへっ、可愛いなぁ」


「こんな上玉を楽しめるのかよ、楽しみだなぁ」


「見てみろよ、ぽかとしてさ、こいつ何がなんだか分かってねぇじゃん!」


「いいねぇ、無垢な娘をこれから……おい佐波、良いんだよなぁ?」


「え、ええ、好きにして下さいよ」


 この声は私の恋人、佐波峻の声だ。


 周りの男達は学校の制服を着崩し、頭を金や赤に染め、ピアスをしていたりタトゥをしていた。

 つまり不良だった。

 彼はリーダーらしき人物に頭を下げていた。


「し、しゅー?」


「ん、起きたか。ごめんなまこちゃん、これからまこちゃんの身体をこの人達に貸して欲しい。そうしたら俺、殴られなくて済むんだよ……痛いのは嫌だし、まこちゃんの身体はエッチだからきっとこの人達に気に入られるって」


「何……言ってるの?」


「あっはははは! 可哀想になぁ、彼女さんよぉ、こいつお前の身体を売り渡して自分の安全を確保したんだよ」


「やべぇ、おれもうたっちまったぁ!」


「ひひっ、最初は俺からだぞ?」


「馬鹿言えよ俺からだ! お前には後をやるよ、そっちの趣味はねぇからなぁ!」


 なんなのこの人達、気持ち悪い。


「う、嘘だよね? しゅー、売り飛ばしたなんて……嘘だよね!?」


「ごめんよぉまこちゃん……あ、でもちゃんと側にいるからさ、どんな時だって一緒だと約束したもんな? ずっと見てるよ、他の誰かに抱かれる姿……逃さないようにずっと見てるよ?」


 どうして嬉しそうに赤くなって高揚しているの?


 そんな人じゃないでしょ?


「はっはははは! こいつ彼女が寝取られるのに興奮して嫌がるぜ! 頭おかしい!」


「まあいいや、さあ始めようか? 楽しもうぜ」


 絶望に、一瞬逃げるのが遅れた。ベットから抜け出そうとしたが不良に呆気なく捕まりベットに押し付けられた。

 服を脱がされていく、破られていく。


「い、嫌だ! いやぁあああ!」


「はぁ、はぁ、まこちゃん可愛いよぉ……」


 魔手が私に迫る。


 その刹那、声が聞こえた。


『まーちゃん精神改善を使って!』


 誰の声?


 精神改善ってなんだっけ、何か忘れている。


『まーちゃん!』


 必死な声だ、精神改善、どこかで聞いた。

 どこで? それは私の中だった気がする。


 私の中?


 そう言えば胸の奥に何かを感じる。

 これは光? 7つ光が私の中にある。

 その一つに意識を集中させた。


 精神改善、精神世界を改善し回復する。


 靄が晴れたようにクリアとなった思考に驚きの感情が湧き上がった。


「あっ、あれ? ここはどこ!? 原初ちゃん私どうしちゃったの?」


「あ? 何言ってやがるこの女、もしかして恐怖でおかしくなったか?」


 唐突に記憶が蘇る。


 そうだ、私は悪魔から逃げ出そうとしてロゼリアの幻に囚われたんだ。

 こんな不快な場所は知らない。

 と言うことはこれは幻、リアルだけどこいつらは偽物!


「どきなさいよ!」


 幻、夢、つまり精神世界だ。

 私は訓練で精神世界では鍛え抜かれた肉体、腹筋すら見事に割れている。そこで培ったものは無駄なんかじゃない。


 力一杯男共を引き離した。


「な! なんだぁ!」


「力強ぇえ!」


「え? ま、まこちゃん?」


 そして力を貯めて、不良共の顔面を殴り付けた。

 すると軽い人形を叩いたような感触に中身がないことに気が付く。

 所詮、幻は幻。

 あっと言う間に不良共を気絶させていた。


「ま、まこちゃん…………」


 気弱な声を辿ると私の想い人がいる、しかしこんなに情けない姿は彼である筈がない。ズボンと下着を脱いでいる、きっと酷い目に遭う私に興奮して自分自身を慰めようとしていたのだろう。

 理解できないし、それにしゅーはこんな奴じゃない。


 鍛え抜かれた精神力は悲しみよりも怒りを生産する。


「ふざけないでよ…………あいつ、ロゼリア! 私の、私のしゅーはこんな卑怯で弱々しい軟弱野郎じゃない! 本当の彼ならこんな不良共を倒して私を助けてくれる勇敢な人だ! 馬鹿にしないで、しゅーを馬鹿にするなぁあああっ!」


 全力の平手打ちを情けない幻の彼に叩き込んだ。


 吹き飛び壁に埋もれて動かなくなる。あんなしゅーなんか見たくない、こんな幻を見せるなんてロゼリアに怒りを覚える。


『まーちゃん』


 声が響く。


「原初ちゃんありがとう、思い出すことができたよ」


『良かった、精神改善が記憶を戻してあの鍛え抜いた強いまーちゃんを取り戻した』


「良かった、精神改善を習っておいて。でもまだ助かってないんだね?」


『うん、まだ助かってない、精神世界にロゼリアの分身が入り込んだからそれを見つけて直接精神改善を奴に掛けないといけない。レベルが高ければ入られる前に分身体は消滅してたし、入られても一瞬で消し去って終わる。だからまだレベルが低いから見つけないと!』


「分かったよ、見付けてみせる……精神世界だからまだ間に合うよね?」


『もちろん、分身体を見付けて消し去っても逃げられる時間はある……大丈夫、私は原初の貴女、精神世界では万能な存在だよ! ロゼリアの分身の気配を私が感知するから、まーちゃんはそこのドアから出て気を付けて進んで!』


「ありがとう原初ちゃん、流石最初の私だね!」


『まーちゃんに褒められた……ああ、自分褒められるなんて幸せだぁ…………ただ、その格好で行くの?』


 そんな格好? そう言えばあの不良達に服を脱がされて下着姿だった。


『良ければ服を着させるよ?』


「ありがとう……ただ、バニースーツは勘弁して」


『えーー、可愛いのに。分かったよ、じゃあ二番目の好みの格好にさせよう』


 一瞬で服を纏っていた。

 深い黒の生地の長袖ワンピースは肩はパフスリーブ、袖口は白のカフスでぴっちりと留められている。胸元は開いてはくデコルテラインを柔らかくなぞるようなスクエアネック。

 真っ白なコットンエプロン、腰の後ろで大きなリボンを結んでいる。

 膝下まで広がるフレアスカート。裾にも細かいフリルとレースが清楚さと華やかさを映えさせる。そして白いレースのヘッドドレスが頭に。


「これって……メイド服?」


『そう! クラシックメイド! ゴシックでもないロリィタ、セクシーなフレンチメイドでもないの! 昔ながらのクラシックメイドが一番だから! ああっ、まーちゃん可愛いっ! 私専属のメイド様になってぇえええ!』


「嫌。原初ちゃん、いきなり暴走するのやめて欲しいんだけど。取り敢えずこれで行くから大人しくしてて?」


『まーちゃんになら尻に敷かれても良いよぉ…………あ、無表情で無言にならないで、ごめんなさい』


 さてと、こんなところから早く出ないと。

 たった一つだけのドアから外へと踏み出した。


 気が付くと見知った場所に混乱する、そこは学校の廊下、なんでこんなところにと佇み途方に暮れた。

 ここは私が通う高校の廊下だ、一体これはどうなっているのだろう?


『ここはまーちゃんの精神世界だけどロゼリアが色々改変してるね、相手は分身体だとしても馬鹿じゃない、もし悪夢を抜け出された時の対策もしているらしい。おそらく、学校中の出入口はさっきの部屋のようにまーちゃんが不快になる場所に繋がってると思う。そこを彷徨い本体を見つけないといけない……まさに迷宮だね』


「絶対にロゼリアの顔をぶん殴ってやる!」


『まーちゃんが暴力的になっちゃったよぉ』


「え? あ、いや……ロゼリアに今まで酷いことされたから堪忍袋の尾が切れちゃってるから、彼女に……いや、あいつだけは許せなくて自然とこうなっちゃった……やっぱり精神を鍛えたのが関係ある?」


『そうだね、精神が弱かったら恐れて怖がるだけだったからね。でも、その気持ちはよく分かるよ、私だって様々な私の恨みを持っている……これからは虐げられる者じゃない、まーちゃんの逆襲が始まるよ! つまりアベンジャーだね!』


「……良いね、アベンジャー! 今の私にぴったりだよ! ここから反撃だよ! 原初ちゃん、私は何処に向かえば良い?」


『えっと、右側から異物の気配、取り敢えずそっちへ向かって!』


「わかったよ!」


 廊下を進み辿り着いたのは職員室だった、異物はここ先にいるらしい。

 意を決してドアを開け放つ。

 すると職員室など皆無で目の前に広がる光景は外であり、公園が広がる。

 ここは小さい頃しゅーと遊んだり思い出の公園だった。


「あ、まことぉ!」


 不意に呼ばれて声を辿ると、公園のブランコで遊んでいた私が溺愛する弟の心が満面の笑顔で手を振っていた。


「え、心……? なんで……あ、ま、幻だよね」


 笑顔で駆けてくる心に和む、幻だけどやっぱり心は可愛い。久し振りに姿を見れたけどこれは幻、落ち着かなくちゃ。


「まこと何してるの?」


「あ、えっと、たまたま通り掛かったんだよ?」


「そうなんだ、ねえ暇なら一緒に遊ぼ!」


 そう言って駆け出していく。


「心?」


「こっちこっち! 楽しいことあるんだよ!」


 公園から出ていく心はそのまま道路に飛び出した。

 笑顔でこちらを向く、本物ならどれだけ良かったか。


 その時だった、意識外より出現したトラックが私の目の前で最愛の弟を轢いた。

 消える弟、通過するトラック、そして舞う鮮血。

 血の跡が生々しく道路を侵食して悲鳴を上げさせた。


「嫌あああああああああああああ!」


 目の前で心が轢かれた!


「心!」


 違う、これは幻だ!


「あ、ああっ……」


 でも、それでも。


「……くっ、に、偽物、あれは……偽物……」


『まーちゃん大丈夫?』


「う、うん、大丈夫、大丈夫……大丈夫っ」


『……ロゼリア本当に許せない、いくら精神が強くなっても心は傷付く、ショックを受ける……酷い』


 暫くして落ち着きを取り戻したが涙は自然と流れて目を腫らしていた。


『まーちゃん、こういったことがこの先に待ってる……気をしっかり持って』


「……うん、絶対に許せない、本当に許せない」


 惨劇の現場を背に向け前へ進む。


 街を進み原初ちゃんのナビで一件の家に入った。ドアをくぐるとファミレスの中にいた、奥の席に見知った顔を発見する。


「あらあら、まことさん?」


 ママがいた、そしてもう一人。


「まことか、久し振りだね元気だったかい?」


「あ、ママ……それにパパ……」


 出張に行っていたパパとママがファミレスで食事を楽しんでいた。


『駄目だ、まーちゃん奥のスタッフルームへ行って! 酷いものを見せる気だから無視して!』


「そ、そうだね……」


 場所を離れようとした瞬間にパパは手に持っていたフォークをママの顔に目掛けて突き立てた。眼球を抉り、妻の悲鳴がファミレスに響く。


 パパは笑っていた。


「まこと! 一緒にママを助けよう! ほらナイフを持ってママを刺しなさい!」


 笑顔で促している。

 それが異常過ぎて拒絶した。


「ひっ! いやぁ、こんなの嫌!」


 全力で逃げた。


 狂気は少しずつ私の心をついばむ。


 そのまま別のドアへ、そして様々な入り口を通り抜け、何度も何度も悪夢を繰り返す。

 見ないように努力したけどわざわざ視界に入り込んで死を見せてくる。


 そんな悪夢の迷宮を彷徨う。


 その度に私の知り合いが現れて惨たらく死んでいく。


 親友を見た、首を吊っていた。


 生徒会の後輩達を見た、私に恨みを言いながら屋上から落ちた。


 従兄弟のお兄ちゃんを見た、腹を切って中身を取り出した。


 ルベスさんを見た、炎に焼かれて炭になった。


 フェイちゃんを見た、リリリちゃんを殺して自害した。


 クラスメイト皆を見た、みんな殺し合っていた。

 

 地獄王を見た、スミスちゃんの喉を締めて動かなくなった。


 ロロちゃんを見た、苦しみながら溶けた。


 ――止めて。


 誰か知らない通行人が言う、人殺しと。

 

 先生が言う、お前は厄介者だと。


 近所のおばさんが言う、何故産まれてきたのかと。


 ――酷いよこんなの。


 惨劇と罵倒の果てに、最後のドアの前に立っていた。

 ここは病院の手術室の前だった。


 私は耐えてきた、強化された精神力でここまで来た。


 でも、心が限界だった。


 蹲り泣いていた。


『まーちゃん……』


「ご、ごめ、ごめんね……ちょっとだけ待って……」


『よく耐えたね、まーちゃんは凄いよ? この向こうに異物の気配が一番強く感じている。最後だから頑張ろう』


「…………うん、頑張る……」


 限界寸前で精神を擦り減らす。精神改善を自分に試してみた、レベルが低いと言われたが使った瞬間に少し落ち着いて来た。


 すると怒りを感じて来た。


 沸々と腹奥に煮えたぎる怒りはとぐろを巻いて腹の底に居座る。頭から血の気が引くように冷静さがやって来る。

 氷を直接頭の中に詰め込まれたように冷たい。


 お腹の熱を蓄えて立ち上がる。


「……いこう」


 最後の扉を開く。

 扉の向こうは私の家だった。

 玄関に出た、見慣れた風景に心が休まる。


 不意にリビンクに人の気配を感じた、ゆっくりと進み静かに中を確認する。


 リビンクのソフィに誰かがいた、その人物を視界に捉えた時には即座に誰かを確認出来た。


 悪夢ロゼリア、その分身体をようやく見付け出した。


 今直ぐ精神改善を叩き込んで消し去ってやる。


 しかしロゼリアだけではなく、もう一人何者かが一緒にいた。


 見たことの無い人物、白髪の短い髪、彫り深くしわを刻ませた顔には立派な髭があった。顎全体を覆う長い髭、確かビアードと言ったと思う。

 一目で老人だと理解出来る、そして赤を基準にした王様が着る王族の衣装にマントを羽織っていた。

 見事な黄金の冠、日本人ではない。西洋の顔立ち。


 その王様の膝の上にロゼリアが座っていた。


 誰だろう。


 そう考えているとロゼリアが王様に向かい笑顔を咲かせていた、あの気色悪い笑みではない、年端もいかない少女の笑み。


『大好きだよ、パパ……』


 パパって、あの王様はロゼリアの父親?

 仮にそうだとして、どうしてこんなところにいるんだろう?


『まーちゃん、おそらくロゼリアが創り上げた人形みたいなものだと思うよ。多分記憶から創り出した影』


 今までの悪行すら忘れる程の衝撃だった、最愛の人に向ける優しい笑顔をあのロゼリアがしているのが信じられなかった。


 本当に彼女はロゼリアなの?


『パパ、ずっと大好きだよ。何百年経ったって大好きだよ』


 王様の胸に飛び込み頭を埋めている。


『ああ、パパ、ワタシを抱き締めて? 強く強く抱き締めて?』


 王様はぎこちなくロゼリアを包んだ。


 そこにいるのはただの少女だった、父と戯れる無垢な少女。


 躊躇してしまった、消し去っていいのかと。


 あんなに酷い目に遭ったのにどうして。


『まーちゃんは元々戦う人ではないから……優しいから躊躇しちゃうよね。でも心を鬼にして消し去らないと』


 そうだよね、私はこの悪夢の迷宮から抜け出して、現実世界で逃げなければならない。

 あれがもし本当のロゼリアだったとしてもこれまでやって来たことを許すことは出来ない。


 行こう、彼女を消し去る。


 リビングへと駆け出し王様の胸に蹲るロゼリアの後頭部へと手を向かわせた。

 頭を掴むと同時に精神改善を発動させる。

 ロゼリアが目の前で崩れていく。

 同時に王様もそれに続く。


「あっ……」


 精神改善を介してロゼリアの記憶が断片的に流れ込んでくる。


 王様と仲良くお城を散歩するロゼリアの姿、笑顔で王様に抱きつく姿、大勢の人間に囲まれている姿、王様が殺される姿、泣き叫ぶロゼリアの姿、無数の蟲に襲われるロゼリアの姿。


 そして嘲笑う人間達を憎しみの目で睨むロゼリアの姿。

 

 これが彼女の過去?


『…………キヒヒヒッ、ワタシを見付けたのか。やるじゃん皆川真……でもワタシを消したとしても本体には勝てないし、キヒヒヒッ』


 そう言い残して消え去った。


 消失を確認し終えると精神世界に地震が発生する。これは現実世界に戻る時の現象、幻が終わろうとしている。


『まーちゃん気持ちを切り替えて! これから本体とご対面だから!』


「……うん、分かったよ。切り替えて悪魔から逃げ切ってみせる!」


 崩壊する我が家を目撃しながら少し心が痛んだ。世界がひび割れて何もない無の空間に放り出された。

 空間が割れ光が漏れ出す。

 そこへと吸い込まれた。












 鼻腔をくすぐる水源の匂い、高い温度に纏わりつかれる。赤い光を放つ洞窟の中で覚醒し、視界にロゼリア本体を捉えた。


 ああ、戻って来た。


 不敵な笑みを浮かべているロゼリアはまだ私が正気に戻った事を知らない、ならそれが好機だ。


『視界孔をロゼリアの目の前に展開して!』


 目の前に? そうか、ゲートが視線を隠してくれるんだ。


 視界孔をロゼリアの目の前に出現させた、その瞬間に驚愕する悪魔は私が正気に戻ったと悟る。

 身体は駆けている途中、だけどロゼリアが邪魔で前に進めない。


『ロゼリアの上空に視界孔!』


 意図を理解せず指示に従う。ロゼリアの上空に視界孔を発動させ小さなゲートを開く。


『ジャンプして視界孔に指を入れて!』


 言われた通りに跳躍し、視界孔に手を伸ばす。すると指先が視界孔の中に入り、体重を全てが指に集まる。

 すると空間に出来た穴に掴まってぶら下がった、そこでようやく意図を理解した。


 空間にゲートを作る、つまり穴が開く。そこなら指を突っ込めば掴まれるし、足を掛ける事すら可能。連続でゲートを作れば即席のハシゴを作れたりするんだ。

 視界孔便利過ぎる!

 掴まったところを支点に体を動かし反動でロゼリアの後方へと抜け出した。

 そのまま外へ向かう。


「何が起きてるし!」


 ロゼリアの声が聞こえる、咄嗟に地面に連続で視界孔を使用。地面に無数のゲートを作り出しその一つにロゼリアが足先が入り込みをバランスを崩す。

 その姿を垣間見て、足先のゲートを閉じた。


 ロゼリアの足先が切断された。


「あああああああっ!」


 苦痛の叫びに黒い血を爆ぜさせていた。


 これくらいの罰はされて当然だ。


 これでロゼリアは追うスピードが遅くなり、メイディアは両手を切断した、なら力を使えなくなった筈だ。

 細やかな反抗、だけど精神世界で訓練していなかったら未だに何も出来なかった。


 だから今はそれでいい、後は逃げるだけ。


 洞窟を抜け出し地獄の大穴アビスが現れた。


『まーちゃんあそこに飛び込め!』


「わあああああ!」


 大穴へと飛び込み重力に身を任せた。


 果てしない大穴は底が見えなかった、深淵は遥か遠く。

 落ちて行く最中に手をかざす。

 自分の中へ意識を向け七つの光の一つを掴む。


「どこでも良い! 悪魔がいない世界に連れて行ってぇ!」


 ゲートを発動させた。


 落ちる先に光の門が現れる、落下スピードと共に飛び込んだ。


 ゲートの先、何処までも続く赤い光のトンネルを落ちている。

 身を任せたまま動くことが出来ない、自分がどうなってしまうのか分からないまま不安が増大する。


『大丈夫だよまーちゃん』


 原初ちゃんの声に安らぎを感じる、そうだ今私は一人じゃない。


 どんな世界でも大丈夫な気がする!


 蘇る心、私は原初ちゃんと共に『縦』の世界へ。


 ゲートの果て、虹色の光を通り抜け別の世界へ足を踏み入れた。



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