努力と根性
手を腰に掛け、不敵な笑みを顔に刻みながら原初と名乗る皆川真が颯爽と登場した。やる気に満ちた彼女は待ってましたと呼び声に応えている。
黒いバニーガールな私、白銀のショートヘアーで褐色、眼鏡は付けてない。高揚する頬に心を弾ませる彼女は楽しそうだった。
『さあ始めるよ! 付いてきてねまーちゃん!』
「まーちゃん?」
『うん、やっぱり愛称は大事だからね! 貴女の事をこれからはまーちゃんと呼びます』
「……まあご自由にどうぞ。貴女の事はなんて呼べば良い?」
『私の事は原初ちゃんと呼んで! おんなじまことだからこれくらい違う方が良いと思う』
原初ちゃんか、呼びにくいような気はするけど同じ名前だから区別しやすいか。
「分かった、原初ちゃんね。よろしくお願いします」
『うん! 頑張ろうね! はぁ、素直なまーちゃん可愛い……』
うっとりとこちらを見詰める視線はなんだか危ない気がしたので一歩彼女から下がる。
『こほん、訓練を始める前に先ずは自分自身を良く知ってた方が良いと思う。と言う訳でこんな物を作ってみました』
原初ちゃんがおもむろに手をかざした、すると私の目の前に青色に輝く四角形の光が現れた。
その光の中に何やら文字と数字が書かれていた。
「何これ?」
『やっぱり自分の情報を数値化して見ると分かりやすいと思ってね、なのでまーちゃんの能力地を確認出来るステータス画面を作りました! いやあロールプレイングゲームによくある奴だよ!』
ステータス? ゲームはあんまりやらないからよくわからない。物珍しさにステータス画面を覗いてみた。
皆川真 レベル6
体力 20/6
生命力 26/26
精神力 21/16
力 13
防御力 9
素早さ 11
スキル 『ゲート』レベル10
異界への門を開ける力。
使用精神力 100
「私ってレベル6なんだ」
『女子高生で6は高い方だと思うよ? ヘルズゲート事件を経験したり命の危機にもあってるからレベルが上がってるんだよ。普通に暮らしてる一般人はレベルはあんまり上がらないからね。レベル1のまま一生を過ごす人だっているよ』
そんな話を聞いてしまうとちょっと誇らしいかも。
『ステータスの説明するね? まあ力とか防御力とか素早さは肉体の数値だね。体力は身体を動かすエネルギーの数値、生命力は命の数値、これが0になったら死ぬから気を付けて。体力が少ないのは現実世界で身体が弱ってたからだよ。まあ今寝ている状態だから少しずつ回復していくよ。後、精神力はスキルを使う時に使用する数値になるかな』
「なるほど……えっとこのスキル『ゲート』レベル10って言うのは?」
『これがまーちゃんのゲートの数値だよ、レベル10ってスキル値マックスだから最初から凄い力を持ってるんだよ……様々な私を見てきたけどこれはその中でトップクラスに高いよ……と言うか高過ぎる。ステータスに使用精神力100ってなっているでしょ? これを使うには100ポイント消費しないと発動しないんだけど、まーちゃんの精神力21しかないでしょ?』
本当だ、発動させるのにポイントが足りない。
『無理矢理『ゲート』を使った場合、精神力を消費して、足りない分を生命力で補おうとしてしまうの。数値は26、つまり足りなくなって0になる……これが始めて『ゲート』を使った時に死んでしまったカラクリだよ』
ヘルズゲート事件で苦しみの果てに私は命を落とした、精神力が足りなかったんだ。ただの女子高生がいきなり強大な力を使うことなんか出来るわけがないか。
複雑な思いだけど、不透明だったゲートの力がこうして解明されると少し楽な気分になる。
『と言う訳で、まーちゃんの課題は精神力を伸ばすのが大事になってくる。使用精神力100なんて消費し過ぎだけどね。本来ならレベル1から上げて行って色んな派生スキルが生まれるはずなんだけどいきなりレベル10だから異常なんだよ』
最初から最大の力を持っているのに自分自身はその力に耐えられない、それが今の問題。
『ま、一回でも自分で発動出来たなら様々な派生スキルが解放されると思うよ? 最大レベルの力を使わないと解放されないなんてあべこべだよ。なのでゲートを使えるまで頑張れって事、理不尽だけどやるしか無いよ』
「大変だけど頑張る……えっと私はこれから何をすればいいの?」
『精神力を伸ばすのが重要だね、じゃあ訓練出来る場所に変えようか』
自分の部屋が解体され一瞬の内に白い世界、キャンバスゾーンに変わっていた。
空は青色、何処までも続く地平線が広がる荒野へと変化した。
『ここなら身体をいっぱい動かせるよ! 取り敢えず10キロ走ろうか』
「え、10キロ走るの?」
『そうだよ』
なんだか現実的な訓練だった、身体を鍛えるのは賛成だけどここはあくまでも夢の中、現実じゃない。そんな世界で肉体的な訓練って意味があるのだろうか?
『色々思うところはあるだろうけど考えるより先ずは動いてみようか?』
「わ、分かった、走るよ」
そんな訳で荒野を走った。夢の中なのに現実と同じように運動しているのと変わらなかった。走る度に重力を感じ、息が荒くなる。汗が出るし疲れも感じる。
学校のマラソン大会をやって来てるからなんとかなる。運動はそんなに得意じゃないけどこれくらいなら耐えられる。
原初ちゃんのキャンバスゾーンは何でも創造出来る、なので荒野を走っていると1キロ毎に看板が立っていて残りの距離を教えてくれた。親切だな。
そうこうしている内にようやく10キロに到着を果たした。
「はぁ、はぁ、じゅ、10キロ……走ったよ……」
『お疲れ様! いい走りっぷりだったね? はいお水をどうぞ?』
「あ、ありがと……」
何も考えないでコップに入った水を飲む。
「……あ、この水美味しい…………って、夢の中で水飲めるんだ」
『このキャンバスゾーンなら可能だよ、ご飯だって食べられるし、ちゃんと味もあるよ。さて、続いては筋トレしようか? 腹筋、背筋、スクワット、腕立て伏せ、取り敢えず100回ずつやってみよう!』
「ええっ! そ、そんなに出来ないよ、腹筋だって10回出来るかどうかだし……」
『そうなの? じゃあ出来る限りでいいからやってみて? 限界までやるんだよ?』
「うっ、が、頑張ります」
腹筋をする為に座ると原初ちゃんが足を押さえてくれた。そのまま開始すると10回まではなんとか出来たけど後が苦しい、彼女の励ましでどうにか13回出来た。
そんな感じで残りの背筋、スクワット、腕立て伏せをやってみたけど当然100には届かずに大幅に下回る結果となった。
だけどここで終わらなかった、まだまだ出来るから頑張れと原初ちゃんのスパルタ発言に更に運動をさせられて等々動けなくなった。
「はぁ、はぁ、もう駄目、きつい……」
『良く頑張ったね! 休んで良いよ。さてと、ステータスを確認してみて? まーちゃんに細工してステータスと言えばいつでも見れるようにしといたから』
「ス、ステータス……」
皆川真 レベル6
体力 20/6
生命力 26/26
精神力 21/0
力 13
防御力 9
素早さ 11
「…………あれ、精神力……なくなってる……」
『そう、ここはあくまでもまーちゃんの夢の中、つまり肉体のない精神世界。ここで運動すると精神力が消費されるんだ。現実世界だと体力がなくなって、それ以上無理すると生命力がなくなるんだけどね』
「なる……ほど…………力とかは……増えないの?」
『そこは現実世界で運動や訓練をすれば増加するよ。ここじゃ数値は変わらないんだ。現実で運動とか身体を鍛えれば力とか素早さの数値が上がるし体力も上がる。それにつられて生命力も上がるから運動はやっておいた方がいいかもね。さて本題はここから、精神力を回復しないとね。今凄い眠気がしてるでしょ? 夢の中なのに』
確かに凄く眠い。
『そのまま寝ていいよ、ここで寝ると意識が完全に無の状態になって精神力の回復を行うようになる。さ、身を任せて眠りへ誘われて? 素敵なことが起こるから』
お言葉に甘えてそのまま眠りに落ちることにした。
瞼を閉じるとあっと言う間に意識が途切れた。
目が覚めると青い空が出迎えた、気分が良い、疲れを感じなかった。
『おはようまーちゃん』
右横から原初ちゃんの声、そこへ視線をやると目と鼻の先に原初ちゃんの顔のドアップが映る。
直ぐ横で私と同じように横になっていた。
「お、おはよう……何してるの?」
『添い寝だよ。まーちゃんの可愛い寝顔を観ながらうっとりしてたよ…………まーちゃん可愛い』
吐息が耳に触れてくすぐったい。
「ちょっと近いよ…………私ってどれだけ寝てたの?」
『8時間くらいかな、まあ現実世界でも寝たらそれくらいになるよ。さてと、精神力が回復した筈だからステータス見てみようか?』
「分かった……ステータス!」
皆川真 レベル6
体力 20/7
生命力 26/26
精神力 42/42
力 13
防御力 9
素早さ 11
「え! なんか精神力が増えてる!」
『そう! 精神力を使い果たして眠ると倍増して回復するんだよ! 精神力がなくなると本能がこのままでは危険だと元の精神力を増加させる……と言うことはこの方法を何度もすれば精神力を強化出来る!』
「なるほど……倍増ってことは次に0になって回復したら84、更に次は168になってゲートを使用出来るって事なんだ!」
『その通りだよ! 訓練の成果が明確になったからやる気も出てくるよね!』
「うん! 頑張るぞ!」
『ただ……運動で精神力を消費するんだけど、数値が大きくなってるから更に削るのが大変になる……つまり運動量が増加する、これからはアスリートが行うような運動になって来るよ? フルマラソンしたりするし、運動は現実と同じ様に疲れるし大変。まあその分、それに耐えられる精神力を持つ事にはなるんだけどね』
最初の訓練は序ノ口、これから本格的に身体を酷使して精神力を消費しなければならない。フルマラソンなんて一生関わらないと思ってた。
それどころかアスリートがやる訓練って、想像つかないんだけど。現実世界なら強靭な肉体になっていくんだけどここでは精神力が強化されていく。
まあつまり、どこの世界でも努力と根性が物を言う。
『お風呂とかご飯とかどうする? まあこの世界だと気休めみたいな物だけど、お腹も膨れるしやる気に繋がると思うよ? ここは時間経過はあるけど昼夜はない、一日って概念がないからね。ある程度訓練との区切りは必要だよ』
「そうだね、じゃあお風呂入ってご飯食べたい!」
『なら訓練、睡眠、お風呂、食事、その後暫く休憩してから訓練のサイクルにしようか。いくら精神世界でも訓練ばかりじゃ嫌気が差してくるからね……さてと、ここにまーちゃんの家を再現してそこでくつろごうか』
原初ちゃんが指を鳴らすと私の家が眼前に出現した、青い屋根の二階建ての家。ヘルヴェルトに来てから暫く帰ってなかったから吸い込まれるように中へ。
その後お風呂に入り原初ちゃんの料理を食べた。カレーライス、とても美味しかった。
休憩時間を貰い部屋でくつろいでから訓練を再開した。
2回目は先ず20キロマラソンをすることになる、疲れながらも何とか乗り切りそのまま腹筋等をこなすとまだまだ動ける自分に驚いた。
しかしまだ精神力が尽きない、なので再度マラソンを走り、その途中何キロかは覚えてないが走りながら精神力が切れて倒れた。
猛烈な眠気に負けて眠りにつき、約8時間後目覚めた。現実世界でこんな訓練をやったら多分身体が持たない。何時間経過したのかすら分からない、多分丸一日くらい使ったかも。
2回寝ているからそれだけで16時間、最初の訓練は身体を動かさない私が身体動かすのでゆっくりだった。腹筋も時間掛かったし、更にスパルタ追い込みでも時間が掛かった。なので大体丸一日。
今回の訓練は色々スムーズに出来てたと思うけど訓練そのものが倍増したので更に時間が掛かった。多分丸一日、いやそれ以上かも。取り敢えず4、5日前後は掛かった気がする。
ご飯とかお風呂、休憩時間もある。
単純計算だけど多分現実世界では5分程度、あんまり時間経過してない。
凄いなと感心しながら私はステータスを確認した。
皆川真 レベル6
体力 20/9
生命力 26/26
精神力 84/84
力 13
防御力 9
素早さ 11
良かった、順調に増えてる。体力も微々たるものだけど回復していってる。
安堵して自分の家に帰りお風呂へ。
何故か一緒にお風呂に入ってきた原初ちゃんが背中を流すと言って来た。断ったけどよく分からない理由を展開して強引に納得させられた。
渋々了承して洗わせるとわざとじゃないんだと言いながら胸を揉まれた。
なのでゲンコツをしてお風呂場から叩き出した。
ご飯は豪勢にうな重で美味しかったのだが、部屋で休憩していると唐突に侵入してきた原初ちゃんが私に抱き着いてキスをしようとして来たのでゲンコツして部屋から叩き出した。
『私の愛を受け止めてよ!』
「受け止めません!」
そんな言い合いをしながら3回目の訓練が始まる。等々フルマラソンを体験することとなった。息苦しくて途中でへばったりしたけど、増加した精神力でそれを乗り越えた。
その後新たにキャンバスゾーンにスポーツジムを創造した原初ちゃんはそこで残りの訓練をやるようにと指示を出した。
様々な器具、ストレングスマシンやアップライトバイク、ローイングマシン、ベンチプレスなど様々な機械で訓練を始める。
滅茶苦茶追い込まれた、訓練の時は容赦無い原初ちゃんにまだまだだと体力の限界すら超えさせてくる。
もう駄目と言ってもまだ精神力の数値が残ってるからやれる! 限界じゃない! 頑張れ!
と叱咤激励をプレゼントするのだった。
苦しみの果て、等々精神力を使い切った。
安心した瞬間に眠気に襲われ気絶するように眠った。
そして、3回目の目覚め、隙かさずにステータスと叫ぶ。
皆川真 レベル6
体力 20/10
生命力 26/26
精神力 168/168
力 13
防御力 9
素早さ 11
「や、やった! 精神力100突破した!」
『おめでとうまーちゃん! これでスキルが使えるね!』
これでゲートを使えるようになった筈、ここまで大変だったけど目標達成するのは気分がいい。
『やっとスタート地点だね』
「……え?」
『元々ゲートを使えるように訓練するのが目的だったから精神力が足りないのを最初になんとかしないとどうにも出来なかったからね』
精神力強化の訓練がきつくて元々の目的を忘れてたのかもしれない、やっとスタート地点と言われてちょっと絶望した。
乾いた笑いが自然と漏れ出した。
「そ、そうだったね……ゲート使う為だったもんね」
『まあまあ落ち着いて、この後の訓練は走ったりしなくても良いんだよ? ゲートを使って精神力を消費する、そうすれば新たな派生スキルがきっと出てくると思う。そのスキルを練習していけば自然と精神力を消費して倍増させられるよ』
「じゃあもう走らなくてもいいの?」
『もちろん』
安心感が私を包んでいく、息を切らしながら長い時間を走り足が痛くなりながらの苦行は終わりを告げた。
その後にジムで徹底的に追い込まれるのも苦行、理不尽の権化と化した原初ちゃんに軽い殺意が生まれそうになったこともある。
まだ出来る! 限界? 精神力の数値はまだあるから嘘だよね? 卑しい子だね、そんな卑怯者には倍の苦しみを感じて貰わないとね!? ランニングマシーンに乗りなさい! ほらほらちゃんと走って! 生まれたての子鹿みたいにヘロヘロじゃないか! 変なお尻の動きで男を誘ってるの? やらしい子! 怒った? ならシャキッとしてちゃんと走りなさい!
等と罵られながら訓練したから苛つきながらも頑張った。
原初ちゃん、訓練の時は変なスイッチ入って人格変わってるよね?
「……取り敢えずお風呂入りたい」
『そうだね、ゆっくり身体を休ませてからスキルの訓練を頑張ろう! 豪勢な料理を用意してあげるね? ゆっくりお風呂を楽しんで?』
我が家に入りお風呂場に直行する、訓練中は原初ちゃんの趣味でバニーガール衣装だった。中が蒸れて余計に汗が出てしまうのが大変だった。
脱衣所に替えのバニー衣装が用意されている、最初は嫌だったので自室から着替えを持ってこようとしたら服は再現してなかったからこれしか着るものはない。正に用意周到だった。
何を考えているのだろうかと思いながら服を脱ぎ、お風呂に入ろうとした時に鏡の中の自分を眺めた。
「…………あれ?」
身体が引き締まっている? 筋肉のラインが見えてたり、なんなら腹筋が割れかけていた。
ここは精神世界、精神力が高くなったから精神そのものである自分が変わったということかな?
現実に戻った時の身体とのギャップで混乱しそうだな。
髪と身体を洗ってから湯船に浸かる。気持ちが良い、ここが夢の中なんて信じられない。
不意に脱衣所に人の気配がする。当然原初ちゃん以外居ない。
『私もお風呂入る!』
と言って風呂場に侵入した原初ちゃんは湯船にそのままダイブした。
「ち、ちょっと! ちゃんと身体洗って!」
『私は運動してないから汚れてないし、精神体なので汚れることもないよ?』
狭い湯船に二人は厳しい、お互い体育座りなって見詰め合う形となった。
『ふふっ、まーちゃんの身体良い感じに引き締まって来て更に可愛くなったね? はぁ、美しい、可愛くて美しいって罪な女だよ……抱き締めたいなぁ』
「それは止めて」
前回強硬手段で私にセクハラしようとしたから今回は大人しくしている、このまま何事もなければ良いけど。
お風呂から上がりまたバニーとなってご飯となった。
凄い豪華な料理が並ぶ。
牡蠣のグラタンレモン風味と赤身のステーキダークチョコのソースあえ、アボカドとエビのパスタにザクロとベリーのタルト。
「凄い、美味しそう! でもちょっと量が多いかも」
『大丈夫、私も食べるから』
料理はとても美味しかった。ただ、原初ちゃんの艶めかしい視線が気になるのだけど。
『どう? 美味しかった?』
「うん、美味しかったよ、ありがとう」
『お粗末様でした…………で? 何か感じない?』
「え? 特には……まあ身体がぽかぽかしたような気はするけど」
『それだけ?』
「そ、それだけ……」
『あれぇ? ちゃんと調べたのにな……』
嫌な予感。
「原初ちゃん、私に何を食べさせたのかな?」
『ひっ! お、怒らないで! ちょっとしたジョークとして、ほら、えっと…………』
「ちゃんと話しなさい!」
『ごめんなさい! 女性が食べたらムラムラする食べ物を作ってみたの! 牡蠣とか! アスパラガスとか! ダークチョコとか!』
取り敢えずゲンコツをプレゼントして正座させた。
部屋に戻って休憩しているとまたまた原初ちゃんがやって来て、どう? ムラムラする? と聞いてきたので再度ゲンコツをして部屋から叩き出した。
原初ちゃんを投げ伸ばすのが毎回楽になってくるのは精神体が強化されたからだろう。
後で分かったことだけど料理だけではなく五感を刺激することが大事で、アロマを使用したり音楽なんかを利用してムードを作る必要があるらしい。
どうでもいいことだけど。
休憩も終わり、等々ゲートを使う訓練が始まる。
荒野の真ん中に向かい合わせで立つ、ちょっとドキドキして来た。
『さてと、等々始まるね。ゲートをこのキャンバスゾーンで使った場合は現実世界に影響は与えないから気兼ねなく使ってみて』
「わ、分かった……」
『じゃあ目を閉じて?』
瞼を閉じる。暗闇が広がっている。
『自分の中に意識を集中させてみて? 今暗闇の中にいる、その奥の奥、深淵の彼方に意識を向かわせて。力の波動を感じられると思う。通常の状態でやるよりも今は精神体、力を感知しやすくなってるよ』
暗闇の奥の奥、その先に意識を集中させていく。暫く感覚が掴めなくて苦戦した、数時間経過し疲れを感じた頃に意識の集中が増した気がした。
奥へ、更に奥へ。
すると吸い込まれる感覚に意識が深淵へと潜っていく。闇を潜る、潜水しながら手を伸ばした。気圧で潰されるような感覚が息苦しさを誘発させる。
汗が噴き出す、それでも底へと向かう。
すると最下層に何かを感じた。
揺らめいて温かいような光、深紅に燃えて闇を照らしている。
それに手を掛けた。
すると指先から全身を覆う熱が襲う、熱さと痛みが駆け巡る。
そして心臓の鼓動が激しく波打つ。
この感覚、ゲートが勝手に開いた時の痛みと熱だと気が付く。
これまでは苦しみでしかなかった、しかし今の私なら耐えられる。
深紅の光を握り締めた。
更なる熱と痛みは身体から抜け出そうとしている。
『そう、その感覚……出ていこうとしているものを抵抗しないで吐き出して?』
爆ぜんとする力が身体を抜け出そうとする、抵抗せずに解き放つ。
「わああああああっ!」
咆哮と同時に力が外界へ、すると眼前に赤い光の亀裂が刻まれていた。空間を切り裂き、それが広がり人が通れる程の光の入り口が生まれた。
「はぁ、はぁ、こ、これが……ゲート?」
『おめでとうまーちゃん、始めて自分の意志でゲートを開いたんだよ?』
自分の意志でゲートを開いた、その言葉に歓喜して涙が溢れた。今まで自分を苦しめていた力だったけど、これからは助けとなる灯火として私を照らす。
暫くするとゲートは閉じた。
『さてと、まーちゃんステータスを確認してみて?』
「分かった。ステータス!」
皆川真 レベル10
体力 24/11
生命力 30/26
精神力 168/68
力 17
防御力 13
素早さ 15
スキル 『ゲート』レベル10
異界への門を開ける力。
使用精神力 100
派生スキル 『身体強化』
ゲートのエネルギーを全身に
纏わせて肉体の数値を上昇
させる。
使用精神力 50
『視界孔』
視界に映る場所に小さな
ゲートを作る。
使用精神力 10
『千里眼』
ゲートから観える世界を
瞳を通して上映する。
使用精神力 60
『ゲート(横世界)』
『横』世界のゲートを開く。
使用精神力 80
『異界飛ばし』
対象を設定し、狭間の世界へ
追放させる。
使用精神力 300
#使用精神力200でも発動可能、
その場合横世界にランダムで
追放させる。
「な、何これ!? いっぱいスキルが増えてるし、それにレベルが上がってる!」
『良かった、派生スキルがちゃんと発現したんだね? レベルも上がったのは喜ばしい。始めてゲートをまともに使用したことでレベルが上がったんだ。レベルが上がると全ステータスが1ずつ上昇するから肉体にも影響を与えるよ。おめでとう!』
「ありがとう! ただ、派生スキルがよく分からないのが多いかな。どんな風に使えばいいのか分からない」
『それをこれから練習するんだよ! さあまだまだ訓練が必要だね! 精神力もまだまだ足りないし、精進あるのみだよ!』
始めて正式にゲートを使用し、隠されていた力も開示された。まだよく分からない力だけどただ護られていた過去の私ではない。
これからは誰か助けになりたい。皆んなの助けになりたい。
しゅーの助けになりたい。
そう決意をし、引き続き訓練に励む。




