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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第十二章 インターミッション
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パルテスの可能性


 ルベスを解放し暫くすると秋人さんと話が終わった地獄王から謁見の間に来るようにと呼び出しがあった。

 秋人さんとは数回顔を合わせた程度だ、『横』を管理しているパルテスだと知るまでは仕事の出張で忙しそうにしているとの印象が大きかった。

 そんな秋人さんは地獄と何を話していたのだろうか?


 謁見の間へとやって来ると地獄王と秋人が待っていた、俺と視線が絡むと柔らかな笑みを返してくれた。

 昔から可愛がって貰ったな、小さい頃はまこちゃんと一緒に遊んだ時にアイスとか奢って貰ったな。


「やあしゅーくん、気が付いて良かった。無事で何よりだ、マギサくんも大変だったね」


「秋人さん……」


「ええ、貴方も無事で何よりだわ」


 秋人さんと向かい合って俺は彼の娘を守りきれなかったのだとの負い目が湧き上がる。

 まこちゃんは俺にとって大切であるように秋人さんにとっても大切な娘だ。

 俺は謝らなければならない。許されなくとも、それでも謝罪がしたい。

 殴られる覚悟だってある、いやそれで済むかもわからないが。でもそうしなければ前に進めない。


「あ、あの、秋人さん…………その、俺、まこちゃんを目の前で奪われて……な、何もできなくて、すみません! 俺は不甲斐ない男です、助けられなかった……すみませんでした!」


 頭を下げた。まこちゃんの父親である秋人さんに申し訳がなかった、謝っても済まされない。

 それでも謝らずにはいられない。


「顔を上げてくれしゅーくん、確かに悪魔の手にまことが落ちてしまった、だが助け出せるはずだよ? あと4日以内に助け出して悪魔を倒す。さあ、今から忙しいぞ? 弱音を吐いてる暇はないよ……それにまことにそんな顔を見せる気かい? 笑顔で迎えに行こうじゃないか」


「秋人さん……」


「そうだよ佐波くん、貴方は笑顔がよく似合う男よ? 胸張って前だけ見なきゃ!」


 秋人さんもマギサも辛い目に遭っている、それなのに俺に温かい言葉を掛けてくれるのか。

 俺は幸せ者なんだな。

 うじうじしている場合ではない、これからを観ろと二人に言われている。


 それに俺らしくないな。希望を持って進む。ヘルズゲート事件だってそうやって乗り越えたじゃないか!


「マギサ……ありがとう、秋人さんもありがとうございます、俺弱音ばかりでした。俺はここで誓う、何が起きても前を向いて突き進むと」


 奪われ続けた、だから返してもらう。俺の大切なものを。


「うん、しゅーくん良い顔してるよ……まことの奪還、協力してくれるね?」


「もちろんです!」


 気持ちは前を向く、微かな希望を胸に。か細い光だ、だがしっかりと握り締め何が起きようと離しはしない。

 不意に静観してい地獄王微笑み言葉を発する。


「普通の人間ならもう折れているかもしれない絶望で前を向く、か。昔の自分を見ているようだ……シュン、君は面白い人間だな……さて、みんな揃ったところでちゃんと紹介しておこう、『横』の管理者パルテスのアキトだ。そしてミナガワマコトの親だ」


 秋人さんは皆に一礼する。


「本来なら『縦』の世界にいることはあり得ない、しかし僕は娘を助ける為に自らの理を破った……いや、妻を持ったこと、それがパルテスの過ちだ……だけど後悔はしてない、妻を愛し子を愛した、これは僕の誇りだ…………その誇りを奪われた、ならば取り返す。僕も悪魔と戦います、力を貸して下さい」


 深々と頭を下げる。パルテスっていうのは完全には理解してないがルールを破ってまで家族を助けようとしている。

 俺は秋人さんを尊敬する。


「ふむ、パルテスと共闘か、小生は初めてだな。それは胸が高鳴る」


 獣王は肯定と笑う。


「まああら、素敵な方ですねえ。わたしもスミスの為ならなんだってやっちゃうから気持ちが分かるわ。頑張りましょう、共に」


 死神王も肯定と理解を示す。


「ヘルヴェルトへの侵入は大罪だが先程話し合いをした。悪魔討伐を協力して貰う代わりにミナガワマコトの奪還を手伝う。それで手を打ったところだよ……甘い判断だと言われそうだが緊急事態でもある、戦力は多い方が良い。それにボクはミナガワマコトは気に入っている、気に入ったものを奪われたら取り返す。当たり前の事だ」


 地獄王の言葉に秋人さんが一礼する。三王が認めてくれた、これだけで心強い。


「さて、現段階で悪魔の居場所は皆無だがパルテスであるアキトは居場所を探せる可能性が高い」


「ええ、パルテスは『横』世界の管理者。つまり世界の異物に敏感と言うこと。この世界に来てからヘルヴェルトの感覚を肌で感じ、それとは別の異物の気配を微力ながら感じ取れる……元の世界で力を発揮できる僕はここでは能力が落ちている、だが探す手がかりになる」


 世界の異物に敏感か、それがまこちゃんを探し出す切っ掛けになりそうだ。


「これより悪魔捜索にアキトが加わる。獣族、死神にも協力して貰う。王宮からも探索隊を結成する。獣王、死神王、協力を要請する」


「要請を受諾した、小生ら獣族も動く」


「もちろんわたしも了承します。忙しくなるわ」


 こうして死神王と獣王は悪魔捜索へと赴くこととなった。


「では小生はこれにて失礼する。ルベス、ロロ行くぞ?」


「はい! 失礼します! 峻様、マギサ様、また会いましょう」


「ああ、気を付けてな」


「またねロロちゃん」


 獣王とロロが退室すると不意にルベスが近寄って来た。


「手短に済ませますか、峻、地獄王と契約をするのですね?」


「ああ、もう決めたことだ」


「そうですか……ならこれからの為にこれを渡しておきます」


 そう言いながら思い切り俺の背中を叩いた。


「いってぇ! 何しやがる!」


「拒絶の白を貴方に渡しました、何かの役に立つでしょう」


 そう言えば紅の帰還、結晶の碧とは違う力を自分の中から感じた。


「……いいのか?」


「ええ、ただ今のままでは発動は一回で限界でしょう。ないよりはマシです……残された時間で練習しておくことを勧めます、二回くらいは使えるようになればベストですね。……それでは捜索に行きます。マギサさん、峻を頼みます」


「ええ、任せて!」


 なんかいつもらしくないからこそばゆい感じだ。と思っていたがにやりと嫌らしい笑みを浮かべる。


「全く、おもりは大変です。まるで赤ちゃんですよ峻は。おしゃぶりを持ってきましょうか?」


「てめぇ馬鹿にするんじゃねぇ!」


 なんの心配もない、いつものルベスだった。良い意味でも悪い意味でも。

 そう言ってルベスは獣王達を追って行った。


 ありがとうな、ルベス。


「わたしも退室しますねえ? それでは……マギサさん、今度その胸もみもみさせてねえ?」


「遠慮させてもらうわ」


 死神王もここを後にした。


「……そうだ、秋人さん、俺パルテスっていうのをちゃんと理解してないから教えてくれますか?」


「ああ良いよ。『横』世界は多元世界、様々な可能性を内包している。パラレルワールドと言われるね。パルテスの言葉の意味は配役、担当する世界で様々な配役となって管理、見守る……僕の場合は通訳をしている。海外に頻繁に仕事に行くので都合がいい」


 つまり世界に溶け込むために色んな配役となって管理しているのか。


「世界の異端になるものは排除する。本来なら今回の悪魔達に対処しなければならなかった……敵は狡猾に隠蔽していた。それでも気が付かなかったのは僕のミスだったが…………話が脱線しそうになったね、ええとパルテスの戦い方は『感知』『設置』『囚える』この3つだけだよ」


 感知と設置と囚える?


「感知は世界の異物を感じ取れたりする事。囚えるは、世界と世界の間に隙間の世界がある。何もない、時間の概念もない狭間の世界。その世界に罪人を囚えるのがパルテスの力だ。囚えるには発動条件がある、視界に映る場所に囚える為の罠を設置する、後は任意で発動させ囚える……ま、視界を外してしまったら罠も消え、捕らえられなくなる」


 視界に映る場所のどこにでも罠を設置させて任意で発動させる。例えば視界に映る道に罠を設置、つまりマーキングだな。そこに対象が通過した瞬間に囚える力を発動出来る訳だと追加で説明してくれた。

 これだけ聞けば凄い力だが視界を奪われた場合役に立たなくなる。

 強力故に使える条件が難しいな。


「……もしかしてまばたきをしたら罠は解除されるんですか?」


「御名答、その通りだよ。なのでいつも目薬は常に持っているね、目が乾くからね」


 目を開けたままか、そりゃきつい。


「感知を使い世界の異常を察知し、視界に映る様々な場所に罠を設置、そして敵を囚える。それがパルテスの戦闘だ……ただ、これは自分の世界にいる時の話。ヘルヴェルトでは能力は落ちている。囚える事は出来るだろう、しかし通常なら数個罠を設置出来ていたがここでは一つしか無理だった。使った後のインターバルも長くなっている、なので連発は難しい。ま、上手くやるよ、心配しないでくれ」


「わかりました」


 不意にどうしてパルテスになったのか疑問に思った。


「……秋人さん、どういう経緯でパルテスになったんですか?」


「パルテスは組織なんだ。『横』世界でイレギュラーとなった者、別の多元世界に足を踏み入れてしまった者などをスカウトして世界を守っている。元々別の世界で僕は別の多元世界に渡ってしまった……次元を超える、これがパルテスになる条件の一つだよ」


 と言うことは秋人さんは本来俺の居る世界の住人ではなかったのか。


「次元を超える、これだけで異質、なので家族を作ることを禁止されている。遺伝してイレギュラーを増やす恐れがあったからね…………しかしまことの場合『横』ではなく『縦』を開くなんてこれは予想できなかったな……まあ前例はないわけではない、パルテスは世界を修正し異物を排除し世界を守って来た『始まりの少女』の後を引き継いで活動している……その少女は『縦』の扉も開けると聞いている」


 なんか壮大な話になって来たな。


「まあそこは覚えなくていいよ。大体のパルテスはこんなところかな? 世界を管理する者は他にもいるんだ、例えば『観測者』、縦世界にもいるんですよね地獄王?」


「ああ、確か『輪廻の外』だったかな。会ったことはない、シュンは気にしなくていい。パルテスと類似している存在と思っておいてくれ」


 単語が続くからなんかテスト勉強している気分だ。まあ名前くらい覚える程度で良いのだろう。

 何故だろう『輪廻の外』って単語聞いたことはないのに何故か気になるな。

 ま、考えても仕方ないか。


「パルテス講義はこんな感じだね。まさか僕の存在を誰かに教える日が来るとは思わなかったよ」


「確かにおかしな話かもしれないな。さて、話はここまでにしてアキトは王宮の捜索隊に参加してもらう。捜索隊の指揮は騎士団の副騎士団長ギルと言う者が担っている、騎士団の鍛錬所へ向かってくれ」


「わかりました……しゅーくん、それじゃお互い頑張ろう」


「はい!」


 秋人さんもここを後にした。


「マギサ、すまないがこれからシュンと話をする。良ければ捜索隊の手伝いを頼めないかな?」


「……ええ、それは構わないけど」


 マギサと視線が絡む。


「大丈夫だ、後で俺も手伝いに行くから待っててくれ」


「うん、分かったわ」


 そう言い残しマギサも騎士団の鍛錬所へと足を運んだ。不安そうだったな、契約のことあいつは知っているからな。無理もないか。

 さて、残ったのは地獄王と俺だけだった。話すことはもう決まっている。

 みんながやれる事をしている、前を向くと誓ったなら俺がやるべきことを始めないといけない。


 緊張と共に地獄王を強い意志で見詰めた。




 


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