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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第十二章 インターミッション
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これからの為に


 マギサの過去を聞いて一日が経過した、悪魔レイスが完全な姿になるまで四日と期限が迫っている。このままでは奴は世界を食らいつくす悪魔としてこのヘルヴェルトに降臨してしまうことになる、そうなってしまったら彼女には殺せる手段がなくなってしまうと言う。

 彼女の目的はレイスへの復讐、とある『横』にいた俺の敵討ち。


 別の世界の俺は殺されたと聞いたが俺のことではないにしろ同じ存在であるならば妙な気分ではあるな、リリリの治療のお陰で体は動くようにはなったが心は傷付いたままだ。

 まこちゃんを助けられなかったこともそうだが何も知らない彼女を操り罪を犯させたあいつらが憎い。

 しかし今の俺では奴等は倒せない、だから地獄王との契約を交わすと決めた、そうしないと奴等と戦う手段がない。

 奴等にとって俺は赤子に等しいか弱い存在だろう、地獄王の目ならば悪魔の動きを捉えられる、もう迷っている暇すらない。


「佐波くん」


 治療のために運び込まれた部屋で思考していると入り口にマギサが現れた。


「剣の山脈から部隊が帰還したって」


「そっか、ギル達が戻ってきたか……スルルも帰ってきてるんだろ?」


「うん、それと一緒にネリスちゃんとエティオくんも……それから皆川真の父親、秋人さんも一緒よ」


「え、秋人さんも一緒? なんで……」


「秋人さんは『横』を管理し、守る存在であるパルテスなのよ。皆川真に特別な力があるのは父親がパルテスだからだって秋人さんが言っていたわ」


 秋人さんが『横』を管理するパルテス、その影響でまこちゃんはゲートを開けるのか。何故まこちゃんに力があるのかは分かったけどそんな事実があったとは。


「そうだったのか……とにかく本人に話を聞かないとな……そう言えばネリスは弟に会えたんだな」


「ええ、貴方のこと心配してたわよネリスちゃん」


 あの工場でヘルヴェルトに来てしまったからずっと心配していたが無事でいてくれてよかった、スミスに会わせてやりたいがな。


「スミスはどうしている?」


「王宮に姿が見えないから多分外だと思うけど」


「そっか……」


 王族は二人をスミスには会わせないだろうな、会えるのは二人の誕生日だけだったはずだ。もどかしいだろうな、二人の無事を知れても会えないんだからな。

 あいつがどれだけ心配していたか王族の奴等に教えてやりたい気分だ、母親が子供に会えないなんて残酷だ。

 俺は母さんにはもう会えないがネリスやエティオは会えるチャンスはあるんだ、会いたさに人間界まで来たのにな。

 どうにかならないのか。


「……みんなに会いに行くか、行こうマギサ」


「ええ、分かったわ……その前に佐波くん」


「ん?」


「だいぶ溜まってるでしょ? 私を見てムラムラしない? いいよ、私をおかずに……」


「唐突に痴女になるな!」


 なんでマギサはこうなんだろうな、もしかしてまこちゃんも一歩間違えればこんな痴女になるのか?


「……サングラス外してもう一回言う?」


「それは勘弁してくれ」


 とは言ったもののまこちゃんからあんな台詞を言われたら俺はどうしたらいいのか分からない。いや、意外と……。


「本当は言って欲しいくせに、もう佐波くんのエッチ」


「な、何言ってやがる! と、とにかく行くぞ!」


「ああん待ってよ佐波くん!」








 騎士団の訓練場には負傷した騎士で溢れていた、奴等との戦いは過酷であり現在は動ける者の方が少ない。被害が大きい、これではもう一度奴等と戦うときは厳しいことになるかもしれない。

 辺りを見回していると見知った顔を発見しそこへと足を進ませた、率先して騎士たちの治療を行っていたのは副騎士団長ギルだった。


「ギル、無事だったか!」


「シュン、君こそ無事だったか」


「なんとかな……それで騎士団の状態はどうだ?」


「芳しくはない、半数以上が負傷している、兵力は半減したと思っていてくれ。後は治療部隊がどれだけ回復してくれるかだ」


 やはりダメージは大きかったか。


「だが儂らは生きておる」


 ギルと俺の間に割って入ったのは騎士団長ミラエルだ。


「奴等は強大、悪魔との戦いは策にはまってしまったのが屈辱的じゃな……じゃが、居場所が分かれば今度は三王様達が直々に出動することに決まった」


「なら地獄王様と獣王ゼルガ、それに死神王ソフィーネオもか……」


 このヘルヴェルトで三王こそが最大の戦力であり絶対的力を有している、言うなれば最終兵器と同義だろう。

 三王に死神と騎士団の生き残り、そして獣族が加われば悪魔と戦うことが出来る。


 それにスミス達は力を押さえていた、それを解除すれば希望が見えてくる。後はまこちゃんを取り戻すことを考えないとな、マギサの過去を聞いて生きていたとしても何をされるのか分かったものじゃない。現に今も何をされているか……。

 ダメだ、考え出したらネガティブなことばかり考えてしまう。


「どうしたサナミシュン、顔色が悪いようじゃが……ミナガワマコトのことを考えておったのか?」


「あはは、ミラエルは勘がいいな……じゃなかったいいですね」


「その酷い顔をみれば誰でも考えてることはお見通しじゃろうな。心配するなと言っても気休め、大切な者を奪われたのじゃからな……優しい言葉を掛けてもそれこそ気休め、ならばその逆じゃな、貴様がそんな弱気で助けられるわけがなかろうが!」


 ミラエルの声に貫かれた。


「奪われた事実は変わらぬ! ならば未来のことを考えよ! 助けられなかったことを悔やむより助け出すために闘志を燃やせ! そして助け出してミナガワマコトに謝れ、それが貴様に出来ることじゃ……分かったか?」


 これはミラエルなりの叱咤激励だった、過去は変えられないから未来を考えろと。ミラエルは怖いけど根は優しい奴なんだな。


「……ありがとうございますミラエル、俺は未来だけを考えます」


「うむ、貴様に負の表情は似合わぬ」


「さすがは騎士長様、お考えが深い」


「ギル、儂を誉めても何にもやらんぞ」


 と言いつつミラエルの角は激しく上下に動いていた、ギルに誉められて嬉しかったらしい。


「角の女の人って怖い奴だと思ってたけどいい奴なんだね佐波くん」


「まあ本当に怒らせるとマジで怖いけどな」


 騎士団の状態は理解した、後はミラエルとギル任せるしかない。


「そう言えば秋人さん……えっとパルテスだっけ、その人が今どこにいるか分かりますか?」


「パルテスか、確か地獄王様と一緒におられたはずじゃが……謁見の間に行ってみるがいい。確かスルルと死神王もおるはずじゃ」


「分かりました、行ってみます」


「うむ、ならば儂らは引き続き騎士団の立て直しじゃな……行くぞギル!」


「はっ、お供します」


 二人は騎士団の元へと戻っていった。

 騎士団の訓練場を後にして謁見の間に向かった。

 秋人さんとは随分と会ってないな、最後にあったのは確か中学生の頃だったはずだ。あの頃は仕事の関係で出張が多いってまこちゃんが言ってたっけ、おそらく『横』世界の管理者であるパルテスだからそのことで出掛けていたのだろう。

 実際に会うとなるとちょっと憂鬱な気分になる、まこちゃんを守れなかったことを責められそうで……。

 ちくしょうネガティブになってるな、しっかりしろ。


「どうかした佐波くん?」


「いや、なんでもない……あー、えっとスルルもいるんだったっけな」


 話を変えたかったがなにか悩んでるってバレバレだな、そんな俺に気を使ってマギサはスルルの話をしてくれた。

 ルベスとゲイズの人格が封印されていると聞いた、あのルベスが封印されていること事態が驚きだ。


「まさかルベスが封印されているなんてな」


「そのルベスさんってどんな人?」


「嫌な奴だな、腹黒だし神出鬼没だし腹黒だし」


「腹黒二回も言ってるよ……」


「……まあ恩人であるのには変わらないな」


「ふーん、なんかルベスって人のこと結構気に入ってるんじゃない? なんか嬉しそうに語ってるし」


「な、そ、そんなことあるか! 誰があんな奴……」


「ふふっ、じゃあそう言うことにしといてあげるね」


 と笑顔のマギサになんか腑に落ちないが深く考えないことにした。








 謁見の間に到着するや否や対峙する二人の姿を目撃した、緊迫する場は皆の注目を集めていた。


「もう! もうもうもう! どうしてこうなるのかしら!」


「あふ、そんな事言われても知らないよ、だってチャンスあったからしただけだもん!」


 と口論する二人は見知った顔だった、一人は死神王ソフィーネオともう一人は地獄の番犬ケルベロスの人格スルルだ。


「なんだこれ、何が起きてんだ?」


「スルルちゃんと死神王さんだっけ、もしかしてケンカ?」


 なんだこいつら仲が悪いのか? あのスルルが困った顔をしているのは新鮮だし、ソフィーネオの取り乱した姿は……何回か見たな、確かそうなる要素に心当たりがあるがまさか。


「もう! どうして、どうしてスルルだけ……ミラエルの胸を揉めたのかしら! わたしだけ揉めてない!」


 やっぱりな。


「だってぇ、一緒に体の清めしたときに目の前にあったんだもん、目の前におっぱいあったら揉まないと失礼だしね」


「そうですよねえ、目の前にあったら私もそうするわねえ……」


「だよね! だからソフィーの揉ませて!」


「それは無理ですねえ、わたしは揉むのは好きだけど揉ませるのは好きじゃないのです、だってこれは最愛の者だけのものですからね」


「あふ! ソフィーに最愛の者がいるの!」


「……い、いえ、未来の話です」


 なんだろう仲が良いのか悪いのかどっちだこいつら。


「おい二人ともいいかげんにしろよ」


「まああら、サナミシュンとマギサですね? もう動けるようになったんですね」


 ようやく場の雰囲気を感じ取った二人は落ち着きを取り戻した、やっと話を進められそうだ。


「あふ! シュンだ! 久し振りだね!」


 と元気一杯に俺へと向かいダイブしたスルルを避けきれずに地面へと轟沈した。

 後頭部の痛みと呼吸が困難になったのだが前者は頭を床に打ったのは明白であるが視界が真っ暗で後者は一体なんなのか分からない。


「あいたたた……あふ? シュンはどこ? あ、なんだおっぱいの間に挟んじゃったんだ、シュンもおっぱい好きなの?」


 なるほど、スルルの胸に顔が埋もれているのか。

 と言うかマジで苦しい。


「きゃははは! シュン動かないでよくすぐったいよう」


「スルルちゃんそれ違う! 苦しくてもがいているの! 佐波くんが窒息しちゃうって!」


 マギサの救出でなんとか苦痛から逃れられた。


「……し、死ぬかと思った」


「大丈夫佐波くん? もうスルルちゃん気を付けてよね」


「あふ、ごめんなさい……でもシュンも女の子だったら一緒にもみっこできたのになあ、残念」


 お前の思考回路が残念だよ。


「とにかくだ、地獄王様と秋人さんがいるって聞いてるんだけど」


「お二方なら話があるらしくてここを離れましたよ?」


「そっか、なら話が終わるまでは待ってた方がいいか……そうだ、ルベスが封印されているって聞いてる、それをなんとか出来るのか?」


「それならなんとかなりますよ?」


 あっさりと解決できるとソフィーネオが告げた。


「前にミナガワマコトの精神に取り付いた悪魔を具現化して駆除したでしょお? それをまたすればいいのです精神具現化術死神風味でばっちり……ただ……」


「歯切れが悪いな、どうしたんだよ」


「あの時はミナガワマコトに取り付いていたからなんとかなってましたがルベスとゲイズになると戦闘力が段違いです、ケルベロスは次期獣王候補でもありますから厳しいことになりますよ?」


「マジかよ……てか次期獣王候補だって! 初耳だ」


「つまり王を相手にするようなものです……なので獣王ゼルガに協力を申し出ています、もうそろそろここに来るでしょう」


 そう言えばルベスが本気を出したところを見たことないな、ケルベロスの本来の姿すら見たことないしな。


「まあ心配は要らないでしょう、まだスルルがいるのでケルベロス本来の姿にはならないのは幸い……ですけどルベスとゲイズは油断なりませんからね」


「……なら手伝う、これから先はルベスやゲイズの力がいるし……封印されたままじゃ……その、何て言うか……」


「ふふっ、素直ではないですね」


「あふ? どういうことなの?」


「スルルちゃんは知らなくても大丈夫よ」


「マギサが意地悪するぅ、酷いよう」


「後で教えてあげるわよ、助けたいって素直に言えない奴とかね」


 なんか恥ずかしくなってきたな。


「地獄王様とパルテスの会話はまだ終わらないでしょうからそれまでの間に事を済ませましょう」


「分かった……マギサ手伝ってくれるか?」


「良いわよ、そのルベスさんとゲイズさんが戦力になるなら大歓迎」


「ありがとうな」


 こうして後から来た獣王と共にケルベロス復活の為に動き出す。



 

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