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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第十章 戦地は剣の山脈
43/75

進行


 緊張しているらしい。心臓はバクバクと暴れ回り、血液と同時に焦燥感を体中に送り届けている。油断していると自身を飲み込み怖じ気づかせる要因だろう。

 それは恐怖。

 何故そんなものに苦しめられなければならないのか、俺はいつだって敵と戦うことに怖いと思ったことはない。

 ならばこれは何処から来るのか。

 敵は強大、勘が正しければまだ本気を見せていないと思う。だけど俺には仲間がたくさんいる、独りじゃない。だから恐怖は錯覚なのだ。

 だが胸に居座るこいつは何だ?

 その答えは傍らで寝息を立てる彼女が教えてくれた。

 もしも俺が死んだなら二度と彼女の側には居られないのだ。

 それが答えだったのだろう。

 確かに恐怖は巣くっていた、二度と会えないかも知れないというもしもが巣くらせた張本人。

 しかし、戦わなければ平和は訪れない。


 睡眠から覚醒し今日を迎えた意味を噛み締める、これから剣の山脈へ進行するのだ。それは奴らとの決戦を意味している。まこちゃんを拉致し苦しめ、そして今ヘルヴェルトを混乱に陥れている悪魔を倒す。そうしなければいつまでたっても俺達は人間界に戻れない。

 あいつらは何者で何が目的なのかは未だ分かってはいない、しかしそれでも戦う。意思は固い、ただ気がかりなことがあった、それはマギサのことだ。

 悪魔の仲間だったは筈なのに何故俺を助けてくれるのか。

 あの日ヘルヴェルトに来る直前に見たマギサの素顔は……見間違いだったのか、でももし俺の目が正常ならマギサは……。


「その答えも今日分かるのか……?」


 誰に言う訳でもなくただ自分に言い聞かせたような独り言、敵の正体と目的、それにマギサのこと。決戦を終えて生きていたなら解ける謎なのか、全てはこれから分かる筈。

 さあ気合いを入れろよ佐波峻、俺が全てを終わらせてやる、悪魔共を倒してヘルヴェルトを元に戻してから人間界に帰る。もちろんまこちゃんと一緒にだ、結晶の碧と紅の帰還を自在に使えるように鍛錬して来た、前よりも強くなっているのは確かだ。

 倒す、今日で全てを終わらせる。

 そうすれば“地獄王からの提案”を承諾しなくても良いだろう。

 “あれ”は本当に最後の手段にしなければならない。

 そうさ、地獄王の提案を受けてしまったら……。


「ん……んん……」


「……お、ようやくのお目覚めだなまこちゃん」


「あれ……もう朝……?」


 目覚めたまこちゃんが目を擦りながら起き上がりぼやけた頭で周りを見回していた、まだ目が座っているな。


「おはようまこちゃん」


「……うー、おはようございます……ふぁ~」


「まだ眠いのか?」


「うー……だってしゅーがなかなか寝かせ…………ひゃあ! わ、私、今変な事言わなかった!?」


 と言って騒ぎながら完全に覚醒するまこちゃんだった、寝ぼけてあんな事を言うとは何とも可愛くて和む。

 顔を赤くして両手をブンブンと振りながら慌てて訂正していた。


「あははは、俺達二人だけだぞ? 別に良いじゃないか」


「そ、そうかも知れないけど……でも恥ずかしいし」


「やっぱりまこちゃんは可愛いな本当」


「……しゅーだって格好いいよ?」


 バカップルモードへ移行する俺達、誰かが止めなければそのまま維持されてしまうが幸い部屋に訪れた第三者にモードの解除が行われる。


「ううっ、朝っぱらから何イチャついてんですよう、見てるこっちが恥ずかしいですよう」


「わ! り、リリリちゃん!」


 死神リリリが登場する、多分俺を呼びに来たのだろう。


「何だよリリリ、羨ましいのか?」


「ううっ! 何でリリリが羨ましがらなくちゃならないんですよう! 訳分かんねーーですよう!」


「何だよまたですようですようって媚びてんじゃんか、羨ましいって言ってるようなもんなんだろ?」


「うううーーっ! だから何度も言わせるんじゃねーーですよう! これはリリリちゃんのかわゆくてナイスなチャームポイントの口癖なんですよう!」


「あーー分かった分かった、そりゃあ凄い凄い」


 と適当に流してやると『むきーー!』とか『うううーーっ!』とか奇声を上げて地団駄。からかうとこいつは面白いなやっぱり。その後散々悪口を言われて向こうが満足したのか部屋に来た用件を伝える。


「ううっ、余計な体力を消費しちゃったですよう。コホン、えっと身支度が終えたら騎士の鍛錬場所に集合ですよう、隊を作りそのまま出発するそうですよう」


「……そっか、分かった」


「ちゃっちゃかと身支度を整えて来やがれですよう? ……じゃあリリリは一足早く行ってるですよう」


 騒がしい死神が出て行くと置き土産に静けさを置いていったみたいに急に静かになった、全くあいつは騒がしい死神だな本当に。

 だけど決戦前はピリピリとするものだが、多少とは言え和んだ。


「リリリは騒がしい奴だな本当に……ま、とにかく準備するかな」


「うん……」


 当然今回はまこちゃんはお留守番になる、確かにここにいれば安全だと思う。警備も万端にすると地獄王が言ってくれてたから大丈夫だろう。

 でも本当に不安なのは決戦を無事に終えてまた俺達は会えるかと言うことだ。それは多分まこちゃんもそう思っているだろう。

 また無事にまこちゃんの隣へ……。

 そして人間界へ帰る、居るべき世界へ二人で。

 準備を終えて二人で騎士鍛錬場所へ向かった、手を繋ぎながら。

 結界のゲートを潜り抜けると既に隊列を組む騎士団の大軍がずらりと並び待機していた。

 一糸乱れぬ列、不動を貫く統制、正に圧巻である。


「わ……凄いね」


「ああ、一体どれだけの数いるんだ……」


 騎士団の数に圧倒されていると俺達に気が付いた副騎士長ギルがこちらにやってくる。

 近くにミラエルがいたみたいだが騎士団を纏めているらしくこちらにまだ気が付かない。


「やあ待っていたよシュン、準備は万端かい?」


「ああ何時でも出発出来る、……それにしても凄い数だな、一体どれだけいるんだ?」


「兵は全部で五千、私は別行動で奇襲をするから二千程連れて行く、君は前に話したように死神達と行動を共にしてもらい正面から攻めてくれ……多分死神王と行動するだろう」


 決戦に向け色々話し合い俺は死神王と一緒に戦う事になっていて途中から死神スミスと合流する予定だ。

 スミスとは暫く会ってなかったから久しぶりになるな。


「では先に出発させてもらうよ、剣の山脈の地下に広がる空洞へは少し遠回りになるからね」


「そうか、頑張れよギル」


「へまはしないさ……」


 ギルが出発しようとしたその時ミラエルがこちらに歩み寄って来た、一目散にギルへ向かう。

 ちなみにミラエルのツノは真っ赤である。


「行くのかギル」


「はい、必ずや奇襲を成功させます」


「うむ、そなたならば大丈夫じゃ……ただ無理はするでないぞ?」


「騎士長様のお言葉を有り難く頂戴いたします」


 深々と頭を下げるギルは忠誠心をミラエルに見せる、ミラエルのツノを見ると上下に激しく揺れていた。

 ああなる程、やはりギルの事が好きなのかミラエルは。尻尾を振る子犬みたいに見えるぞ。


「では行って参ります」


「うむ、武運を祈っておるからのう」


 こうして二千の騎士を連れて副騎士長ギルは出発する。


「では儂らも出陣するとするか、下衆、貴様は死神王と行動を共にする筈じゃったな? 儂らは先に向かう、後から追いつけ」


「ああ、分かった……じゃなくて、分かりました」


「うむ、ではまた後程にな」


 騎士団が出発する、地鳴りを発生させる足音、統制の取れた動き、鎧を纏う騎士団が勇ましく戦地へ。

 俺も向かわなければならないな。

 死神王と行動を共にする為ここで待っていると空から光の翼を羽ばたかせ舞い降りる死神が見えた。死神王ソフィーネオだ、側にはリリリとフェイロットが付き添っている。


「まああら、遅れちゃったわねえ、ごめんなさい」


「ううっ、死神王様が死神の百人切り何かするからですよう」


 百人切り?


「だってあんなにたくさんふくよかな胸がいっぱいあったんですもん、揉まなきゃ失礼と思って」


「ううっ、あれだけは勘弁ですよう……」


「あ、あたしも勘弁願いたいわ……」


 げんなりしたリリリとフェイロットは溜め息を一つ。

 決戦前に何やってんだソフィーネオは。


「もう溜め息なんかして、今日は決戦なんですよ? シャキッとしなきゃ」


「ううっ、死神王様の所為何ですけどね、ですよう」


「ま、まああら、ほほほほ、そんな事はこっちに置いといて……とにかくわたしの側にはシュンさんが居てくれれば良いんです! えっと……リリリはスミスの元へ行って指示を受けてねえ? わたしの部隊とスミス部隊、そしてフェイロット部隊に分けるからフェイロット頑張ってねえ?」


「はい、頑張ります!」


 上手く丸め込んだ、と思っているのかソフィーネオの口角は上を向いていた。

 フェイロットはまこちゃんの所へ近付き話し掛ける。


「マコト、あたしが絶対に敵を倒してくるから、そうしたら帰れるんでしょ人間界に。だからちょっとだけの辛抱よ」


「ありがとうフェイちゃん……気をつけてね」


「大丈夫よ、あたしは強いんだから! じゃあまた会いましょう……先に外へ出てるわ、サナミシュン後からちゃんと来るのよ?」


 そう言うと外へ飛び出していく。さてと、俺も行かなくちゃな。


「……じゃあ俺行くよ……王宮にいれば獣族が警護してくれるんだ、きっと安全だ、だからここで待っててくれまこちゃん、必ず勝って戻るからさ」


「うん、私待ってるからね? 絶対に……生きて帰って来て、そうじゃなかったら怒るからね、許さないからね!」


「ああ、約束する。俺は生きて戻ってくる、必ずだ」


 二人でまた青い空を見る為に俺は死ねない。彼女を悲しませない、絶対に。見つめ合ってから自然と唇が重なり合った、愛おしさが激しく燃え上がる。

 絶対に帰ってくる、必ず。


「……行ってらっしゃい」


「ああ、行ってくる」


 こうして繋がれた手は離れていった、またこの温もりを感じることが出来るのだろうか。残留する僅かな温もりを握り締めて前を向く、進む先は戦地、一度も振り向かずに外へ。

 振り返る必要はない、帰ると約束したのだから。

 王宮の結界を抜けると浮遊感に足を取られ地へと引きずり込まれる、だが地上に落下する直前背中に誰かが抱きついた。

 そのまま上昇して赤き空が近付く、背中から抱き付いた奴は飛んでいるらしい。そいつの顔を見ると顔馴染みであることに気付く。


「全く人間って奴は飛べなくて不便ですよう、この美少女リリリちゃんに感謝しやがれですよう!」


 死神リリリが掴まえてくれたらしく、何だか知らない内に貸しを作ってしまったらしい。


「美少女だぁ? どこにいるんだよそんなのは」


「ううっ、真後ろにいるですよう!」


「ほーー、それは凄いな、良かったなーー」


「うううーーっ! 死か? 死が望みかこの野郎ですよう! 今手を離せば地面に落ちてグチャグチャになってミンチですよう!」


 それは嫌だ、ちょっと想像してしまった。


「わ、悪かった、謝るから落とさないで下さい美少女リリリちゃん」


「ふっふ~んですよう、リリリの偉大さと可愛さをようやく理解しやがったですよう」


「まああら、二人は仲良しさんねえ?」


 漫才を見つめていたソフィーネオは温かな眼差しを送るのだった。そんなに微笑ましく見えたのか? 俺にしたら命がけなのだがな。


「こんな時に漫才なんて度胸あるのね二人とも」


 先に外へ飛び出していたフェイロットが呆れたような表情をしながら俺達を一瞥した後キョロキョロと何かを探す素振りを見せた。

 何か探し物が?


「ううっ、変態しゅんの所為でリリリまで呆れられたらですよう」


「お前も乗ってただろうが! たく……フェイロット、お前何を探してんださっきから」


「あんたには関係ないわよ!」


「ふふっ、フェイロットは一途ねえ? 本当に可愛らしい」


 ソフィーネオは何か知っているようだがフェイロットは何を探しているんだ? との考えを見抜いたらしく説明してくれるらしい。


「フェイロットが大好きなあの子を探しているのよねえ?」


「あの子……?」


「はい、大食らいでサボり癖があるわたしの可愛い可愛い妹ですよシュンさん」


 ああ、あいつか。

 噂をすれば何とやら、前方から飛んでくる死神の姿を見付ける、銀の髪にドクロのネックレス、そう死神スミスだ。初めて王宮に来た時から随分と会ってなかったな、久し振りだ。


「久し振りだな佐波、元気にしていたか?」


「ようスミス、久し振りだな」


「うううーーっ! 先輩お久ですよう! リリリ超感動ですよう! アイラブユーですよう!」


「リリリは相変わらずみたいだな、ちょっとくらいは成長したのか?」


 そうか、俺と行動を共にしていたリリリに取ってもスミスとの再会は久し振りになるのか。


「まああら、スミスったら一人前みたいなセリフを良く言えますねえ? シュンさんとリリリが居ない間ずっとヘルヴェルトの異常調査をサボっていた癖にい……」


「あ、あれはオレ何か居なくても出来るだろ? それに……エティオとネリスが人間界にいるのに私用で人間界には行けないんだ、やる気も出なくなる!」


「そうですねえ、スミスが毎回サボるから死神の仕事が少なくなって、今は人間界に行く仕事が無いもんねえ?」


「うっ……」


 自業自得だな。


「と、とにかくだな、敵をさっさと倒してオレはエティオとネリスを探しに行かせて貰うからな! ソフィーネオ、人間界に行く仕事を一つよこせ!」


「まああら、それが死神にものを頼む態度ですか? それにわたしの事はお姉ちゃんと呼びなさいと言ってますよ?」


「う……お、お姉ちゃん、よろしくお願いします……」


「はい良くできました、考えておきましょう」


 やはりソフィーネオは苦手みたいだなスミスは。


「はは、良い気味ねスミス、弱々しい貴女を見られてあたしは大満足よ!」


「フェイ、お前後で覚えていろよ……」


「ふふっ、フェイロットったら本当の気持ちを伝えれば良いのに、スミスが大好きなんですよねえ?」


「し、死神王様! ち、違います! あたしはスミスの事何てどうでも良いんだから! 本当よ! 本当なの!」


 ツンデレかこいつ? 必死に弁解している時点で自らを晒しているも同然だと思うけどな。まあ何にせよ見知った奴がいるのは心強い。

 現在岩の山脈を進行している、死神はスミス達を合わせて約30くらいか。

 確か死神の仕事は人間界で亡くなった人間の魂を地獄ヘルヴェルトに連れてくるんだったな、なら決戦に死神が少ないのは仕事の為か。ソフィーネオに訊いてみると想像通りの回答を得られた。


「死者の魂の回収は怠ってはならないんですよ、怠れば浮遊してどこかへ行ってしまうし、未練が土地を変貌させ魂を束縛してしまいます、そうなると連れ帰るのが困難ですし、輪廻転生が遅れてしまいますからねえ……死神も大変何ですよ?」


「その割には給与が少ないよな」


「何か言いましたかスミス?」


「別に何でもないよソフ……んん、お、お姉ちゃん」


 死神も大変なんだな。


「でも心配は無用ですよシュンさん、連れて来た死神達は戦闘力がある子達ばかりですから……」


「そっか、それは助かるな…………ん、あれ? よくよく考えるとさ、何で死神は戦闘力を持たなきゃならないんだ? 魂を運ぶだけなんだろ?」


 それならば戦闘力なんか無用だと思うのだがな、古来から死神と言えば大きな鎌を持ってるがそれと関係があるのか?


「シュンさん、死神に戦闘力は必要何です。確かにメインになるのは魂の運搬ですが、仕事から漏れてさ迷った魂は他の魂に引き寄せられ複数の塊となります。そうなってから膨大な時間が強力な魂、あなた達で言う悪霊、妖怪に変貌してしまいます。そうなってしまったら一度退治してバラバラにし、力を弱めてから運ぶんです」


 なる程、魂を運ぶのは簡単な仕事ではないってことか。


「他にも今回の様な有事の際などにも死神が力を貸しますし、もう一つの仕事である良質なる魂の選定でも……あ、これは人間が知らなくても良いことでした、忘れて下さいねえ?」


 何だか良く分からないが話せないなら無理に聞くのは良くないよな、今まで世話になってきているんだここは訊かないのがマナーかな。


「分かった、訊かないことにする」


「ありがとうございますシュンさんは優しいですねえ、貴方が女の子で尚且つ胸があったなら速攻でわたしの楽しみを決行しているところです……残念です、どうして貴方は男何ですか?」


「いや、そんな事言われても困るだけなんだが……」


 と妙な会話をしていると山脈がより険しくなり、下を移動している騎士団はかろうじて歩ける場所を進んでいたが険しさの為道が無くなってしまう。

 そこで岩から岩へ跳びながら移動を始めた、人間ではないから歩くスピードもジャンプ力も異なっている、なかなかに頼もしい。


「おい、見えて来たぞ剣の山脈が!」


 スミスがそう叫びながら前方を指差す。

 天をも貫かんと聳える鋭利な針が無数に生えた巨大な山脈が堂々とそこにあった、針と言ってもそれは半透明なガラスに見えまるでクリスタルを彷彿させる。

 地平を埋め尽くす山脈は高層ビルを思い出させる巨大クリスタルを飛び出させ生物を拒む異端な物体に思えてならない。

 あれが剣の山脈か。なる程、クリスタルが剣のようだ。


「でっけぇ……あんな場所に居るのかよ本当に」


「あんたバカバカ? 話を聞いてなかったの? あの中は空洞になっていてあの針は屋根みたいなものなのよ、全くマコトはこんなバカバカを好きになったのかしら」


 フェイロットに小馬鹿にされてムッとしたがちゃんと説明してくれたことには感謝しよう。あの中に悪魔共がいるのか。


「それじゃあそろそろ降下しましょうか、敵に気付かれたら大変だからねえ?」


 ソフィーネオの命により死神達が降下を始め下を進行していた騎士団と合流を果たす。

 騎士団の先頭付近まで近付いてみると騎士団長ミラエルを見つける事が出来た、俺達が空から近寄るとミラエルがその存在に気が付く。


「死神部隊か、漸く合流出来たみたいじゃな」


「ミラエルはいつ見ても素敵ねえ……その鎧さえ無ければ綺麗な肌と胸が見られて最高なのに」


「死神王様、今は戦中じゃ、その様にお戯れ言は困ります」


「まああら、わたしは本気何だけどなあ」


 ソフィーネオはマイペースだな、本当スミスの姉だと実感するな。唯我独尊たるスミスと姉妹だと言われたら納得してしまう。


「ん、何だ佐波その明らかに馬鹿にしたような呆れたような目は、オレを馬鹿にしてんのか?」


「ち、違うって、そんなわけ無いだろスミス!」


「怪しいな……後で問い詰めてやる。ミラエル、これからどう攻めるんだ?」


「うむ、死神部隊は空を頼む。儂等は地から攻め入るつもりじゃ……さて問題は下衆と死神王様じゃな、一緒に地上でも構わんが」


 まあ俺飛べないしソフィーネオと行動を共にする事になってるからな。やれやれと溜め息混じりに俺を見つめるミラエル。

 ちくしょう足手纏いみたいじゃないかこれじゃあ。


「まああら、良いわよわたしは。シュンさんと二人切りでうふふふな事をしていますから」


「うふふふって何だよ一体! 紛らわしい言い方は止せっての!」


「ちょっとふざけてみただけですよ……こんな冗談をマコトちゃんの前で言ってしまったらわたしの寿命が縮んでしまいますからねえ?」


 死神の寿命ってどれくらいだよ。ま、何にせよ俺らは地上戦闘になるのは間違いないな。

 ある程度進んだ後進行を止めさせ岩陰に隠れ剣の山脈を伺う。


「ここまでが限界じゃろうな、見つかってしまったら意味がない……さて、ギルは無事に着いたのか」


 ミラエルは懐から手の平サイズの漆黒の石を取り出し胸の前で握り締めて瞼を閉じ集中。ああこれは通石か、確か石を二つに割って持っている者同士の意識の疎通が出来る言うなれば通信機だ。

 ギルと連絡を取っているのだろう。


「……うむ、どうやら到着したようじゃ、待機を命じておる。儂等が仕掛けてから十分後に地下から奇襲を開始する……良いか諸君、決戦の時じゃ! この戦を勝利の二文字で埋め尽くすのじゃ!」


 精神が研ぎ澄まされていく、鋭利に。


「では死神部隊はスミス隊とフェイロット隊に別れて下さい。二人とも頼みますね?」


「あたしに任せて下さい死神王様! スミスなんかよりも活躍しちゃいますから!」


「任せておけ、オレが残らずに真っ二つだ!」


「ううっ! リリリも頑張りますですよう! 先輩のサポートをしちゃいますですよう!」


 やる気に溢れている死神達、それに騎士団も。

 俺も燃える、真っ青な炎で。


「あ、リリリはわたし達と一緒に居て下さいねえ? 回復役は前線に行かれたら困ります」


「そ、そんなぁーーですよう!」


 こうして剣の山脈を舞台に悪魔との戦いが始まる。


 




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