表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第八章 彼女達は地獄を目指す
37/75

彼女のスタイル

 

 空腹は敵だと誰かが言った台詞だと思うけど誰だったっけ? まいっかとコンビニと言うところでマギサに買って貰ったおにぎりを食べながら亀裂探しをしていた。

 でも、どうしても気掛かりな事がある。


「マギサ、質問があるの……これは大事な事なんだよ」


「真剣な眼差しね、一体何?」


「あのね……どうしてなの! 何でおにぎりの具はこんなにも少ないの! シャケだって少量、ツナマヨももっとあっても良いのに! この焼きタラコは絶品……あふ! 痛あ~い! 何でゲンコツすんのーー!」


「あのねスルルちゃん、貴女ちょっと黙っててくれないかな? 私は真剣に亀裂を探しているのよ! 遊びじゃないの! 貴女は黙っておにぎりを満足するまで食べていなさい!」


 怒られちゃったよ。


「あふ、グスッ……ぼくも真剣に探してるもん……グスッ、マギサはぼくの事嫌い? ぼく、ぼく、頑張って来たもん! うえええええええええええん!」


「ち、ちょっと何泣いてるのよ! スルルちゃん泣きやんで、ちょっと泣かないでよ!」


「うえええええええええええん! ぼく真面目にやってるもーーん! うえええええええええええん!」


 町のど真ん中で大声を上げて泣いていると行き交う人々から白い視線が。


「う、また人が集まって来ちゃう……ごめんなさいスルルちゃん、私が悪かったから、だから泣きやんで? お願い!」


「グスッ、グスッ……マギサはぼくの事好き?」


「う、うんうん、好き好き! だから泣かないでよ」


「うん分かった、ぼく泣き止む!」


 良かった、マギサはぼくを好きだって、嫌われて無かったんだ。


「厄日ね本当に」


 落ち着きを取り戻してそのついでにお腹も満たしたぼくは正に絶好調状態だ。今なら何かやれそうな気がする、だけどいつもぼくがやる気を出すと裏目に出ちゃうんだよな。

 でも頑張らなきゃ。


「よーーし、ぼく本気になるよ! ぼく亀裂を鼻を使って探すね! こう見えたってぼくはケルベロス! 番犬だから鼻が利くんだぁ!」


「最初から使っていれば良かったんじゃ……ああもうスルルちゃんに突っ込みはしない方が賢明かも知れないわ、突っ込んだら私が疲れるだけだもの……じゃあスルルちゃん、お願い出来る?」


「任せて! じゃあ行っくよ~! ……くんくん、くんくん……」


「スルルちゃん、匂いを嗅ぐ時にくんくんって言わないと出来ないの? ……あ、突っ込みしちゃった」


 亀裂の気配は感じる、だけどあまりに小さくて何処にあるのか分からない。だけど亀裂には匂いが存在する、正確には亀裂から漏れ出すヘルヴェルトの匂いだ。

 いくら気配が小さくて分からなくても匂いなら何とかなる。ぼくはケルベロスの中でも一番鼻が良い、空気中に漂う匂いを視覚が色として認識も出来るのだ。

 ヘルヴェルトの匂いは濃い赤色、ほら噂をすればまるで糸の様に漂う赤を見つけた。

 ああ、懐かしいヘルヴェルトの匂いだ。


「見付けた! マギサこっちだよ!」


「あ、待ってスルルちゃん!」


 それは垂らされた綱をよじ登る感覚に似ている、赤を辿って行くと太く更に色を濃ゆめて匂いもここだと激しく主張するのだった。

 あれ? この赤に知っている匂いが混ざっているな。

 赤を辿ってとある場所に到着した、そこは神社の境内だ。ここにちょこちょこと赤い色と匂いが漂ってる。間違ない、ここの何処かに亀裂があるんだ。


「マギサ、ここの何処かにあるよきっと!」


「神社の中か、意外に広いわねここ、とにかく手分けして探しましょう」


「うん分かった! 良し頑張るぞ~! ぼくファイト、ぼくファイトだよ!」


 探索を開始する、走り回って境内を探し回った。だけど見つからない。

 あれおかしいな、確かに匂いはあるのに。


「あふ、おかしいよ~……あふ!」


 突如に妙な感覚に陥った、首筋を何かに舐められたかの様な怖気が通り過ぎる。

 振り替えるとそこには何もなかった。


「あふ? 何だったのかな……今のはまるで……」


 誰かに見られていた様な感覚だ。

 何も気配は感じないしここにはマギサとぼく以外誰もいないみたいだし、おかしいな。まいっか、考えたって分からないもんね。気にせずに亀裂を探そうかな。

 こうして探し回っていると等々お目当てのものを見つけ出した。神社の裏に大きな樹があって、その根元辺りに小さな亀裂を発見出来た。


「マギサーー! 見付けたよーー!」


 叫んだ数秒後マギサが慌ただしく飛んで来た。


「ほ、本当にスルルちゃん!」


「うん! ほらこの樹に」


「……良かった、本当に良かった……これで佐波くんを助けに行ける」


「……あふ、マギサって峻が好きなの?」


 馬鹿なぼくでも何となくそんな感じを覚えてしまう。

 だってマギサの顔が嬉しそうに『佐波くん』って言っていたから。


「何を言ってるのよスルルちゃん、確かに佐波くんはカッコいい部類に入るけど違うわよ。私には好きな人が他にいるから……」


「ふーーん、まいっか。それよりみんなをここに呼ばなきゃ!」


「それは大丈夫、私の力を使ってみんなをここに集められるから」


 そう言った次の瞬間、マギサの周りに黒い霧の様な物体が現れて漂う。

 何だろうこれ?


「私の力でこれはシュバルツミストって言うの、こいつにちょっと細工して……」


 霧が集合を始め色が濃くなりどす黒く変化を始め、形が鳥に擬態する。二羽の黒鳥がぼくとマギサの肩に止まった、色は黒いけど可愛らしいな。


「この子達に私の意思を少し分けているの、さあ行ってみんなを集めて来て?」


 黒鳥は天高く舞い上がり散って行く、凄く便利な力だなあ。


「マギサ凄いねぇ! はあ~……マギサ」


「ん?」


「おっぱい揉み揉みして良い?」


「絶対にダメ!」


 ちぇ、暇な時間マギサのおっぱいを弄んで暇つぶししようと思ったのに。仕方ないから見つけた亀裂を観察してみようかな。

 小さな小さな亀裂、本当に極小で針の穴程だろうか。でも珍しいな、こんなに小さな亀裂は珍しい。普段亀裂が出来て、小さくても三十センチ前後何だけどな。


「……あれ?」


「どうかしたのスルルちゃん? まさかまた私の胸を狙ってるんじゃ」


「違うよう。この亀裂一度誰かに修復された後があるんだよ……これは知っている匂いを付けているんだ、この匂いの正体は……」


 あそっか、分かったよこれを修復した奴が。


「これ死神スミスが修復した亀裂なんだ!」


「死神スミス? それってまさかネリスちゃんとエティオくんのお母さんじゃないの?」


「うん! 良く知ってるね!」


「エティオくんとネリスちゃんが話してくれたからね……じゃあ二人のママが前にここに来て修復して行ったの?」


「うん多分間違いないよ、でも……手抜きしてるよこれ、何か急いでたのかなあ?」


 そうだ、確か真がさらわれる前にルベスが峻に電車の中で亀裂があるから何とかしてって頼んだっけ。その時にスミスが一緒にいて付いて行ったんだ。

 そっかそっか思い出しちゃったよ。全くスミスは仕方ないな、手抜きしちゃうなんて。でもそのおかげでぼくらはヘルヴェルトに行ける様になったのは皮肉なのかな?


「とにかく良かった良かった、スミスのサボり癖に感謝だね!」


「……ねえその話エティオくんとネリスちゃんには内緒にしておかない? あの二人お母様は凄いんだって尊敬してたからそのイメージを壊したくないじゃない?」


「ん……そだね、分かったよ! 亀裂はスミスの手抜きって二人に伝えるんだね!」


「違う! スルルちゃん何で話がズレちゃってるのよ!」


「あふ? なんか間違え……」


「漫才とは悠長な……」


 居抜かれた様にそれは聞こえた、ぼくの知らない声に貫かれる。第三者たる声を眼球が忙しなく動き回りそいつを見つける。

 一気に呑気を食い殺し緊張感が居座り空間を自分の色に染めて行く。

 一切の遠慮無く。


「気を抜き過ぎた、それだから接近にも気付かずに漫才に更ける……耄碌(もうろく)したかマギサ?」


 そいつはマギサを知っている、だったら真を連れ去った仲間だろうか? 嫌な汗が噴き出してぼくを濡らす。


「う……嘘……そん、な……」


「あふ? マギサどうかしたの? 大丈夫?」


「嘘だ……何で……何でお前がここに居るのよ! おかしい、いや、あり得ないわ!」


「あり得ない、か。マギサ、お前は何を知っている? 自分の全てを理解している訳じゃないだろ?」


 そいつは大きな男だった、身長は二メートルくらいはありそうだ。凄く筋肉質で腕がぼくのウエストよりも大きくて太い。

 もうそいつは巨人と称しても違和感は無いと思った。


「どうしてよ……どうしてあんたが生きているのよリーゼス!」


「だから言っているだろう、お前は自分の全てを理解していないとな」


「嘘……確かにあの時に……マンションであんたを倒した筈よ! エティオくんとネリスちゃんと三人であんたを滅した! 確かにこの目で肉体が消滅するのを見たのに……それなのに!」


 一度倒した? じゃあ何でここにいるのだろう?

 分かんないよ、何がなんだか分かんないよお。


「マギサ、この女は新たな仲間か?」


「ぼくはこの女じゃないもん! ぼくはねスルルってかわゆい名前があるもん!」


「喧しい女だ……まあ良い、マギサ、お前を捕らえさせて貰うぞ? 自分はそう命ぜられているからな」


「……今はあんたが生き返ったトリックはお預けみたいね? 私を捕らえるですって? あの時は手負いだったけど今はバッチリ回復しているんだから! もうあんた何かに負けないわ!」


 黒い霧がマギサの周りに発生して行く、多分戦う準備が出来たってことだと思う。

 だったらぼくも準備しなきゃね。良く分からない展開になっちゃったけど負けないよ!


「赤髪の女もやる気か。後悔するなよ?」


「あふ! 後悔するのはそっちだもん! こう見えたってぼくはケルベロスだかんね! 地獄の番犬を舐めたらその筋肉全部燃やしちゃうもん!」


「え、スルルちゃんって戦闘出来るの?」


「うん! 見ててよぼくの力は凄いんだから!」


 ケルベロスが操る力がある、それは地獄の炎、骨すらも燃え散らせてしまう力だ。ルベスやゲイズもこれを利用して戦闘をする、例えばゲイズの場合は炎を体の周りに薄く伸ばして鎧とし、戦う。

 接近戦闘主体なゲイズ、ルベスは中間だ。格闘はゲイズに劣るが多才なバリエーションの戦闘方法を身に着けている。心理戦や遠距離・中距離・そして接近戦を織り交ぜた万能たる戦法。この方法でゲイズと戦えば間違いなくルベスが圧勝するだろう。

 それに貸してはいるが『結晶の碧』も用いれば強大な強さを見せてくれる。ゲイズは『紅の帰還』を備え、そしてぼくも『拒絶の白』を持つ。

 さあ見せてあげるよぼくの力と戦闘方法を。ぼくの特長は鼻と目が良い、それに見合う戦闘スタイルはゲイズには無理なもの。


「行っくよ! 行っちゃえマギサ!」


「ええ! ……って私一人!?」


「……また漫才か?」


「漫才じゃないわ! 良いわよやってやろうじゃん! 来なさいリーゼス、あんたなんかボコボコよ!」


 マギサと巨人が戦い始めた、ぼくはすかさず距離を取る。何処かにいいポイントは無いかな? ぼくの戦闘スタイルに合った場所を探してようやく見つけ出す事が出来た。

 そこは神社よりも遥か先に聳えているビル、あそこだったら何とか出来るかな。素早く家屋の屋根を飛び回りビルの屋上へ。


「さあ始めちゃうんかんね!」


 右手を前に突き出し人差し指、中指、そして小指をぴんと立てる。左手で右手首を押さえて照準、ぼくの戦闘スタイル、それは超遠距離射撃だ。

 ぼくの目は望遠鏡の様に遠くを見れる、これが超遠距離射撃を可能にする。内なる炎を右手に顕現させて凝縮してゆく、右中指と小指の間に炎が蓄積されて行き最後には小さな小さな弾が出現する。

 片目を閉じ意識を集中させ、マギサと戦闘を繰り広げる巨人に向かって狙いをつける。角度はこれくらい、良し狙いを定めた!


「よ~し、行ってらっしゃい炎弾! 迷子にならないでね!」


 炎の塊たる弾を射出、真っ直ぐ綺麗に突き進み一瞬の内に狙い通り巨人の右足を貫く。炎弾は元となっているのは火、つまり肉を貫き同時に焼くのだ。この弾で貫かれたらもう火傷している為治療が難しくなる。

 ただ傷を焼いてしまうから止血になってしまうのが難点かな。


「でも貫いて焼かれるのって辛いんだよ! ほら巨人さんが痛そうな顔してる!」


 ぼくは接近戦が全くと述べても良い程苦手である、パンチやキックは確かに人間よりも秀でてはいるが戦闘中に足が絡まってコケてしまう事がしょっちゅうだ。

 遠距離からならば安全な場所で攻撃が出来るし疲れもしない。まあ遠距離にも弱点はあるのだけど。


「わ!」


 素早く右に飛ぶ、数センチ満たない距離を何かが飛んで行く。白い物体、あれってまさか歯? 巨人さんがぼくの攻撃を辿って反撃して来たんだ。あっちも遠距離が撃てるみたい。

 マギサが黒い霧を無数の槍状に変化させて解き放つ、しかし巨人さんは身軽に難無く回避。フットワークが良いな、ぼくとは大違い。

 遠距離だから狙い撃ちに集中するから周りが見えなくなる、そんな時に攻撃されたらやばいよ。


「あんな攻撃くらいじゃぼくめげないもんね! ぼくファイト、ぼくファイトだよ!」


 再度攻撃態勢へ、狙いを定めるが巨人さんは上手く神社の影に入ってしまいここからじゃ姿が確認出来ない。敵もお馬鹿さんじゃないか、でもそんな小細工は利かないよ。

 ぼくの目には見えているよ、巨人さんの“匂い”が。少し緑っぽい黒い色が巨人さんの匂いだ。ぼくの目はね、障害物があろうと匂いを見る事が出来る。

 まるで壁が透けたかの様に緑っぽい黒と青っぽい黒が動き回ってる、青っぽい黒はマギサだ。


「行ってらっしゃい炎弾! 迷子にならないでね!」


 炎弾の利点がこの困難さを解消する、放たれた炎弾は空気を焦がしながら神社へぶつかるが、それを障害とは見做さない。壁を溶かして真っ直ぐに標的に向かって行く、炎弾はその名の通り炎、地獄の炎は炎をも溶かす。

 壁何て意味が無い、全てを貫く、これがぼくの炎弾の利点だ。

 ほらヒットした。


「あふ! やったよぼくやれば出来る子! さあもっともっーーと攻撃しちゃうもん! それ!」


 炎弾の連射、障害なるものは意味を成さない、ただの空気と同じだ。ぼくの炎弾は天下一品だもん!


「行ってらっしゃい、炎弾! 迷子にならないでね! 道草食っちゃったらやだよ!」


 十連射を浴びせた、おかげで神社は穴だらけになってしまったが今は非常時だ。でもごめんなさい、怒られるの怖いから今心の中で謝るね?


「あふ!」


 驚いた、炎弾で出来た穴から何かがぼく目掛けて飛んで来た。

 多分巨人さんがやったんだ。

 それは白くて長い物体、あれはまさか骨? 巨人さんは骨を投げて来たの? それも凄まじい速度で。間一髪それらを避ける、しかしどうなっているのかな? 骨何て投げたら腕とか足がグニャグニャになっちゃうのに。


「骨を取って痛くないのかな? ちょっと様子を見てみようかな?」


 しばらく様子見の為マギサと巨人さんの戦いを見物しよう。マギサは中距離から黒い霧を槍や弾に変換させて撃ち放っていた。

 耳を澄まし二人の会話を聞いてみる、ぼく耳も優秀なんだから。


「スルルちゃんなかなかやるわね、どうなのよリーゼス、体穴だらけになって涼しくなったんじゃないの!」


「ふん、この程度で自分は死なん! マギサ、自分が不死身なのは体感したのではないのか?」


「まさか、マンションで倒したのは確かに見た……多分あれはあんたのトリックよ! いくら悪魔でも死なないなんて事は無いわ!」


 どんな生き物だって殺したら死んでしまう、馬鹿なぼくだってそれは分かってるよ? マギサの話じゃ一度消滅させたのに復活していた、もしそれが本当なら不死の生命体? でも今まで不死の生命体何て見た事が無いよ?

 ケルベロスであるぼくは今大体1000歳くらいだけど決して不死じゃない、だだ生きる時間が長いだけで必ず死期はやってくる。

 それが当たり前なのに、巨人さんは無視しちゃってるよ。


「マギサ、お前は己達メンバーの中で言えば一番の新参者だったな、ならば分かるだろう?」


「私が知らない能力をあんたが有しているって訳ね? ……まあ良いわよ、あんたが死を迎えるまで消滅を繰り返せば済む話よ!」


「ぬ、そんな簡単な公式なのか? お気楽なのだなマギサは……その消滅させる前に力尽きたら意味が無いだろうに」


 ふーん、良く分かんないけど巨人さんを消滅させれば良いんだね? じゃあぼくのとっておきの必殺技で倒しちゃおうかな!

 でも、下手したら神社無くなっちゃうけどな。どうしよう? ルベスはいつも口うるさく人間界に被害を出さない様にって言ってたからね、困ったな。

 ぼくは別に構わないけどルベスに怒られるのは嫌だよ。ルベスが怒るとしばらく体を自由に出来無くなっちゃうからね。

 あ、でも今は眠っちゃってるんだから……良いかな?


「どうしよっかな?」


『何を悩んでいるの?』


「うんとね、あの巨人さんを消滅させる技があるんだけど下手したら神社が無くなっちゃうからどうしようかなって考えてたんだ。ぼくは神社は壊れても別に良いけどルベスがうるさくて…………あふ?」


 あれ、ぼく誰とお話してたの?


「あふ! だ、誰なの!?」


 声の主を探して首を動かすが見当たらないな、確かに聞こえたのに。まさか幻聴かな?


『何処見ているの? こっちよこっち!』


「あふあふ! こっちっで何処だよう! あれ、あれれ、あれれれ? 意地悪! 何処かちゃんと教えてよスケベ!」


『何でスケベなの? まあ良いけどねそんな事……貴女の頭上を見てみなさい』


「頭上?」


 その通りに見上げると空が見えて何かが映り込んだ、それは黒くて小さい物体で空に浮かんでる。もっと良く観察するとそれは鳥だった、真っ黒な鳥が一羽空中に漂う。

 え? あれが声の正体なの?


「君は誰? あれ、何か見覚えがある様な気がするよ? あふ?」


『全く、もう忘れちゃったの?』


 そう嘆く黒鳥はぼくの肩に舞い降りた。


『私よ私、罪深くって男共をムラムラさせてしまう美貌を兼ね備えた優しいお、ね、え、さ、ん!』


「あふ? そんな人知らないよ?」


 ガクッと鳥が頭を垂らしてしまう、何か見てて可哀相になっちゃった。


『もう! 私よ、マギサよ!』


「ええ! マギサなの! え? え? だってマギサ今巨人さんと戦ってんだよ? それなのにどうしてここにマギサがいるの? あふ? それに鳥さんだし…………まさかマギサの隠し子!」


『何でそんな結論に達するのよ! 私はマギサの心の欠片! 忘れたの? 亀裂を見付けたからみんなを呼び戻す為に鳥を飛ばしたでしょうマギサ本体が! その鳥が私! 言うなればマギサのコピーみたいなものなの! 分かった!?』


「あふ、早口で聞き取れなかったからもっかい説明して!」


 この後クチバシで突っ突かれた。


『ふざけましたごめんなさい、は?』


「ふざけましたごめんなさい……ぼく真面目だったのに」


『とにかく状況を見た限りじゃちょっとピンチみたいね? まさかリーゼスが生きてたなんて』


 マギサ(鳥)はマギサ(本体)を見詰めながら戦いを見ていた、どうしたものかと悩んでいるのだろう。


「ねえマギサ、ぼくに考えがあるんだけど」


『……貴女の考えって嫌な予感しかしないけど、一応言ってみてくれる?』


「えっとね、巨人さんは死んだ筈なのに生きていたんだったらさ、もう一回消滅させてみたら良いんじゃないかな? ぼく消滅させるの得意だよ!」


『何気に怖い事をサラッと笑顔で言ったわねスルルちゃん……まあ、現段階で奴がどんな力を隠しているのか分かって無いからその考えは有りかもね……』


 未だにマギサは戦っている、見た限りでは互角に思えるけど気の所為か巨人さんは余裕そうな顔をしていた。

 マギサ一人じゃ不安だよやっぱり、ぼくが頑張らないと!


「マギサ、君の本体に伝えてくれないかな? ぼくはこれから一発の炎弾を撃つ、それは合図だって……その合図を見たら直ぐに神社から離れる様に伝えて欲しい……ぼく、下手したら神社ごと巨人さんを消滅させちゃうかも」


『良いんじゃない別に? だってあの神社は私の物じゃないから。じゃあ作戦開始かしらスルルちゃん?』


「うん! ぼく張り切っちゃうからね!」 


 良し、頑張るからね! 応援しててよゲイズにルベス! ぼくだってやる時はやる子何だって教えちゃうから!

 巨人さんを消滅させちゃおう大作戦が決行されようとしていた。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ