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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第八章 彼女達は地獄を目指す
36/75

『縦』の者『横』の者

 

 謎の気配を追っていたぼくは隣り町までやって来ていた、確かここはルベスが言っていたけど佐波峻の本来の家がある町だったと思う。病院の屋上で町を眺めているとやはり皆川真が暮らした町とは違うんだなと思った。

 町並みや風景が違うけど何と言うか匂いが違うと思う。

 人が育む優しい匂いが微妙に異なっている、本当に些細な違いだが番犬の鼻は普通の犬以上に敏感だ。


「空気悪いよね人間界って……でも温かくて優しい匂いが混ざってる。時々騒がしくて血生臭い匂いも目立つけど優しい匂いが多いかな」


 皆川真の町は今ちょっと血生臭いかな? 多分だけどあの敵の所為だよきっと。

 まいっかそんな事は、今は四つの気配を追わなくちゃ。

 素早く建物の屋上を足場として飛び回り気配に近付いて行くとそれを強く感じる距離に来たらしい。

 近い、もう目と鼻の先だと思う。ここからは慎重に移動しないと。もしぼくの気配を感知出来る者がいたら厄介だ。

 そうなれば追跡している事がバレバレで今だってもしかしたらぼくを警戒しているのかも。


「慎重にならなきゃ。ぼくファイト、ぼくファイトだよ」


 とその時四は三へと変化した。


「あれ! 一つ気配が消えちゃったよ! どうなってんの!」


 現在自然公園の中であり傍らには池がある訳だがそこで気配を追っていたのに一つ消えてしまう。

 まさか気配を消せる? だったらどうして一人だけが消えちゃうんだろう?


「ん~? あふ、分っからないよ~!」


「何が分からないのかしら?」


「あふ! びっくりした、だ、誰!」


 突如声がぼくを驚かせた、一体誰の声?

 背後より聞こえた声に視線を結ぶとそこに女が立っていた、気配を探るとあの四つの内の一つと同じだ。


「誰ってそれは私の台詞よ。貴女こそ何者? 私達を付けていたでしょう? それに貴女人間じゃないわよね?」


「あふ! バレちゃった、何で? まいっか、そんな事より君も何者なんだよう! 君だって人間じゃないよね!」


「……へぇ、分かるんだ。何を思って付けたのかは知らないけど私達の邪魔をするのなら貴女を滅するわよ?」


「ぼくは負けないもんね! こう見えたってケロ……あ、いけないいけないまた正体をばらすとこだった、またルベスに怒られちゃうよ」


 良く正体を人間に平気でばらしちゃうからいつもルベスにしかられるんだ。

 いけないいけない、ぼくファイトだよ。


「何をごちゃごちゃ言ってるのよ……貴女の狙いは何?」


「ぼくの狙い? ……うんとね、えっとね…………どうしたら良いかなあ? ねえ君はどう思う?」


「はぁ? 何言ってるのよ貴女は? ……えっと、私の質問無視しちゃってるし」


「えっとね…………ぼく困ってるんだあ、助けてよ」


 付けて来たのは良いけど知らない奴だったしどうしたら良いんだろう?


「はぁ? 何で私に訊いて来るのよ……ああもう何だか話が噛み合ってない! 調子が狂う! 困ってるのは私よ! 貴女は誰なの!」


「ぼくスルル! よろしくね!」


「うんよろしく……じゃないわよ! ああもう疲れるわね……とにかく貴女は何故私達を付けてたのかを話してくれない?」


「えっとね、困った事が起きてね? 手掛かりがないから付けたんだよ」


 そう言ったら彼女がうなだれてしまった。あれ、大丈夫かな?


「……何なのよこいつは、話すだけで疲れるなんて。今の話だって肝心なところが抜けてるし……もうお姉さん困っちゃう」


「困ってるのはぼくなんだよう! ぼくはどうしたら良いんだよーーう!」


「私が知る訳ないでしょ! ああもうこいつ本当に変な奴!」


 そんなグダグダな展開に終止符を打つ事態が、残り三つの気配がこっちに移動を開始した。

 ああだこうだと言い合っているとその三つが姿を現す。


「……ほぇ?」


「……にゅにゅ?」


「……あふ?」


 一瞬理解が逃げ出した、直ぐに捕獲して頭を正常化へと導くと答えはすんなりと出る。

 新たに現れた三人の内二人に見覚えがあるのだ、見覚えがあるからこそ驚愕が付いて来てしまう。


「にゅにゅ! スルルだ!」


「ほんとだ! スルルだ~!」


「……ネリスにエティオ? …………あふ! ええええええ! な、何で! 何で! 何で二人が人間界にいるんだよう!」


 ヘルヴェルトを統治する地獄王と死神スミスの子供、エティオとネリスが目の前にいた。

 おかしいおかしい、だって二人はヘルヴェルトの王宮に居る筈なのに何で人間界にいるの?


「な、何で二人は人間界にいるの? ぼく分かんないよ!」


「にゅ~、はなすとながいはなしになっちゃう」


「ぼくらはおうきゅうからぬけだしたんだよ! ただそれだけ!」


「抜け出した!? だ、ダメだよそんな事しちゃったら今頃王宮は大騒ぎだよう!」


 ぼくが気絶している間に大変な事態になっていたなんて。

 もしかしたらスミスは今頃探し回ってるかも知れない!


「ち、ちょっとちょっと! お姉さんを置き去りに話を進めないでよ! ネリスちゃん、エティオくん、彼女は誰なの?」


「にゅにゅ、あのねこのひとはケルベロスのスルルだよ! おかあさまのしんゆうなんだ~!」


「え! じゃあヘルヴェルトの者って事? ……それにケルベロスって番犬よね確か」


 えっとえっと、ルベスとゲイズが封印されて、それから拐われた(と思うんだけど)皆川真と人間界に気配のない佐波峻。

 何だかごちゃごちゃして来て混乱して来たよ、みんな何処に行っちゃったの?

 それにネリスとエティオがここにいるなんて。

 ぼくもう頭がパンクしちゃうよ!


「ぼくこれからどうしたら良いんだよう! 分からないよ!」


「にゅにゅ! いきなりさけばないでよ! にゅ~ビックリしたよ」


「スルル~、なにをなやんでるの?」


「また混乱してるの? はぁ、お姉さん本当に疲れちゃうし困っちゃうよ……」


 グダグダな展開の再開、しかしそれをなだめたのは最後の気配。


「とにかくみんな落ち着こうじゃないか、ほら赤髪の娘もマギサくんも落ち着いて」


 それから数分後、最後の気配の男、空人と名乗る人物により落ち着きを取り戻す事に成功したようだ。サングラスをした女、マギサとネリスとエティオも静まり返る。

 とにかく何があったのかをぼくらは話し合う事に。

 近くに丁度良くベンチがありそこに座り話し合いを始めた。


「……なる程、赤髪の……えっとスルルくんだったね? 君はヘルヴェルトの住人でヘルズゲートの番犬、真の監視と守護を地獄王より命じられていたんだね?」


「うん、でも負けちゃったんだ女二人に……それの所為でルベスとゲイズが出て来ないんだよ」


「ケルベロスは三つ頭があるからそれぞれに人格が備わっている訳か……ならその女二人、悪魔達が何ならの術で人格を封印してしまったのだろうね。幸いにもスルルくんは助かった、訳が分からずに取りあえず妙な気配――僕達を追って来た、という経緯か」


 冷静に話をまとめてくれる人がいてくれて良かった、ぼくは馬鹿だから混乱するばかりでどうしたら良いのか分からなかったよ。

 でも真や峻、ルベスやゲイズを助けなきゃって思ったんだ。それだけは分かるよ。


「あのさ、二人は一体誰なの?」


「おっと紹介が遅れてしまったね、スルルくん申し訳ない。僕は皆川空人、皆川真の父親だよ」


「あふ! お、おっちゃんは真のパパなんだ! へ~! 初めて見たよ!」


「おっちゃんって……」


 あれ、何か悪い事言っちゃったかな? 真のパパが軽く凹んでる様に見えるけど。

 まいっか。


「じゃあサングラスの人は誰なの?」


「……私はマギサ、えっと何て言うか……」


「変わりに紹介しよう、彼女は悪魔達の元仲間だよ」


「何だそうなんだ……あふ? 元仲間?」


 元仲間って、まさかこいつも悪魔って事なの?

 ゲイズとルベスに変な事をして、それに真や峻を苛めた奴等と同一体?


「……君も悪魔なの?」


「……ええ、私は悪魔よ。弁解何かしないわ、私は汚れた悪魔……」


「ちがうもん!」

「ちがうもん!」


 突如として幼い声が重なって響く、それはネリスとエティオだった。

 真剣な眼差しを浮かべて訴えた。


「にゅにゅ! おねえたんはけがれてないもん! きれいだもん! セ、セクシーなんだもん! わたちにやさしくしてくれたもん!」


「おばちゃんはたたかってくれたもん! ぼくらとあそんでもくれたもん! わるものなんかじゃないよ! おばちゃんはわるくないもん!」


「……ネリスちゃん、エティオくん……」


 必死の訴えは彼女がどんな奴かを教えてくれた様な気がする。

 こんなにも二人が彼女を慕っている、これだけで答えは十分じゃないのだろうか。


「ありがとうネリスちゃん、エティオくん、その気持ちだけで嬉しい」


「にゅ~……おねえたんはわるくないもん、ほんとのこと、いっただけだもん」


「おばちゃんからみょうなちからをかんじるけど、わるものじゃないってしってるもん! だからスルル、おばちゃんをいじめないでよ!」


「……うん、分かったよ。ネリスとエティオがそこまで言うならぼく何も言わないよ。さっきは睨んでごめんなさい」


 深々と頭を下げる、きっと何か事情があるんだ。ぼくと同じ様に。

 ぼくは大切な人達を助けたくて必死だったから周りが見えなかったんだ、悪魔でもきっと優しい奴だっているよね?


「頭を上げて? 私は気にして無いから、えっとスルルさんだったわね?」


「ぼくの事はスルルちゃんって呼んで欲しいな~……えっと、おばちゃんさん?」


「私はマギサ、おばちゃんじゃないの!」


 互いのわだかまりが薄れていったところである疑問が浮上した。

 どうして真のパパがマギサとエティオとネリスと一緒にいて、何を目的に移動していたのか、それを問い掛けてみる。


「僕はね、パルテスなんだよ」


「あふ? ぱるてすってどっかで聞いた事があるなぁ~? んーーと何だっけ? ルベスなら知ってるんだろうなあ」


「簡単に言うと『横』の管理と監視を行っているんだ」


「ふ~ん、『横』の関係者なんだ。あれ、じゃあ真は……ああそっか、だから真にあの力があるんだ~! へぇ、勉強になっちゃったよ」


 真パパが『横』の者か、ぼくは『縦』だから余り関係は無いけどね。

 まいっか細かい話は。


「まいっか、真パパが『横』の者でも。で? みんなで何をしようとしてたの?」


「僕らはヘルヴェルトへ行く為に亀裂を探していたんだ」


「亀裂ってヘルヴェルトへの道を探しているの? どして?」


「今真と峻くんがヘルヴェルトにいるんだよ、悪魔達もそっちに行ってしまった」


 ヘルヴェルトに真と峻がいるの! しかも敵までが向こうに行っちゃってるなんて。

 そっか、だから亀裂を探して向こうへ行きたい訳か。


「スルルちゃん、貴方はケルベロスなのよね? だったら向こうへの道を開けないかな? 私はどうしても佐波くんを助けたいの、お願い!」


「無理だよう、ルベスとゲイズとぼくが力を合わせる事によってヘルズゲートを開けるけど今は二人共返事してくれないもん。ぼくらは三つの人格を持つ番犬、三人が揃って始めて一人前何だよ……今のぼくは半人前でも無いんだよ?」


「……そう、なの。ケルベロスって聞いたからもしかしたら直ぐにでも向こうへ行けると思っちゃって……ごめんなさいね」


 がっかりさせちゃったな、ぼく何だか歯痒いよ。二人がヘルヴェルトにいるのならぼくもそこへ戻らなきゃ。

 そうしたら死神王に会えばルベスとゲイズを何とかして貰えるかもしれない。復活したら真と峻を助けに行くんだ!

 ようやく今後のプランが出来たのに足止めになっちゃうなんて。


「二人共気を落とさないで欲しい。この町に極小だが亀裂の気配を感じる、……ただ小さ過ぎて場所が分かり辛いのだが」


「じゃあそこを見つけられたらヘルヴェルトに帰れるんだ! ぼくも探すの手伝うよ!」


「それは有り難い、是非僕らの力になって欲しい」


 よし、亀裂を見つけて向こうに向かうぞ! そうしたらみんなを助けられるよ。

 でも亀裂は何処にあるんだろう?


「あふ、亀裂は何処にあるの?」


「はぁ……あのねスルルちゃん、それを今私達は探しているところなのよ?」


「あそっか、じゃあ頑張ってね!」


「て、貴女手伝うって言ったじゃない! ……ああもうスルルちゃんと話してると疲れるわね、お姉さん困っちゃうわ」


「にゅ~、スルル、もっとしっかりしなきゃダメだよ?」


「うん、ネリスのいうとおりだよ! おばちゃんをみならわなきゃ!」


 子供に怒られちゃったよ。何だか自分が情けなくなっちゃう、ぼくしっかりしなきゃダメだ。

 ぼくファイト、ぼくファイトだよ!


「とにかくもう一回言うわよスルルちゃん、この町の何処かに亀裂があるからそれを探すのよ? はい復唱して」


「あふ! えっとえっと、この亀裂の何処かにある町を探しちゃうんだよ!」


「逆よ逆! この町の何処かにある亀裂だってば!」


「うん! 逆にある亀裂の逆を探すんだね!」


 あれ? 何か頭を抱えて頭がガクッと下になっちゃったよマギサは。

 ぼく変な事を言っちゃったのかな?


「マギサ~? どうかしたの?」


「もう! だから亀裂の中にある逆を探すの! …………はっ! ああもうスルルちゃん菌に感染しちゃった!」


「え! ぼく何か菌を持ってたの! た、大変だ! 直ぐにぼくを何処か密室に監禁しなきゃ菌がばら蒔かれちゃうよ!」


「…………マギサくん、取りあえずスルルくんは分かって無い様だから二人で行動した方が良いと思う」


 良く分からないけど何故かサングラス越しに悲しげな目が見えた気がした。

 おかしいな、ぼく一生懸命に覚え様としただけなのに。


「ううっ、スルルちゃんは良い娘何だろうけど……疲れちゃう」


「疲れたの? 大丈夫? 休んだらそこら辺で、ぼく一人でも大丈夫だよ! ぼくが頑張ればマギサは休まるね!」


「スルルちゃんに一人で行動させるのが一番大変なの! はぁ、私おみくじ引いたら凶ね絶対」


「おみくじ? あ、人間界で運命を占う奴だね! この前引いたらぼく大吉だったよ!」


 あれあれ? また頭を抱えて頭がガクッて下がっちゃった。

 んん、会話って難しいね。


「とにかく手分けして探そう。マギサくんとスルルくんはペアで、エティオくんとネリスくんは本当に二人で探せるのかい?」


「にゅにゅ、ませて! わたちがみつける!」


「ぼくがさきにみつけんだい! はやいものがちだよ!」


「にゅにゅ! エティオまってよ~!」


 エティオとネリスはあっと言う間に姿を確認出来なくなった、さすがスミスと地獄王の子供だな。

 良し、ぼく達も頑張らなきゃ!


「では僕も探しに行って来る、二人共頑張って」


「うん! 真パパ、ぼく頑張るよ!」


「…………不安よ本当に」


 真パパも探しに行ってぼくらだけがポツリと残ってしまう、これから頑張るぞ!


「よろしくねマギサ! 頑張って逆の町を探そうね!」


「…………はぁ、だから亀裂を探すんだってば」


「あふ! あそっかぼくったらうっかりだったよ、亀裂の逆を探すんだったね!」


「……はぁ、もうそれで良いわよ」


 何だかまたうなだれているみたいだけどどうしたんだろう? まいっか、そんな事より亀裂の逆を探さなきゃ。

 数歩歩き出した途端に足が絡まってまたコケてしまう。


「あふ! うう、また何も無いところで転んじゃったよ~」


「もう何をしてるのよ……ほら手に掴まって」


「うん、ありがとう。マギサは優しいんだね」


 彼女に手を借りて起き上がったのも束の間、奇跡なのか運命の悪戯かまたまた足が絡まってコケてしまう。

 今度はマギサも巻込んで。


「きゃ!」


「あふ! ……うう、またコケちゃったよう~痛……くないよう? あふ?」


「痛たたた……」


 何だか地面が柔らかいな、あれ、何だろうぼくの頭を柔らかいものが包んでるよ? 顔を上げ柔らかいものが何なのか調べてみるとそれはマギサのふくよかな胸だった。

 そっかマギサを下敷きに転んじゃったんだ、だから痛くなかったのか。

 それにしても大きなおっぱいだなあ、揉んでみようかなあ。

 と妙ちくりんな事を思い付き即行動を開始し、ぼくの両手がマギサのふくよかなそれぞれの山を掴む。

 凄い弾力、凄く良い形をしているな。


「ひゃ! な、何をしてるのよスルルちゃん!」


「おっぱい揉み揉みしてんだよ! マギサはすっごい美乳で弾力もあって上質なおっぱいだね!」


「な、何を言ってるのよ! 早く退かしな……ひゃい! あっ、んん! ち、ちょっと待って……ん……あっ、だ、駄目、そこは……らめ」


 思う存分胸を堪能しているとマギサの顔が真っ赤っ赤、色っぽい声も漏らしてる。

 うん、揉み応えがあるよ!


「ぼくね、レズじゃないけど女の子のおっぱい揉むの大好きなんだ~! ヘルヴェルトにライバルがいてね、不覚にもぼく揉まれちゃってね、ライバルのは揉めなかったな~。でもね! ライバルが唯一揉めてない奴のおっぱいをぼく揉み揉みしたんだよ! 悔しそうな顔してたなあ」


「そ、そんなのは……どうでも……良い! やめなさ……あん!」


 うんうん、良い声で鳴くな、これだから揉み揉みはやめられないよ!


「んん、あっ…………あ! ち、ちょっと直に触らない……ひゃう!」


「ぼ、ぼく、何だか火が点いて来ちゃったよ! ほらここをこんなにしちゃって!」


「ち、ちょ……マジでダメ! これ以上は……んんっ!」


 この時気が付いて無かったけど周りに人だかりが出来ていた。

 ぼくはマギサの可愛らしいくてやらしい声にヒートアップしていてマギサしか見えて無い。


「うわあレズショーだよ、AVの撮影か?」


「お姉様が妹に苛められる、そんなシチュエーションかにゃあ!」


「良し、そこを攻め……ああ違うって!」


「やだ不潔よ……警察に電話した方が良いんじゃない?」


 様々な声が飛び交っているがぼくには聞こえない。

 しかしマギサが人だかりに気が付いたらしい。


「ぎゃあ! スルルちゃんストップ! みんなが見てる!」


「ぼくまだまだ揉み揉みするんだい! ぼくファイト、ぼくファイトだよ!」


「あん! …………この、いい加減にしろぉおおおお!」


 爆撃に似た衝撃がぼくに襲いかかった、その直後頭に凄まじい痛みが発生する。

 あまりの痛さに両手で痛む頭部を押さえて背中から地面に落ちた。


「あふ! あふあふあふ! 痛いよう! 死んじゃうよーー!」


「……いい加減にしなさいよスルルちゃん、私のバストは貴女のおもちゃじゃない! 私のバストは○○○○専門よ!」


「あふ! マギサが卑猥な言葉を言った! なら自分も楽しんでたんだ、だったら殴らなくても良いじゃん!」


「楽しんでないわよ馬鹿ぁ! 私が楽しむのはね○○○や○○○○や○○○○○○の時だけなんだからぁああああああ! って、恥ずかしい事を言わないで!」


 自分が恥ずかしい事を言ってるじゃん。と周りの人々は一致して思った。


「ふんだ! ぼくなんか○○○○○で失神しちゃうもん!」


「な、何てマニアックなのよ貴女は! ……私最初からそうじゃないかって思っていたけど核心に十分過ぎる証拠ねそのセリフ……スルルちゃん、貴女ってお馬鹿さんでしょ? しかも物凄く!」


「あふ! ぼくが馬鹿だってバレちゃった! どうしよう……まいっか! うんぼく馬鹿何だあ! エッヘン!」


「何で偉そうにしてるのよ貴女は! 誰も褒めて無いわよ! ああもう気が狂っちゃうわーー!」


 凄まじい口論は続き怒鳴り疲れる頃には何故か周りで拍手が起こる程ぼくらの口喧嘩が面白かったらしい。

 みんなに応えてぼくは笑顔でピースしてみると何故か笑われた、何でだろう?


「はっ! こんな事をしてる場合じゃなかったわ! もうスルルちゃんの所為で下着が……じゃ無かった、とんだ足止めよ!」


「あふ? 下着が?」


「な、なんでもない! とにかく亀裂を探すのよ! このお馬鹿!」


「あふ、亀裂って何だっけ?」


 そう言うと何故かマギサが泣きそうな顔になっちゃった。

 あれ、ぼくまたまた何か変な事言っちゃったかな?


「もう本当にどうにかなりそうよ……もうとにかくとにかくとにかくと、に、か、くぅ! 私に付いてらっしゃい! 付いて来るだけでいいから!」


「うん分かった、じゃあ町の何処かにある亀裂を探しに行こう!」


「ええ! って、貴女ちゃんと理解してるじゃない!」


「今思い出したんだ~、ぼく忘れっぽいからね」


 そんな訳で野次馬を退散させてからぼくらは町を探し回る事に。これからが大変だ、頑張って探さなければならないから。

 ヘルヴェルトに帰らなきゃ何も出来ない、だから頑張らなきゃ、いっぱいいっぱい頑張らなきゃ。

 ぼくファイト、ぼくファイトだよ!


「あ!」


「どうかしたのスルルちゃん! まさか亀裂を見つけた?」


「ぼくお腹減っちゃった、ご飯にしようよ!」


「…………本当にいい加減にしてよ」


 幸先不安の中ぼくらは町を飛び回る。


  



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