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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第六章 炎雷のアトラ
27/75

騎士ミラエルはバレバレ

 

 突然の出来事が多発した為まだ混乱が頭の中で渦巻いているが、何とかそれは治まったと思う。

 三王会議に出る為に急いでいたがスミスとリリリは空から現れた地獄の住人との戦闘で疲れに蝕ばまれていた。

 早い話がしばらく休息を取る、と言う事だ。

 何故かあの怖い騎士と一緒に。


「……人間、儂の顔に何か付いておるのか?」


「い、いえ、何も……」


「声が小さいわ! 貴様はそれでも男か! 人間だろうと男なら胸を張り背筋を伸ばさぬか! 分かったか下衆!」


「は、はい!」


 こ、怖い、見た目は二十代前半くらいなのにおっかない。

 俺こいつが苦手かもしれない。


「まああら、佐波峻はミラエルが苦手みたいねえ? それにリリリも」


「うううーーっ! そ、そんな事ないのですよう! リリリはどんな奴とも仲良し小よしさんが得意なんですよう! だから……」


「おしゃべりなガキじゃな、やかましい!」


「うううーーっ! ごめんなさいですよう!」


 リリリもダメだったか。


「ミラエル、佐波とリリリを苛めるなよ、オレの仲間何だからな」


「人間がかスミス? 分かっておろうが、ヘルヴェルトに人間が入り込んだ時点で罪じゃ、始末しても文句は言えぬぞ?」


 と剣を取り出しこちらを睨む、それだけで縮こまってしまう自分は情けないがミラエルは恐ろしいのが悪い。

 ちくしょう自分が本当に情けない。スミスと言いミラエルと言い、理不尽な事が多い。


「その剣綺麗ですね、金色で幻想的な感じが……」


 畏縮を体感していると何とまこちゃんがミラエルに話掛けているではないか。

 嫌々、命知らずと言うか何と言うか。


「儂の剣が美しいのは当たり前じゃろうが! これは我が誇り、我が命じゃ!」


「ああ、だから美しいんですね」


 怒鳴る様に話すミラエルに平然と話すまこちゃんが驚きだった。まあ、まこちゃんも怒ると怖いからミラエルが平気なのかもしれない。

 て、あれ? 見間違いだろうか、一瞬ミラエルの頭から伸びたツノが動いた様な気がする。


「その剣名前とかあるんですか?」


「名前じゃと? …………スーパーエックスカリバーン・改って言うのはどうじゃ!」


 名前決まって無かったのか、それにパチモン臭い名前はどうだろう。

 ネーミングセンスが無いのかミラエルは。


「おい下衆、儂を馬鹿にした様な顔をしておるな? このスーパーエックスカリバーン・改を使いこの下衆を微塵切りに……」


「すいませんでした! 勘弁して下さい!」


 ダメだ、変な事を思ってもダメだ。勘が良過ぎる。


「あははは! 人妻スキーしゅんがいい気味ですよう!」


「うるさいガキじゃのう、貴様こそ儂の剣で切り刻むぞ!」


「うううーーっ! 再度ごめんなさいですよう!」


「ふふふ、ミラエルもうその辺で良いでしょう? それよりも何故貴女がこんな辺境の地にいるのか教えてくれないかしら?」


 ミラエルは王宮で騎士団長と親衛隊長をも勤めている、そんな奴が何故こんな辺境の地にいるのかが不明だ。

 いやいや、ミラエルが恐ろしくてそんな事にも気が付かないとは。


「儂は地獄王アフトクラトル様の命によりヘルヴェルトで起きている不可解な現象を調査すべく色々と回っておったのじゃ。調査を終え王宮へと戻る途中、そこの下衆を見掛けてな、何故人間がここにいるのか問い質そうと邪魔な肉玉共を退けてやったのじゃ」


「……じゃあ俺を助けたんじゃ」


「何故貴様の様な下衆を儂が助けねばならぬ! (おご)るなよ下衆め!」


「ごめんなさい!」


 助けてくれた訳じゃないのか、そりゃそうか、得体の知れない人間を助ける奴はいないか。しかし結果的には助けられた、ならば感謝はしておく方が良いだろう。


「アトラからの命令で動いていたのか。で、何か分かったのかミラエル?」


「いや、成果は無に等しいのだスミス。ただ調査をして分かったのはAからDまでの住人が何者かに操られている、と言うところまでじゃ。これは予測じゃが、S級の住人は操れぬのじゃろう、知能が低い住人が操られているらしい」


「まああら、それだけでも有力な情報よ? さすがミラエルねえ、剣だけじゃなく頭も冴えてる、出来る女は違うわねえ」


 その時だった、ミラエルのツノがまた動いた様に見えた。

 また目の錯覚か?


「儂を褒めても何も利点は無いぞ死神王様」


「あははは、照れるミラエルは可愛いな」


「何じゃとスミス! 儂がいつ照れておるのじゃ!」


 照れているだと? さっきから眉間にしわを寄せたまま怒の表情を崩して無いのに。今だって鋭い眼光をスミスに放っているのだがな。

 訳が分からなくなってしまい難しい顔をしていたのだろう、スミスが小さい声でこっそりと耳に囁く。少しくすぐったかったのは内緒にしておこう。


「誤解するなよ佐波、ミラエルは怖い奴何かじゃ無いんだぞ?」


「それはどう言う意味だ? あんなに眼光を鋭くして眉間にしわ寄せているのにか? リリリまで怖がってるじゃねぇか」


「あはは、だったら教えてやるよミラエルの秘密をな」


 ミラエルの秘密だと? それが分かれば怖い奴では無いと証明出来るとでも言うのか? だったら聞いてやろうじゃないか、苦手なミラエルを克服出来るかも知れない。


「教えてくれスミス!」


「分かった……但し人間界に戻ったらアンパンを奢れ」


「抜け目無い奴め、仕方無いそれで手を打とう」


「良いか佐波、ミラエルを知るにはな……ツノが肝心なんだ!」


 ツノ? 確かにミラエルの頭からは二つの黒いツノが生えているがそれが一体何だと言うのか。

 そう言えば、先程から見間違えかと思っていたがミラエルのツノが若干動いている。まこちゃんと会話したいるミラエルを観察してみる。


「ミラエルさんて誇り高い人何ですね? 私そんな方に会った事無くて」


「ふん、人間の娘如きに言われても嬉しくは無いぞ!」


 まこちゃんに睨みを利かせながらそう述べたが頭のツノ全体が上下に揺れる、結構早い。


「佐波、今ツノが上下に動いただろ? あれはな、喜びを表しているんだ!」


 ツノが上下で喜びだと?


「もっと見せてやる、ミラエルに話し掛けてみろ」


「な! マジかよ……よ、よし、あ、あのミラエルさん……」


「何じゃ下衆が! 気安く話掛けるな!」


 ツノを見ると前に突き出していた先端が上を向いていた。


「な、なんでもないです!」


「なんじゃと? 理由もなく話し掛けるでないわ!」


「ごめんなさい!」


 怖かった。


「佐波、あれは怒りを表している、本当に怒ってると言う訳だ。どうだ佐波面白いだろミラエルは? どんなに恐ろしく怖い顔をしていても本当の感情はツノでバレバレなんだ!」


 何と、それは……面白い。


「下衆、先程からなんじゃ、何か儂に話があるのではないのか?」


 ツノは上を向いている、つまり本当に怒ってると言う訳か。

 さて試してみようかミラエルのツノを。


「いえ、俺もその剣がすっごく格好良いなぁと思いまして、高貴な騎士が扱うに値する剣だと感心しました!」


「黙れ下衆! 貴様なんぞに褒められても嬉しくは無い!」


 恐ろしい顔だったがすかさずツノを視界に納めた、すると激しく上下に揺れていた。

 つまり剣を褒められて嬉しいって事何だろうな。


「ミラエル……さんは強いだけでは無く美しくて綺麗だから余計神々さが溢れてますよ!」


「下衆が何を口走っておるのじゃ! 儂は女なんぞ捨てておるわ!」


 ツノは上下に揺れて、あれ? 黒いツノが赤くなっているぞ?


「スミスあれは?」


「ああそのままだ、恥ずかしい時や照れた時にツノが赤くなるんだ」


 つまり恥ずかしいが嬉しい訳だ。何だかこうしてツノが動くのを見ていると動物みたいだな。

 例えるなら犬かな、表情から犬の感情は変わらないが尻尾で理解出来る。犬と思うとミラエルが可愛く思えて来たぞ。

 いやいや、良い事を教えて貰ったな、もうこれならミラエル何て怖くない。犬と思えば可愛く思える、良かった苦手が克服出来そうだ。

 と安堵を味わっていると妙な異変に気が付いた。まこちゃんが少し頬を膨らませそっぽを向いているのだ、どうやらご機嫌が斜めになった様だがどうしてだ?


「ま、まこちゃん?」


「……何?」


 少し刺を感じる。


「えっと……怒ってる?」


「ふんだ、私が怒る訳ないんだよ。そりゃあミラエルさんは美人で綺麗な人だもんね、男の人が鼻の下を伸ばすのは無理ないもんね!」


「人間の娘、儂が美人だと! ふざけるな! 騎士に美人な要素など不要じゃ!」


 と言いつつ真っ赤なツノが上下に。いや、それよりもどうやらまこちゃんは俺がミラエルに綺麗とか言った事に拗ねたらしい。


「まああら、若いって良いわねえ?」


「皆川が拗ねてるぞ、可愛いな!」


「ううっ! まことヤキモチ焼きですよう!」


「ふん、嫉妬など未熟な証拠じゃ!」


 茶茶が左右から放たれまこちゃんに集中して行く。するとますます不機嫌に。こりゃまずい、これ以上追い込んだらしばらく口を利いてくれなくなるぞ。


「ごめんまこちゃん、許してよ、ね?」


「……別に拗ねて無いから……本当に違うから!」


 頬を赤らめているのを見ると可愛くてしょうがない、いつも二人きりの時にしかやらない頭撫で撫でをして謝った、まこちゃんはそれがお気に入りなのだ。やっていると機嫌が治ってきた、人目なんて俺の敵では無い、死神と騎士が冷ややかな視線なんか気にしない。

 柔らかな髪を指で梳きながら撫でてゆく、その度にくすぐったそうに笑う。こうしている間は嫌な事を忘れる事が出来る、そしてこれから挑む壁に立ち向かう勇気を補える気がするのだが、あながち間違いでは無いと信じたい。


「まああら、キスは見られるの恥ずかしいのにイチャイチャは恥ずかしくないのねえ?」


「俺はどっちも恥ずかしくない! まこちゃんとイチャイチャする為なら何だってやってやるさ!」


「なっ、変な事言わないでよ! 全く……あ、撫で撫での手は止めないで」


 甘える彼女は可愛いな。 


「さて、そろそろ移動するかな。佐波、皆川、もう出発するぞ?」


「ううっ、もう出発ですか先輩、リリリはまだちょっと疲れてますからもう少し休憩したいですよう」


「ガキ、わがままを言うとは何事じゃ! さっさと立たぬか!」


「うううーーっ! み、三度ごめんなさいですよう!」


 ツノを見ると上に突き出している、本気で怒っている証拠だ。

 ツノでミラエルの気持ちが分かる事はリリリに内緒にしておこう、そっとスミスにそう伝えるとすんなり了承を得た。あの生意気なリリリが怖がる姿は面白いからと鬼畜の様な考えだがあいつには良い薬だ。

 それにしてもミラエルはツノで気持ちが分かり怖くない、と思ったのだがやはり怒鳴られると正直恐ろしい。ツンデレ何て言葉があるがミラエルのはツンでは無くむしろ殺傷能力すら感じてしまう。

 お、ツンデレみたいに新しい単語を考えてみたぞ。

 ツンでは無く普段から殺気が強いのでサツ、でもツノで感情はバレバレ。なので二つを合わせ『サツバレ』何てどうだろうか? ツンデレみたで良いじゃないか。新ジャンル確定だ!

 と、ミラエルの秘密と今までの思考をまこちゃんに伝えてみる。


「……と言う訳なんだ、で、どうかなサツバレって良いと思わないか?」


「そうだね、ツンデレとかイマイチ分かんないけど、私の感想は……ツンデレを(もじ)っただけじゃない? オリジナリティーが足りないと思うよ?」


 自信あったんだけどな、ダメなのかサツバレは?


「さてと、じゃあオレが皆川を運ぶ、リリリは佐波を頼むな?」


「了承ですよう先輩!」


「ふん、飛べぬとは人間は不便な生き物じゃな、やはり下等種族じゃのう」


 何やら嫌みらしい事を言われたが、まさか俺達を切り刻めなかったから拗ねていやがるのか? どんなに本当の感情がツノで分かったとしてもミラエルの剣に対抗など出来る訳が無い。

 剣の軌道が見えない何て早すぎだ。


「ん? 人間は飛べないってミラエル……さんは飛べますか?」


「何じゃ下衆、儂を馬鹿にしておるのか? 我が祖先は竜! 鳴き声は世界を轟かせ、吐く炎は形を奪う。雄々しき翼は空を支配する生物の上位種じゃ! その子孫たる儂が飛べぬ訳があるまい!」


 一呼吸する間も無くミラエルの背から翼が生える。

 それは赤々と力強い色に染まった空を飛ぶ一部。


「どうじゃ下衆め! この真紅の翼は! 儂の自慢じゃぞ!」


 上下に揺れるツノが自慢話だと物語っていた、何とまあ嬉しそうに話しちゃって。不意にあやす様によしよしと褒めて喜ぶ犬の映像が脳内で上映されてしまう。


「やっぱりミラエルさんは凄いですね!」


「当たり前じゃ!」


「まああら、佐波峻はミラエルに慣れたみたいねえ? 良かった、良かった……後は一度もお目にかかった事のないミラエルの胸を揉めたら良いのにな」


 ソフィーネオの最後の言葉が聞き取れなかったが、いつまでも休んでいたらダメだろう。

 ようやく王宮に向けて空へと羽ばたく。


「おいリリリ、落とすなよ?」


「ううっ、生意気ですよう変態しゅんめ、今しゅんの命はリリリの手に委ねられている事を知るですよう! 手を放したら真っ逆様でグチャグチャ決定ですよう!」


「そんな事したら……リリリがミラエルの悪口言っていたとミラエルに言ってやるぞ?」


「うううーーっ! こ、この卑怯者が! ですよう!」


「儂が何じゃと?」


 殺傷能力を孕んだ睨みが焦がす勢いでこちらを凝視、数メートル離れて飛んでいたのだが何とも有用な地獄耳か、ツノも上を差している為下手な事は言えない。


「うううーーっ! な、何でも無いですよう! これっぽっちも妙な話をしていないですよう? 全然白々しい事だって無いですよう?」


「ガキ、先程からですようですようと媚びておるのか? 鬱陶しくて腹立たしいわ! 普通に喋れんのか!」


「しゃ、喋れます! …………ですよう」


 本気で鞘から剣を抜き出したからこれはやばいと直感が働く。

 やはりミラエルを怒らせたら怖い! ツノだって上を向いているし、マジで怖い!


「まああら、元気いっぱいねえみんなは、でもそれもお終い、ほら、王宮が見えて来たわよ?」


 ソフィーネオが指差す場所へと全員が視線を送る。

 それは想像していたものとは逸脱していた、王宮と聞けば西洋にある古城を連想するのが当たり前だ。

 しかしそこに聳えるのはそれに非ず、聳える等と表現も否。

 地上では無く上空にそれが浮かぶ、紅に光沢し蠢く。メートルよりキロに直した方が巨大さを表せるだろうか、空を埋め尽くすかの様にそれが空中に固定されている。

 紅に染まる巨大な球体。まるで小さな惑星だ。


「あれが……王宮なのか? 何か、城って言うよりむしろ……星に見えるぞ」


「ああそうだ佐波、あれが王宮なんだ。あれ全てが結界だ、異端なる者を拒むんだ……だからオレはここまでだ」


 ああそうか、スミスは王族に渡した子供に殆ど会えない。つまりは王族の拒絶、だから中へは入れない。

 寂しげに紅の球体を見詰めていた。


「これ以上立ち入れないんだ。済まないがミラエル、佐波を連れて行ってくれないか? こいつは空飛べないからな……」


「……本来ならこんな下衆に触れるのも苛立たしいが、お前の頼みなら仕方無いのう、下衆を渡せ」


 空中で俺はミラエルへと渡された、後ろから腕を脇に通し抱く様な形に。

 正直背中に当たる鎧が痛いが、我慢するしかないだろう。


「ソフ……お姉ちゃん、佐波と皆川を頼むからな? 何があっても守ってくれよな?」


「ええ、スミスとの約束は絶対に壊さない。この二人は必ず守るから」


「リリリも守りますですよう!」


 寂しげにスミスはハニカミを見せた。


「スミスちゃん、必ずまた会おうね?」


「ああ、そうだな皆川」


「じゃあちょっくら行って来るぜスミス? 無事にまた会えたらアンパン、な?」


「忘れるなよ佐波? ……気をつけてな」


 こうして友たる死神を残し紅の球体へと進む。

 この先に何が待ち受けているのか分からないまま……。





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