表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

やまがらは 鳴いた

作者: 桜田桂馬

森と緑と清流のある

やさしい

田舎に住んでいた


人々は

みんな 

名前で呼び合った


くんも なく

さんも なしで

名前だけを呼び合った


私の家の軒先に

一羽のヤマガラが

籠にいた


友からの

プレゼントだった


毎日、餌と水を与えた

彼は美しい声で

歌った

ツーツー・ピー

ツーツー・ピー


私は彼の歌声が

心地よかった

小鳥を愛していると

思っていた


そんな、ある日

保育園児の娘が

友達を連れて来た


彼女は言った

わーかわいい

でも

かわいそー


こーしてあげる

と ひとこと言って

籠の扉を

パーっと開けた


ヤマガラは

ぴゅーっと

飛びたち

すぐに緑の山に消えた


残された

鳥籠ひとつ

中の小枝が

揺れていた



私は

茫然と

飛び去った

方角を眺める


くれた友の顔が浮かぶ


逃がした、少女の

嬉しそうな顔


大空に羽ばたいた

ヤマガラ


夕方

逃がした女の子と

その母が来た


ごめんなさい って

言うのよ

その子の母は言う


ガンとそれを拒み

佇む女の子


そして

その目は

良い事をして

何が悪いの


自然に返しただけなのに って

いっているようだった


私が

本当にしたかったことを

彼女が

ちいさな女の子が

してくれただけだった


私は

本当は

そうしたかったのだ


友に

悪いからって

そうしなかった私


本当の愛を知ってる

その女の子は

母に叱られた


理不尽を

無言で抵抗した女の子


私は

言ってやるべきだったのか

あなたは

良い事をしたのよ。って


でも


言わなかった

言ってはいけないと思った



妻は彼女の母に言った

お気になさらないで って


親子二人で

帰って行く背中を見送り

私は

もの思いにふける


ヤマガラがないた

ツーツーピー

ツーツーピー


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ