王子と姫と、それから魔女
ある国に、とても優しいフィルという王子様がいました。
そして、フィルに恋をするレゼットという魔女がいました。
しかしフィルは、セリアという隣の国のお姫様が大好きです。
そしてセリアも、フィルのことが大好きなのです。
「どうしたら私の思いがフィルに届くかしら」
レゼットは一生懸命考えました。
数日後、フィルとセリアが結婚をするということをレゼットは知りました。
どうしても二人に結婚して欲しくないレゼットは、ある考えにたどり着いたのです。
「そうだわ、フィルをネズミに変えて私の側に置いておきましょう!セリアはフィルに嫌われるよう、猫に変えてしまいましょう」
レゼットは早速お城に向かいました。
そのころお城では、フィルとセリアが仲良くお喋りをしていました。
そこへレゼットがやって来ました。
レゼットは二人をネズミと猫に魔法で変えてしまいました。
そしてネズミのフィルを捕まえて、レゼットは家へと逃げます。
猫のセリアは慌ててその後を追いかけました。
家まで逃げてきたレゼットは、フィルをゲージの中へ閉じ込めてしまいました。
「貴女は魔女ですよね?僕をどうするつもりですか」
恐る恐る訪ねるフィルに、レゼットは答えました。
「私はレゼット、貴方のことが好きなの!」
その答えに、フィルは驚きました。
「私と一緒に暮らしましょう。貴方を守ってあげるわ」
レゼットの言葉に、フィルは頷くことは出来ません。
フィルはセリアと暮らしたいのです。
そこへ、やっと追い付いたセリアが来ました。
「魔女さんお願い、フィルを返して」
セリアは一生懸命頼みましたが、レゼットは聞いてくれません。
「貴女は猫よ。ネズミのフィルを食べるでしょ?フィルは私と暮らすのよ。私はもう一人ぼっちは嫌なの」
レゼットはフィルが大好きです。
でもそれ以上に、一人でいることが寂しいのです。
レゼットは、魔女だということで皆から嫌われていました。
だから、今までずっと一人ぼっちだったのです。
それを聞いたフィルは、レゼットに言いました。
「レゼット、一人が寂しいのなら、僕達と一緒に暮らそう」
フィルの考えに、セリアも賛成です。
「フィルは貴女にはあげられないわ。でも、一緒に暮らしましょう。私達が一緒にいてあげるわ」
二人の言葉にレゼットは大喜び。
二人を元に戻してあげました。
そして、ネズミと猫に変えたことを謝りました。
この国のお城には、仲の良い王子様とお姫様、そして魔女が住んでいます。
三人は、いつまでも仲良く暮らしました。
誰だって一人ぼっちは嫌ですよね?
でも魔女は、魔女だというだけで皆から嫌われて、ずっと一人だったんです。
あなたの周りに、一人で寂しい思いをしている人はいませんか?