《執着の罪》
――最初から、分かっていた。
欲しいと願ってはいけない立場が、
この世界には確かに存在する。
血筋。役目。生まれ。
選ばれなかったという事実。
それらはすべて、
「望まない理由」としては十分すぎた。
だから、欲しないふりをした。
守ると言い換え、支えると言い換え、
そばにいるだけでいいのだと、
何度も自分に言い聞かせた。
それが正しいのだと。それしか許されないのだと。
けれど。心は、理屈を聞かない。
選べないと知っているからこそ、
踏み出してはいけないと分かっているからこそ。
その存在は、
いつの間にか「失えないもの」へと変わっていた。
触れてはいけない。望んではいけない。
それでも、手放せない。
この手にある力が、
忌むべきものだと知っているからこそ。
自分が“ふさわしくない”と分かっているからこそ。
彼女の隣に立つ資格はないと、
誰よりも自分が理解している。
誰かを守るため。誰かを傷つけないため。
世界を壊さないため。
そうやって理由を並べながら、
本当はただ、彼女の視界から消えることを恐れているだけなのかもしれない。
選ばれないと分かっている。
選んではいけないとも、分かっている。
それでも。
この想いを、なかったことにはできなかった。
もし、この感情を手放せば。
きっと、自分は――
抑え込んできた“本質”と向き合わずにいられなくなる。
それを恐れている時点で、もう――潔白ではない。
これは、愛ではない。献身でも、忠誠でもない。
ただ。
欲しいと言えないまま、欲してしまったこと。
隣に立つ資格がないと知りながら、
それでも離れられなかったこと。
その矛盾を抱え続けるという、
――執着の罪。




