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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第一章 ASMR系Vtuberの私、ぼっちのはずがクラスの美少女に囲まれています!
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6.悠木ゆめめ、ストレッチ配信に挑戦する。リスナーさんがざわつく


「こんばんは、悠木ゆめめです。今日もみなさん、お疲れ様です」


 夜、11時。

 それが私の配信開始の時間だ。

 基本的には寝る前の配信を週に数回行うようにしている。

 毎日ってことはなくて、自分の余裕がある時に行う。

 

『おつゆめー』


『今日も配信ありがと』


『ゆめめ様』


『がんばったー』


 リスナーさんたちから、温かいコメントが流れてくる。

 私のチャンネルのリスナーさんたちは、みんな癒しを求めている。

 そのためか結構、治安がいいんじゃないかと自負している。


「それじゃ、今日は雑談配信を予定してたんですけど、やってみたいことがありまして。えと、ストレッチ配信なんですけど、大丈夫でしょうか? その、私と一緒にストレッチをやるっていう感じなんですけど」


 今日の配信枠は「寝落ち雑談」とテーマを設定していた。

 しかし、今日の体育の授業の時のストレッチがすごく気持ちよかったので、配信内容を変えようと思ったのだ。

 一応、2時間ぐらい初心者向けのストレッチ動画を見て、どんなことをすればいいかは把握している。

 

『ゆめめの好きなのでいいよ』


『ゆめめ様の言うことは絶対です。我らはゆめめ様の下僕』


『ストレッチ配信、初めてだし、楽しみ』


 リスナーさんからは温かい言葉が返ってきた。

 嬉しい。

 雑談配信はまた別の機会に必ずやろうと心に決める。


「ありがとうございます。えと、私のアバター3Dじゃないので、ここからは声だけ配信になっちゃいます。それじゃ私がインストラクションをしますので、一緒にやってみてくださいね」


『はーい』


『わくわく』


『ゆめめ様の仰せのままに!』


 私は個人勢のVTuberである。

 よって、そんなに予算はないし、貯金もしなきゃいけない。

 そんなわけでアバターは2Dである。

 私の体と一緒にぬるぬる動くなんてことはない。


 でも、私のアバター、頭身が高いから、3Dにしたら私の動きに対して違和感があるだろうな。

 ふむー、そうなるとやっぱり2Dのままでいいのかも。


「それじゃ、最初に脚を伸ばして座って、足をぱたぱたやってください。こんなふうに。あ、見えないのか、そうだよね。えと、足をバイバイする感じに動かしてください、えっと、大丈夫かな? わかりますか?」


 インストラクションを初めるとすぐに冷や汗が出てくる。

 これは難しい。

 だって、映像として私の姿を映すことができないからだ。

 実物を見せずに伝えるってすごく難しい。

 うわぁ、どうしよ。


『大丈夫、わかるよー』


『ゆめめ様がストレッチやってるのを聞いてるだけでいいですよ』


『初めてだし無理しないで』


『ストレッチASMRでいいよー』


 私の焦りに気づいたのか、リスナーさんたちは配慮に満ちたコメントが殺到。

 あわわ、気を遣われている!

 でも、あたふたするよりもいいかもしれない。

 みんなの申し出を受けてみることにしよう。


「そ、それじゃ今日はお言葉に甘えまして。私がストレッチするので、えと、聞いててください。でも、何か言えることは言いますね」


『ゆめめちゃん、いいよー』


『作業用BGMにする』


『ゆめめがリラックスするとこっちも和む』


『ゆめめ様ぁ』


「それじゃ、最初に前屈から。ふぬぬ、ふぬぬぬ……いたた……」


 床に座った姿勢で脚を伸ばし、上体をゆっくり倒していく。

 やっぱり太ももの裏がかなり痛い

 一朝一夕に柔らかくなるものでもないからね。


『ゆめめ様、息を吐きながら体を倒すといいですよ』


 スマホの画面を見ると、素晴らしいアドバイスを発見。

 そうだった、ストレッチの時こそ呼吸なのだ。

 配信に気を取られてて忘れていた。


「ふひゅー、ん、ん、あ、えと、息を吐きながらだと体が伸びやすいですよ。んぁ、私もきついですけど、ちょっと気持ちいいかも。うん……痛気持ちいいかな」


 私の指先はかろうじてつま先を捕まえる。

 体全身ピキピキだけど、それでも伸びている感覚が気持ちいい。


『ゆめめ様、その調子です』


『ストレッチ配信……助かるー』


『眠れなくなるかも』

 

『やばい、ストレッチ配信やばい』


『作業停止』


 リスナーさんたちもストレッチを一緒にやっているようだ。

 かなりきつそうな人も見つかる。

 ASMRとは反応が違うので、少し楽しい。


「次は開脚ストレッチしますね。脚を開いて、片側に倒していきましょう。ふぬにゅにゅにゅ……」


 呼吸を意識して体を伸ばす。

 できるだけ反動を使わないようにするのがコツらしい。

 きついなぁ。

 でも、体の筋肉が少しずつ整っていく感覚がある。


「ふ、ぬ、うぅ……うにゅう」


 頑張ろうともがくとどうしても声が漏れる。

 変な声で恥ずかしい。


『新領域キタ』


『ゆめめ様、そんな、そんな、どうしよ』


『今日は伝説』


『作業どころじゃない』


 リスナーさんたちもストレッチを楽しんでいるようだ。

 なんだかよくわからないコメントがあるのはいつものことだし。

 私は開脚ストレッチをゆっくり続ける。

 心なしか体が柔らかくなっていくように感じる。


『ゆめめ様、呼吸をしっかり使ってください。鼻からゆっくり』


『指示厨うざいー』


『はぁ? 怪我のリスクがあんだよ?』


『ゆめめちゃんも分かってる、そんなの。自由にさせてあげてよ』


 スマホを眺めると、チャットが少しあれているのに気づく。

 なにやら二人の人物が口論し合っているようだ。

 どちらも私のことを思っての発言らしい。


「あ、私は大丈夫ですよ。呼吸について教えてもらって助かりましたし、自分のやりたいようにさせてもらってますから。わけのわからない配信なのにつきあってくれてありがとうございます。だから、えっと、落ち着いて、ね」


 言葉を慎重に選びながら、二人を諭すように言う。

 人間、生きていれば衝突することだってあるとは思う。

 だけど、わざわざリラックスするタイミングでぶつかってもしょうがないわけで。


『ゆめめ、大人だよな』


『ストレッチ気持ちいいよ』


『だんだん眠くなってきた』


『しゃしゃり出てごめんなさい』


『こっちもごめん。言いすぎましたー』


 リスナーさんたちの治安が少しずつ落ち着いていく。

 そうだよね、確かに体の緊張が抜けてふわふわしてきた。


「ふわぁ……ぁ、ごめんなさい。眠くなってきちゃいました」


 私も盛大にあくびをしてしまう。

 ASMRの時とは違う感覚だ。

 あっちは最後までサービスするって感じだけど、こっちは一緒に眠くなるって感じ。


『あくび助かる』


『あくびまでかわいいとは』


『作業ははかどらなかったけど、これはこれでいい』


 ふむふむ、リスナーさんたちも十分リラックスできたみたいだ。

 よかった。


「それじゃ、今日はこの辺でおやすみなさい。雑談配信は別の日に行う予定です。よかったら、来て下さいね。おつゆめでしたー」


『おやすみー』


『ありがとー』


『元気出た』


 少し名残惜しいけど、配信を閉じる。

 そして、ぐぃーんと背伸びをする。

 時計は11時35分、喋りながらなので時間がかかった。

 いい夢を見られそうだなって感じる。


 さぁ、眠ろう。

 おやすみなさい。



◇ 朝霧さん、助かったり、ひやひやしたりする


「今日はストレッチ配信をしたいです」


 私は朝霧透子、悠木ゆめめ様のオタクだ。

 ゆめめ様が配信の予定を変更するのはすごく珍しい。

 しかも、ストレッチ配信なんて新しい企画である。

 応援しないわけにはいかない。

 

 同時に少しだけ優越感を感じる。

 だって、ゆめめ様と触れ合ってストレッチができるのは私だけなのだ。

 ふふふ、画面の向こうのみんなにも幸せをおすそ分けしてあげなきゃ。


 途中、ゆめめ様はインストラクションの難しさに直面し、配信内容を変える。

 すなわち、ゆめめ様と一緒にストレッチをするという内容から、ゆめめ様がストレッチをするのを聞いているという内容に。

 もちろん、私はゆめめ様と一緒にストレッチをしている。

 気分を味わいたいのだ。


「えーっと、呼吸についてはお伝えしとかなきゃ……」


 今日の体育の時もそうだったけど、ゆめめ様はきちんと体を使うと柔らかくなるタイプだ。

 ストレッチはとにかく呼吸が肝心だから。


「ふひゅー、ん、ん、あ、えと、息を吐きながらだと体が伸びやすいですよ。んぁ、私もきついですけど、ちょっと気持ちいいかも」


 ゆめめ様がチャットを拾ってくれた。

 嬉しい。

 しかし、時折漏れるゆめめ様の吐息。

 これはちょっと、大丈夫なのかしら。


『ストレッチ配信……助かるー』


『やめろ、眠れなくなるだろ』

 

『やばい、ストレッチやばい』


 まずい、これはまずい。

 ゆめめ様はセンシティブな内容は配信しない清楚な配信者である。

 そっち方向にあるような耳舐め配信とか見たことない。

 清楚な女の子の吐息はまずい。

 天然でやってそうなのがなおさら煩悩を刺激する。


『新領域』


『今日は伝説』


『作業どころじゃない』


 チャット欄の中には際どいことをそのまま書く人間もいる。

 うわわ、どうしよう。

 センシティブですよって言うべきだろうか。

 でも、センシティブじゃないのに、センシティブっていう方がセンシティブな気もする。

 それに、一人のリスナーとしてはゆめめ様の吐息に大変助かっている。

 ぬいぐるみを抱いて悶々としてしまう。

 

 ダメだ、正気に戻れ、私。

 ゆめめ様がセンシティブ認定されるのはまずい。

 ゆめめ様はそういう目で見られるような人じゃない。


『ゆめめ様、呼吸をしっかり使ってください。鼻からゆっくり』


 私はチャットに書き込む。

 鼻息ならセンシティブになりづらいだろうし。


『指示厨うざいー』


 そんな私のコメントにちくりと反応する奴がいる。

 指示厨とはゲーム配信などで求められてもいないのにアドバイスしてくるやつのことだ。

 そんなのと一緒にされたことでつい頭に血がのぼる。


『はぁ? 怪我のリスクがあんだよ』


『ゆめめちゃんも分かってる、そんなの。自由にさせてあげてよ』


 私はついつい、反論を書き込んでしまう。

 口論の相手もヒートアップ。

 あ、このアカウント、知ってる。常連だ。

 Erolanとかいう、絶対に変態的なことで頭が湧いているタイプのアカウント名だ。

 こいつ、BANされないかしら、まったく。


 しかし、ゆめめ様の言葉で一気にクールダウンしてしまう。

 彼女の声は後光がさしているような、不思議な声だと思う。

 不思議と心が落ち着いていくのだ。

 私も出過ぎた真似をしたと反省する。


「ふぅうう……」


 配信が終わったころ、私は妙に熱っぽいのを感じる。

 ゆめめ様の配信が今までにない領域に足を踏み入れたからだろうか。

 今日はちょっと眠るのが遅くなりそう。

 

 

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