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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第二章 ASMR系Vtuberの私、陰キャのはずがMV作るとか無理すぎます!?
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55.お騒がせしている件について

「こ、こんばんわぁ、悠木ゆめめです……」


 次の日。

 私は午後9時から配信を決行した。

 もともとのタイトルは「MV制作の振り返り配信」のはずだった。

 しかし、予想だにしていないことが起きてしまい、「お騒がせしている件について」というタイトルになってしまった。

 うぅう、何でこんなことに。


「えと、この度は本当にごめんなさい。なんていうか、普通に大切なお知らせだなって思ってつけただけだったんですけど、まさか、ここまで大事になるなんて思ってなくて」


 マイクに向かって深々と頭を下げる。

 私のアバターは2Dなので変な動きにしかならないけど、気持ちの問題だ。

 なぜ私が頭を下げているのか、それは昨日の配信のタイトルにある。

 そう、「悠木ゆめめからの大切なお知らせ」、これが非常にまずかったのだ。

 Vの世界では伝統的に「大切なお知らせ」は引退や卒業を報告する場面が多いらしいのである。

 いや、私も知らないわけではなかった。

 だけど、それは超大手企業さんに所属している神様みたいな人たちの話であり、道端の雑草である私ごときのチャンネルには当てはまらないだろうと高を括っていたのだ。


『まぁ、仕方ないんじゃね?』


『釣りっちゃ釣りだけど、いい釣りだった』


『MVもすごくよかったし』


『Switchの新作が当たったのを報告したやつもいるし、許容範囲』


 私のリスナーさんは温かい声で迎えてくれる。

 だけど、私は知っている。

 私のせいで外の世界ではかんかんがくがくの議論が繰り返されているのだ。


 簡単に言えば「引退でもないのに大切なお知らせなんていうのはけしからん!」って言う人たちと、「大切なお知らせなんだから、大切なお知らせでいいじゃないか」って言う人たちが対立しているのである。

 Xのトレンドは「大切なお知らせ」になってしまい、もはや発端になった私の配信などそっちのけで議論している状態。

 争いのない平和な世の中になってほしい。

 お姉ちゃんは「いやぁー、勇気があるよ、あんたは」などと褒めてくれた。

 しかし、勇気も何も、こちらは何かを意図していたわけじゃないのだ。


 かくして、リスナーさんに頭を下げた次第なのである。

 結果、うちのリスナーさんには反省しろというお小言をもらうだけですんだ。

 ごめんなさい、猛省します。


「えっと、それでは裏話を少しだけさせていただきたいんですけども……。その前に、こちらのMV、もうすでに5万回再生を越してしまいましたっ! ありがとうございます!」


 でも、謝罪するだけの配信では終わらない。

 なんせ今回のMVが一晩で目標としていた半分の数字を達成してしまったのである。

 かなりの伸びだ。

 にわかに信じられず、なんども頬っぺたを引っ張ったほど。


『曲の力だよ』


『朝からめちゃくちゃリピってる』


『ASMRパート最高』


『脳が侵食される感じがいい』


『プチ炎上を味方につけたよね』


『既存リスナー以外にも流入している感じ』


 リスナーさんからの祝福に胸が熱くなる。

 「悠木ゆめめはASMRだけやっていればいい」なんて思い込んでいたのは私だけだったのかもしれない。

 もちろん、百人中百人が受け入れてくれるものじゃないことも知っている。

 だけど、既存のリスナーさんの大半は喜んでくれているように思えるからよしとしたい。


「そ、それで、ですね。えと、今回、作曲を担当していただいたSpring Worldさんと、私の歌唱指導をして頂いたミスティさんから、メッセージを頂いたんです! 皆さんと一緒にそれを聞きたいと思います!」


 MVの出来に大満足した私は何か面白いことができないかと考えた。

 そこで、お世話になった二人に声での出演をオファーしたのだ。

 Spring Worldさんは駆け出しの作曲家だし、ミスティさんもまだYoutube活動を始めたばかりと聞く。

 二人の知名度アップにも貢献したいなって思ってしまった。

 Spring Worldさんは陽キャみたいな人だし、きっと引き受けてくれると思ったのだ。

 

『あー、Spring Worldね、気になってた』


『独特な世界観よな』


『ミスティって誰?』


『ここここここ困ります』


『ゆめめ様!? そ、それはちょっと!』


『あははー、うけるー!』


『今日は飯がうまい』


 リスナーさんの反応も上々だ。

 私はPCを操作して、音声ファイルを一人ずつ再生する。

 実を言うと、私は二人が何を言っているのか事前に確認していない。

 レコーディングの時、二人はすごく常識人だったし、変なことは言わないだろう。

 きっと熱いメッセージをくれると思う。


「まずはSpring Worldさんから! 『せ、世界に轟け春の嵐! Spring Worldでーす! ゆめめさんっ、この動画伸びてますよぉっ! このまま行けば、私、働かなくていいかもですよね? 絶対に働きたくないでござるぅううっ!』 お、おおぅ。こんなメッセージでした……」


 Spring Worldさんのメッセージはなんていうか魂の声って感じだった。

 いや、気持ちはわかるけど、私へのメッセージで働きたくないなんて言われても。

 うぅう、Spring Worldさんのためにも今回のMVは鬼伸びして欲しい。


『は?』


『世界に轟けwwww』


『なんかすげぇな』


『女の人なんだな』


『気持ちは痛いほどわかるぜ』


『泣きそう』


『明日、月曜日じゃん』


 チャット欄がしんみりしてきたのを感じる。

 うぅう、お祝いムードに水を差してしまったかもしれない。


「え、えっと、気を取り直して、お次はミスティさん! ミスティさんはこんな感じのアバターの方です。かわいいですよね! 声もすごくかわいいんですよ!」


 わかりやすいように、ミスティさんの画像をはりつける。

 見れば見るほど、地獄に住んでいる猫みたいなルックスである。


「『くっ……人は我をこう呼ぶ、歌うたいの魔獣のミスティ! ゆめめさんっ、この度は、おめでとうございますティ! ミスティ感動したティ! ゆめめさんは宝物ティ! はい、これで終わりよ。……死にたいわ。このキャラ、無理、あるわよね? え、まだ録ってる!? やめるティ!』 ……ぇえええ!?」


 最後の方にオフレコするべきメッセージが含まれてしまっていた。

 素のミスティさんって、思った以上にクールなのだろうか。

 最初は高音でティティ言っていたのに、最後はすごく低音ボイスになった。


『前後の温度差すげぇな』


『ファンになりそう』


『やさぐれOL?』


『ミスティも推そうかな』


『あははは! うけるんだけどー!』


『ゆめめ様……!?』


 リスナーさんはむしろミスティさんの二面性のあるキャラクターを絶賛している。

 ケモノ系のキャラだし、癒されたのかもしれない。


「それでは、今回の曲の背景なのですが……ん?」


 リスナーさんとおしゃべりするために画面に目を移す。

 すると、画面の一か所に目が釘付けになる。

 今回の曲の再生回数を示すグラフに大きな山ができているのだ。


 通常、動画というものは出した直後に一番大きな山ができる。

 しかし、今回の動画の再生回数が現在進行形で伸びているのだ。

 炎上はもう収まったと思ったのに。


『#Whisperslavechallengeから来ましたー』


『めっちゃバズってますね』


 チャット欄に目を移すと、見慣れない言葉が並んでいた。

 なんかすごく長いハッシュタグだ。

 しかも、そんなチャレンジしたこともない。


「あ、あのぉ、ウィスパースレイブチャレンジって何ですか?」


 恐る恐る尋ねてみると予想外の答えが返ってきた。


『ゆめめのASMRを何秒かだけ完コピするチャレンジらしいよ?』


『どこかのインフルエンサーが始めたらしいけど」


『俺も見た』


『TikTokでめっちゃバズってる』


『Youtubeにもそのうち飛んでくるんじゃね?』


 どうやら、TikTokやショート動画でよくあるチャレンジ企画らしい。

 ひぃいい、陽キャ様のお住まいの場所であるTikTokなんて行ったこともないよ。

 私の知らない世界でなぜか話題になっているという。


『あのぐぽぐぽした音って何で出してるの?』


『心臓の音しかわからなかった』


『キーボード叩く音あったよな』


『やっべ、めちゃくちゃ気になる』


 リスナーさんたちはMVの音作りについて興味があるとのこと。

 さすがは私のASMRを愛好してくださっているだけある。

 

「えへへ~、実はですねぇ……」


 私はその後、小一時間ほど曲の中で使った音素材について話してしまうのだった。

 人間は自分が好きなことを話している時、一番、幸せになるという。

 私は浮かれすぎていて気づかなかったのだ。


 あのMVがさらに、さらに、再生されていくとを。

 

 そう、歌イベントの審査基準である10万回再生の基準をわずか2日でクリアしてしまったのだ。



◇ マーケティング担当のエリカさん、敏腕を見せつける



「これ絶対、バズるよー!」


 鏑木エリカは高校に入って以降、インフルエンサーとして活動を活発化させていた。

 その過程で気づいたのは、人はお祭りに参加するのが大好きだと言うこと。

 お祭りは簡単であることが求められる。

 だけど、簡単すぎてはダメだ。

 ちゃんと頭を使って、体を使って、そして、自分みたいな目立ちたがり屋の満足を引き出せるものでなくてはならない。

 誰でもできそうだけど、実はそうでもない、というのが大事なのである。


 悠木ゆめめのMVをバズらせるために、エリカは「#Whisperslavechallenge」というキャンペーンを考えた。

 早い話、MVの中でやられている、ゆめめのASMRを真似るというチャレンジだ。

 わずか十秒程度だが、ささやき、スライム音、タップ音など、様々な要素が含まれている。

 それを10秒で一気に再現するのである。

 事前にしっかり準備しておかなければ、そんなことはとてもじゃないができない。

 色んなインフルエンサーたちがこのゲームに参加することで、それぞれの魅力を見せつけていた。


 結果として一番注目を浴びたのは、悠木ゆめめの原曲である。

 人々は悠木ゆめめのMVへと移動し、ASMRの奥深さに触れ、少なくない量がファンになっていく。

 かくして、悠木ゆめめのオリジナル曲は怒涛の勢いで再生されていくのだった。



【☆★読者の皆様へ お願いがあります★☆】


引き続き読んで頂きありがとうございます!

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ご感想などもすごく楽しみにしています。


次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
某矢澤みたいになっとるw ミッスミッスミ~とかやってもいいのよ?
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