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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第一章 ASMR系Vtuberの私、ぼっちのはずがクラスの美少女に囲まれています!
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17.私はもう、ぼっちじゃない

「な、なんだよ? 鏑木、朝霧、なんか文句あんの?」


 皆岡さんが二人をじろりとにらみつける。

 その顔からは笑顔は消えていた。

 私と話していた時にはまだ笑顔だったのに。

 

「いやいや、最新の流行とかいうからさぁー」


「興味深いって思っただけよ、他意はないわ」


 透子さんとエリカさんは一歩更に歩み出る。

 私なんかあのプレッシャーの前では震えてるだけだったのに。

 二人ともすごい。


「そりゃそうでしょ? ASMRなんてエロいおたく向けのコンテンツじゃん?」


 皆岡さんはさきほどの言葉をもう一度、繰り返す。

 後ろにいる、取り巻きの女の子たちもうんうんと頷く。


「ふーん、そうなんだぁ。そういえば、マーガレット・ホビーって知ってる?」


 エリカさんが唐突に話を変える。

 マーガレット・ホビーなら、流行に疎い私にも知っている。

 たくさんのハリウッド映画に出ている、推しも推されぬ大スターだ。

 彼女の映画は私も見たことがある。

 

「知ってるに決まってるじゃん。ハリウッド女優でしょ?」


 皆岡さんが口を尖らせる。

 関係のない話をするなと目で威嚇していた。


「あれ? マーガレットってASMRやってるんだけどぉ。この間、めちゃくちゃバズってたじゃん? YouTubeでも500万回ぐらい回ってたし、知ってるでしょ? まぁ、あたし、ASMR聴かないけど」


「ぐ……」


 エリカさんが私も知らない情報を持ってくる。

 私は英語が苦手なので、あんまり海外のASMR事情には詳しくないのだ。

 環境音とか、お料理の音なら大好きなんだけど。


 皆岡さんは天下のハリウッド女優がASMRをやっているとは思わなかったらしい。

 二の句が継げず、唸るだけだ。


「ちょっと、エリカ、皆岡さんは流行に詳しいのよ? そんなの知ってるに決まってるじゃない。私もASMRなんて知らないけど、そんなの普通に生活していれば常識の範囲内でしょ」


「うぅ……」


 さらに追い打ちをかけるのは透子さんである。

 背中しか見えないけど、なんだか怖いオーラがぷんぷん出ている気がする。

 透子さんはいい人だよ。

 だけど、たまにちょっと怖い時があるっていうか。


「べ、別にハリウッド女優がやってたからって何だってわけ? そんなのこいつの痛いVtuberと一緒にならないでしょ?」


 皆岡さんはそれでも自説を曲げないみたいだ。

 言いだした以上、引っ込みがつかないって状況なのかもしれない。

 ASMR=ダサいと言っていたのが崩れてしまい、クラスの何人かがその様子に失笑を漏らす。

 空気は明らかに悪くなってる。

 どうしよう、私のせいだ。私がしゃしゃり出たから。


 そんな時だった。

 意外な方向から声が上がる。


「あのぉ、皆岡さんって、Aesopのキャリー、好きだったよね? たしか」


 それは加賀見さんだった。

 彼女はスマホを凝視したまま、ちょっと大きめの声をあげていた。

 その口調は私と会話している時とは違う。

 ひょっとすると、のじゃ口調は本当に親しい人にだけ見せるのかもしれない。


「はぁ? まぁ、好きっていうか、そうだけど……それがどうしたってわけ?」


 思わぬ方向から声をかけられたためか、皆岡さんは困惑気味だ。 

 ちなみにAesopっていうのはたぶん、K-Popのアイドルだと思う。

 私、疎いけども、うっすら聞いたことがある。


「その子、さっき言ってたVTuberとコラボしてASMRやってるよ? まぁ、うちもASMR詳しくないけど」


「はぁああ? 嘘よ、嘘、そんなの、あり得ないし!」


「いや、見て、ほら」


「うわひゃっぁあああ!? まじじゃんっ!」


 皆岡さんは、加賀見さんの差し出したスマホを見て悲鳴をあげる。

 最近、そのVtuberさんを追えていなかったので、まさかそんなことをしてるとは仰天だ。

 確かに、トップ層のVはアイドルの方と積極的にコラボをしていたりする。

 加賀見さんはそれを探し出したのだ。

 

「先生はまだこないみたいだし、ちょっと聞いてみたらいいんじゃない?」


「ふみふみ、ヘッドホン、あるでしょ?」


「おうともよ」


「え、ちょっと……うわ、やばいよぉ、すごいよぉ、キャリーが日本語で囁いてくれてる、ASMRってやっばぁあ」


 透子さんが蹴りだし、エリカさんがパスをして、加賀見さんがシュートを決めるみたいなノリで、皆岡さんの耳に大きなヘッドフォンがはまる。

 

 結果、皆岡さんは崩れ落ちるのだった。

 やっぱり、自分の推しのASMRを聞けるって最高だよね。

 ちょっとはわかってくれて嬉しい。


「……悪かったよ。知りもしないで勝手なことを言って、ごめん」


「うちも、ごめん」


「言いすぎた、ごめんなさい」


 皆岡さんは10秒ほど聞くと、我に返ったようにヘッドフォンを外す。

 それから、さっきまでバカにしていた男子生徒に頭を下げた。

 取り巻きの女の子たちも一緒だ。

 これにはびっくりした。

 そんなに潔く謝るなんて思いもしなかったから。


「それと、藤咲さん、ごめんね、あたし、ちょっと怖かったよね。ごめん、謝る」


「ぅえぁ、あ、はい、いえ、大丈夫です」


 そして、私にも唐突に謝罪が飛んできた。

 自分が謝るのには慣れているけど、謝られるのは慣れてない。

 私は大したことも言えず、愛想笑いをしてぺこぺこする。


「ASMR、聞いてみるわ」


「そうしよー、ハヤテ君のやつとかあるじゃん」


 皆岡さんたちは改心したというか、むしろASMRに興味を持ってくれたみたい。

 よかったなって思う。

 布教に成功したって言えるんだろうか。


「おぉい、皆岡ちゃぁん、いい話風にまとめてるんじゃないよー? それだけじゃ終わんないんだよなぁ」


「ぅえ!?」


「あなた、先日、藤咲さんと掃除当番、代わってもらったらしいわよね?」


「う、うぅ、そうだけど、それは緊急の用事で……」


 しかし、話はこれで終わらなかった。

 皆岡さんはエリカさんに肩を組まれて、ほっぺたをつんつんされていた。

 そして、それを見下ろすのは氷の目をした透子さんだ。

 まるで不良が真面目な学生に絡む様子である。


「だったら、今度は皆岡ちゃんがさぁ、代わってあげないとだよねー? ギブアンドテイクじゃん?」


「心優しい皆岡さんだもの、まさか掃除を押し付けたりしないわよね?」


「ひ、ひぃ。わ、わかった、わかったよ! 藤咲さん、えと、今度、私が代わるからっ!」


 皆岡さんはその場で、私の掃除当番の日を聞きだしてくる。

 掃除は好きなのでどうでもよかったんだけど、ぜひ、っていうのならしょうがない。

 

 かくして、ASMR事件(?)は平和に幕を閉じたのだった。

 途中まで泣きそうだった私は、ふにゃふにゃになって椅子に座る。


「ゆうなちゃん、まじで、かっこよかったよー!」


「かっこよかったです……にゃん」


 先生が来るタイミングで、透子さんとエリカさんが私に囁く。

 遠くの席にいる加賀見さんは親指をたててウインクしてくれた。


 三人とも、ありがとっ!

 涙腺が緩む。嬉しくて。


 友だちができたんだなって、やっと実感する。

 私はもうぼっちじゃないんだって。


 嬉しさからか、声を出し過ぎたからか、喉の奥がずきずき痛んだ。


 それにしても、透子さん、なんで「にゃん」ってつけたんだろ?







「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるんじゃっ……!」


と思ったら


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