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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第一章 ASMR系Vtuberの私、ぼっちのはずがクラスの美少女に囲まれています!
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16.勇気を振り絞る、後悔する、前を向く

「ぁぅ、か、加賀見さん、おはようございます!」


「おはよう……ございます?」


 私は加賀見さんに挨拶をする。

 これまで自分から挨拶をしてこなかった気がする。

 受け身でいるのは楽だけど、そればっかりじゃダメだ。

 そういうわけで挨拶である。

 コミュニケーションの基本だと聞いたことがあるし。


 それに私にはもう一つ、伝えるべきことがあった。


「ぁぁのぉ、えと、その、加賀見さんの、のじゃってかわいいですよね! 私、好きですよ、よく似合ってます!」


「のじゃ? す、好き……? ぶひぃ」


「加賀見さん!?」


 加賀見さんはそのまま拳を握りしめて、ごんと机で頭を打ち付けた。

 ええぇえ、どうして!?


「な、なんでもない……のじゃ。嬉しいのじゃよ? 嬉しいのじゃ、いひひひ」


「そうですか! よかったです! 今日も一日、がんばりましょうね」


 朝の挨拶を無事に終えられた。

 勇気を出せばなんてことはないのだ。

 すごく気分がいい。


「あ、透子さん、エリカさんも、おはようございます!」


「お、おはようございます」


「……おっはよー!」


 席に戻る途中で透子さんとエリカさんが登校してきたので、こちらにも声をかける。

 二人とも目を丸くしていた気がする。


「加賀見さん、説明してもらえるかしら?」


「ふみふみ、フライングは禁止だったはずだよねー?」


「はぁ? 嫉妬しないでくれる?」


 二人は加賀見さんに用があったらしい。

 お友だちが仲良しですごく嬉しい。

 さぁ、今日も一日、がんばるぞ!


 そう思って席に着いた時のことだ。



「あんた、ASMRなんか聞いてるの? うっわー、まじで!?」


 大きな声が聞こえてきた。

 ASMRという単語に背筋がびくっと跳ねる。

 いや、私のことを言ってるわけじゃないってわかってるけど。


 声の持ち主を見やると、いつぞやの皆岡さんだった。

 その後ろには彼女と仲良しのお友達。みんな派手目のメイクをしている。


 そして、彼女がしゃべりかけてるのは男子生徒だった。

 名前はよくわかってないんです……ごめんなさいっ。

 こないだまでクラスでぼっちをしていた私は女子生徒を覚えるのに精一杯で、男子生徒の顔と名前が完全には一致しないわけで。


「ASMRって、小声でささやくやつだよね? やらしー。変態なんじゃないの?」


「変態だよ、やばいって」


「危機感持った方がいいって」


 皆岡さんがしゃべると、取り巻きの女の子たちもケラケラ笑う。

 

 うぅ、いたたまれない。

 ASMRへの露骨な偏見。

 胸が苦しくて、呼吸が浅くなる。


「うわ、耳舐めASMRとかあるじゃん。まじで引くわ」


「やっばいでしょ」


 皆岡さんたちがケラケラ笑うのと対照的に、教室は静まり始める。


 耳舐めASMRとか、その、ちょっと大人向けの動画があるのは私でも知っている。

 だけど、それでも、誰かの癒しになるなら……いいんじゃないかって私は思っている。

 私はそういうの弱いし、全然、できそうにない。

 できる人はすごく尊敬してる。


「か、返してよ? 別にいいじゃん」


 男子生徒はスマホを取り上げられて、あたふたしている。

 皆岡さんが怖くて、強引には奪い返せない様子だ。


「このVTuberもいかにもだよねぇ? なんなの、巨乳すぎじゃん。エロエロじゃん。こんなのにASMRしてもらって嬉しいわけ?」


 皆岡さんが暴言の極みみたいなことを言う。

 彼女はスマホをひらひらとさせていて、その裏面に目が入る。

 そこには、私が一時期よく聞いていたVtuberさんのスマホアクセサリーがついていた。


 見間違えるはずがない。

 だって、私も同じやつ持ってるから!

 あぁ、あの名前を知らない人もファンなんだろうか。


「絶対、モテないじゃん。流行りとかじゃないし」


「いやまじで、ありえないし、彼氏とか聞いてたら無理」


 取り巻きの女の子たちも加勢して、男の子はもう黙ってしまった。

 朝のクラスルームが始まるまであと10分弱。

 かわいそうに、皆岡さんたちの言葉の暴力の嵐を黙って耐えるつもりなのかもしれない。

 辛いけど、言い返せないんだろう。

 こないだのリスナーさんのコメントと同じだ。

 気持ちは痛いほどわかる。


 でも。


 私は思う。

 ASMRを好きで何が悪いんだって。

 自分の好きなもので、自分を判断されるのは間違ってる。


「ぇぅあ、あのっ! それは、そのっ、違うと思います!」


 気づいた時には、私は席を立って声をあげていた。

 勢いが良すぎて、椅子ががたんとなる。

 内心では自分の行動にびっくりしていた。

 

「はぁ? えっと、藤木さんだっけ? なにー、どうしたのー? 何か言いたいことあるとか?」


 皆岡さんとその周りの女の子たちから視線が飛んでくる。

 口元は笑っているけど、目の奥は笑ってない。

 明らかに、楽しく遊んでいたのに水を差すなって言外ににおわせている。


 怖い。

 膝が震える。

 傍から見たらプルプルしてて、かっこ悪いんだろうなって思う。

 立ち上がらなきゃよかった。

 声なんかあげなきゃよかった。

 だけど、私の推しの人を、ASMRをバカにされて黙っていられないよ。


「ぅしゅ、趣味で人を判断するのは、その、違うと思います! 別に何を好きでも、いいじゃないですか。わ、私はASMR、聞かないですけどっ! でもっ」


 言ってしまった。

 冷や汗が出る。

 ろれつが回らず、ちゃんと発生できてない。

 それに、ASMRを聞かないなんて口走ったのは、身バレを防ぐための自己保身。

 胸の内側がちりちりする。


「へぇ? そんなこと言うんだぁ? っていうか、あたしらは最新の流行についてレクチャーしてただけだし?」


「そうそう、あたしらがいじめてるみたいな決めつけするのやめてくれない?」


「怒んないでよ。勘違いだよぉー、ねー?」


 皆岡さんたちは笑いながら、私の言葉をはぐらかそうとする。

 それでも口調は完全に私と男の子をバカにするものだった。

 

 どうしよう、なんて言えばいいんだろう?

 喉の奥に何かがせり上がってきて、言葉が出てこない感覚。


「ぅ、あぅ……」


 私は皆岡さんたちを論破したいわけじゃない。

 ただ、勝手に判断して欲しくないだけだ。

 涙腺がずきずき痛み始める。

 泣いたらダメだ、ここで泣いたら、私、ただのバカだ。


 リスナーさんにも言ったじゃないか。

 私もASMRを広めるのに頑張りたいって。

 

「ちょっとぉ、黙らないでよ? こっちが悪いみたいじゃん。うちらは別に間違ったこと言ってないでしょ?」


 皆岡さんの言葉が胸に刺さる。

 間違ってるよって大声で言いたい。

 でも、勇気がでない。

 ぎゅっと拳を握る。歯を食いしばる。


「へぇえ、皆岡ぁ、そんなに最新の流行に詳しいんだー?」


「皆岡さん、とても興味深いわ。私も最新の流行とやらを詳しく知りたいわね」


 涙腺があと一歩で崩壊しそうになった時だった。

 私の前に2つの影が現れた。

 それは透子さんと、エリカさん。

 二人はまるで皆岡さんたちの視線から私を守るかのように立っていた。


「な、なんだよ? 鏑木、朝霧、なんか文句あんの?」


 皆岡さんの口調に若干の焦りの感情が見える。

 取り巻きの女の子たちの顔も少し引きつっていた。


 そして、私は目を見張るのだ。

 二人が、いや、三人が、私のためにとってくれた行動に。






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