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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第一章 ASMR系Vtuberの私、ぼっちのはずがクラスの美少女に囲まれています!
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1. 隣の席の女子がなぜか私に小声で話しかけてくるんですが

「藤咲さん、おはよう」


 私に話しかけてきたのは美人で有名な朝霧あさぎり透子とうこさんだ。

 背も高く、脚もながく、顔は小さいのに目は大きい。

 同性から見ても、すごくキレイで上品な女の子である。

 さらには勉強もできて、友達も多い。

 

 そんな彼女が私、藤咲ふじさきゆうなに話しかけている。

 内緒話をするように口元に手を置いて小声で挨拶をしてきたのだ。


「ぅ、おはようございます……?」


 もちろん、私だってマナーは知ってる。

 挨拶をされたら、挨拶を返す。当然だ。


 だけど、おかしい。

 絶対におかしい。

 だって、入学式当日から1週間、風邪をひいた結果、私は完全にぼっちと化していたのだ。

 生来の声の小ささもあって、クラスでは完全に置物と化していた。

 だから、おかしい。

 挨拶をされる覚えがない。


「藤咲さん、おはようございます?」


「ぅ? ぁ、おはようございます……」


 なぜか挨拶を二度要求されてしまう。

 声が小さかったんだろうか。

 朝霧さんがささやくみたいな声量なので、私も声量を落としてしまう。


 私は微妙に目をそらしてしまう。

 顔の良い女の子が怖いのだ。

 特に朝霧さんはお嬢様らしいし、私にとっては殿上人だ。


「はふぅうう……」


 ごん。

 いきなり朝霧さんが近くの机に頭を打ち付けた。

 それもバランスを崩したとかじゃなくて、自分から後頭部をぶつけに行った。


「ど、どうしました!?」


「いいえ、なんでもない、なんでもないわ、お金を払わせてほしいぐらい」


「お、お金!?」


「あ、いや、こっちの問題よ、忘れて」


 朝霧さんは頭を抑えたまま、よくわからないことを呟いている。

 大丈夫だろうか、頭を打つのはよくないと聞いたことがあるんだけど。


「ぃいえ、その具合が悪いとかじゃなくてですか?」


「私は元気よ。おかげさまで、毎日、好調よ」


「な、ならいいですけど」


「以前から思ってたけど、藤咲さんって……声がかわいいのね」


「ぅわ、わ、私の声が!?」


 声がかわいい。

 そんなことを生身の人間から言われるのは初めてのことだ。

 一気に血圧があがり、顔が熱くなる。

 社交辞令かもしれないのに、私はなんて自意識過剰なんだろう。


「とーこー、おっはよー」


「ちっ」


 朝霧さんの瞳が一瞬だけ、鋭いものに変わったのを私は見逃さなかった。

 事実、彼女は話しかけられて軽く舌打ちをしたのだ。

 話しかけてきたのは、彼女の友達ですごく仲良しさんのはずなんだけど。

 もしかして、いざこざが始まるの!?


「エリカ、おはよう。今日は早いわね」


「まーねぇー、最近、調子いいんだー。透子、英語の宿題やったー? ノート見せて」


「当たり前でしょ? まったく、あなたはいつもそうやって……」


 あれ?

 朝霧さんは普通にお友だちと会話を続け、その輪に入っていった。

 さっきの舌打ちは気のせいか、私の聞き間違いだったに違いない。

 

 一方の私は会話の余韻を感じて、ぞわぞわしていた。

 声がかわいいって言われて嬉しかったのだ。

 嬉しいけど、私、朝霧さんと話すのは今日が初めてな気がするんだけど。


 いや、そう言えば、この間――。


 私はとある記憶を手繰り寄せる。


 先日、三限目の授業が終わった後のことだ。

 朝霧さんだけが教室に残っていた。 

 次の授業は臨時変更で別の教室に移動すると連絡があった。

 だが、朝霧さんは気づいていなかったのだろう。

 彼女は教室に静かにたたずんでいた。

 このまま置いて行くのはさすがに忍びない。


「ぅあ、あのぉ……」


 私は意を決して声をかけたが、反応はない。

 よく見ると、朝霧さんはイヤホンで何かを聞いていたのだ。

 目を閉じて音に集中しているらしく、外部をシャットアウトである。

 顔が良い!

 思わず口に出そうになった。


「あうあう、あのぉ」


「……?」


 私は勇気を振り絞って肩をたたくと、朝霧さんが気づいてイヤホンを外す。

 何気ない仕草が女優さんみたいだ。

 すごくキレイだなって思う。


 しかし、気圧されてはいけない。

 このままじゃ私はただの不審者である。

 何か言わなきゃ、何か!


「ぅ、ぉはようございます? あ、えと、次のクラス、別の教室だって聞きました。そろそろ移動した方がいいかもで……」


 血迷った私はなぜか挨拶をしてしまう。

 さらに後半は尻切れトンボになってしまったのがコミュ障の悲しい所だ。

 

「っ!?」


 朝霧さんは目を丸くして、私を見る。

 続いて、スマホの画面を見る。

 それから再び、私を見る。

 まるで幽霊にでも出会ったかのような顔で、口をぱくぱくさせていた。

 ひぃいい、私が話しかけたことがそんなに気に入らなかったのだろうか。

 いや、美少女に触ってしまったのは罪深い。

 土下座をしたほうがいいんだろうか。


「あ、ありがと」


 朝霧さんはそれだけ言うと、足早に去っていった。

 教室に残された私は朝霧さんのリアクションに戸惑ってしまい、次の授業に遅れてしまった。


 以上が会話とも言えない数日前の出来事だ。


 まさかあの時の私の声を覚えてたのだろうか。

 まさかね。

 私の声って、そんなに特徴がある方でもないし。


 考えても分からないことは考えないほうがいい。

 私は自分にそう言い聞かせて、朝霧さんについては考えないようにした。

 ただ、今日はやたらと朝霧さんと目が合って、美しい顔で微笑まれることが多かった。

 この時の私は知らなかった。

 朝霧さんとの関係が、今後、一気に加速していくことなど。





「こんばんは。悠木ゆめめです。みんな、一日、お疲れ様です。今日はおやすみ前の配信をしていきますね」


 昼間の私はぼっちの女。

 だけど、夜の私はちょっと違う。

 実は、VTuberとして配信者をやっているのだ。

 ちなみに名前は「悠木ゆめめ」。

 アバターはちょっとお姉さん系のデザインである。

 

 え、本物と印象が違うって!?

 そりゃ、そうですよ。

 本物は身長150センチしかないし、友達いないし、断じてお姉さんではない。

 あぁああ、考えるたびに暗くなっていく。

 配信に集中しなきゃ!

 

「それじゃ、今日のASMR、やっていきますね……」


 私が得意とするのはASMR配信だ。

 中学生のとき悩みがあって眠れない夜が続いた。

 そんな時に私を救ってくれたのがASMR。

 その時の配信者さんは優しい声で私を優しく包み込んでくれた。


 以来、私はASMRにドハマりすることになる。

 色んな配信者さんを追いかけるにとどまらず、気づいたら自分も配信者になってしまった。

 個人配信者、いわゆる個人勢だけどチャンネルには登録者が12万人ほどいる。

 今日も同時接続数は1000人以上。

 私の配信につきあってくれて、すごくありがたい。


『今日もありがと』


『助かりまーす』


『ゆめめ様!』


『ゆめめさんの声を聞いて一日がやっと終わるって感じる』


『声がかわいいもんね』


 リスナーのみんなからの言葉が返ってくる。

 うんうん、今日もいい感じだ。


『声がかわいい』


 そんな文字を見つけると、今朝のことを思い出して顔が熱くなる。

 文字で言われるのと、リアルで言われるのでは重みが全然違う。

 特に、朝霧さんみたいなきれいな人に言われるのは。

 朝霧さん、まつ毛が長かったなぁ。

 いいにおいがしたし。


「えと、それじゃ、今日はマッサージからいきますね……」


 いけない、いけない、集中してしなきゃ!

 私はぶるぶるっと頭を振って、配信を開始することにした。

 朝霧さんのことばかり考えてちゃいけないのだ。


 私はマネキンの肩を優しく叩く。

 ASMR用のものではないのだけど、いろいろ工夫した結果、これに行きついた。

 実際にマイクを通して音だけ聞くと、肩をマッサージされている気分になる。


「けっこう、お疲れですね……頑張りやさんですね……」


 私は今日もマイクにささやく。

 かつての私のように、悩みで眠れない夜を過ごす人の為に。

 私はASMRが好きだ。

 


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