月光狂乱出島変!変態の愛は地球を(植物も?)救う!?
桃色助平太が手にした瞬間、青白い光を放ち始めた「月光草」。その光は瞬く間に増幅し、長崎出島全体を覆い尽くさんばかりの勢いでエネルギーを噴出させた!
「な、なんだこりゃあ!?」
辰五郎が叫ぶ。商館の石畳を突き破り、巨大な蔓や奇怪な花々が、まるで意志を持ったかのように急速に成長を始めたのだ。建物に絡みつき、窓を突き破り、逃げ惑う人々を捕らえようとする。
「おおおおおっ!この生命力の爆発!この無秩序なる繁殖!そして、あの蔓に絡め取られ、身悶える阿蘭陀婦人の、なんと悩ましげなお姿!胸元がはだけ、太ももがあらわに…!まさに、自然が生み出した『緊縛芸術』!この助平太、今、猛烈にインスピレーションが湧いておりますぞ!」
助平太は、鼻血を噴き出しながらも、目の前のカオスを新たな「美」の宝庫として認識し、筆を走らせようとする。
「このド変態!呑気なこと言ってる場合かゾ!このままじゃ島ごと植物に喰われちまう!」
プルルンが助平太の頭の上でパニックになっている。
キャプテン・ローズ率いる海賊団は、お宝どころではなくなり、巨大な食虫植物のような花に追いかけ回され、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていた。
「野郎ども、撤退だ!こんな気味の悪い島、一刻も早くおさらばするぞ!」
ローズ自身も、自慢の赤い髪に蔦を絡ませながら、必死で応戦している。
血煙のお蝶と鉄仮面の玄蕃は、任務の一時中断を決断し、この異常事態からの離脱を図っていた。
「ちっ…あの変態侍のせいか、それとも元々曰く付きの草だったのか…面倒なことになったわね」
お蝶は悪態をつきながら、襲い来る蔓を太刀で斬り払う。玄蕃は、その巨体でなぎ倒しながら進むが、植物の勢いは止まらない。
オランダ商館長は、「おお、我が貴重なコレクションがああ!」と、異常繁殖したシダ植物に埋もれながら泣き叫んでいる。警備兵たちは、もはやなす術もなく右往左往するばかりだ。
その地獄絵図を高みの見物と洒落込んでいたのは、阿蘭陀お龍であった。屋敷の屋根の上で、自作の拡声器のようなものを取り出し、冷静に解説を始めた。
「あらあら、私の調合した『植物活性化エーテル』が、月光草の秘めたる力と少々過剰に反応してしまったようですわね。月光草は本来、魂の力を増幅し、生命エネルギーを活性化させる稀有な植物。今はその力が暴走し、周囲の植物の成長を無秩序に促しているのですわ。いわば、植物たちの『発情期』のようなものかしら?うふふ」
「発情期ですと!?なんと!なんと素晴らしい響き!つまり、この島全体が、今まさに『愛の交歓』の真っ最中ということでござるか!おお、あの蔓の絡み合い!あの花の蜜の滴り!そして、あの逃げ惑う美女たちの、恐怖と興奮に濡れた瞳!この助平太、この『生命の祝祭』に、我が身をもって参加させていただきたい!」
「お前は少し黙ってろだゾ!どうやったらこの暴走を止められるんだ、この眼鏡女!」
プルルンがお龍に向かって叫ぶ。
お龍は、つまらなそうに肩をすくめた。
「そうですね…これほどのエネルギーの奔流を鎮めるには、それ以上の『強い想い』か、あるいは『対になる鎮静の波動』を持つ何かが必要でしょうね。もっとも、この島にそんな都合の良いものがあるとは思えませんけれど」
「強い想い…?」カゲリは、お龍の言葉に、ふと白雪姫の清らかな歌声を思い浮かべた。「あの姫君の歌声なら…しかし、今はここにいない…」
「鎮静の波動だぁ?そんなもん、どこにあるってんだよ!」辰五郎が苛立ちを隠せない。
その時、助平太が、まるで天啓を得たかのように叫んだ!
「強い想いなら、この拙者の『美女への無限なる愛』こそが、この世で最も強く、そして最も純粋なものでござる!プルルン殿、あの暴走する月光草の本体はどこだ!?」
「へっ!?あ、あっちの、一番デカい花のところから、一番強いエネルギーが出てるんだゾ!」
助平太は、プルルンが指さす、商館の中庭でひときわ巨大に咲き誇り、周囲の植物を操っているかのような、禍々しくも美しい巨大な花(元は月光草)めがけて突進した!
「おお、美しき月光花よ!その荒々しき姿、そしてその溢れ出る生命の奔流!まさに、我が理想の『熟れすぎた果実』!この助平太の、熱き熱き『愛の告白』を、その身に受けるがよい!」
助平太は、巨大な月光花の前に立つと、おもむろに着物をはだけ(ふんどしは死守)、天を仰いで奇妙な踊りを始めた!それは、歌舞伎の所作のようでもあり、どこかの国の求愛ダンスのようでもあり、そしてやはり決定的に変態的な動きを加えた、まさに「桃色助平太スペシャル・愛の求愛乱舞」であった!
「月光花よ!汝のその豊満なる花弁!その滴る蜜!その天を突く雄蕊!全てが、全てが美しい!この助平太、汝を愛で、汝を慈しみ、汝と共に『美の頂』へと昇りつめたい!さあ、我が愛を受け止め、その荒ぶる魂を鎮めるのだ!」
助平太のあまりにも濃密で、あまりにも一方的で、そしてあまりにも変態的な「愛の波動」は、常軌を逸したエネルギーとなって月光花に降り注いだ。すると、不思議なことに、あれほど荒れ狂っていた月光花の動きが、ピタリと止まったのだ。そして、まるで「こんな変態の愛は受け止めきれんわ!」とでも言うように、みるみるうちに萎んでいき、元の小さな月光草の姿に戻ってしまった。
月光草が鎮まると、島を覆っていた異常繁殖した植物たちも、まるで魔法が解けたかのように勢いを失い、元の大きさに戻っていく。出島を包んでいたパニックは、嘘のように収束した。
「……な、なんだ…今の…」辰五郎が呆然と呟く。
「…ド変態の愛が、植物の暴走を止めた…のか?」カゲリも信じられないといった表情だ。
プルルンは、頭を抱えていた。「もう…何が何だか分からないんだゾ…」
屋根の上のお龍は、単眼鏡を覗き込みながら、クスクスと笑いをこらえきれない様子だった。
「あらあら…これはまた、前代未聞の『鎮静方法』ですわね。変態の愛が、植物の過剰な生命エネルギーを中和するとは…。実に興味深いデータが取れましたわ。やはり、この男、解剖する価値がありそうね」
なんとか月光草を手に入れ、出島の混乱も(一応)収まった。商館長は、助平太に感謝すべきか、損害賠償を請求すべきか、複雑な表情で頭を抱えている。キャプテン・ローズは、命からがら船に戻り、「あんな気味の悪い島、二度と来るか!」と悪態をつきながら沖へと去っていった。お蝶と玄蕃は、この予想外の結末に呆然としつつも、ひとまず玉藻の前に報告するため、闇に紛れて姿を消した。
助平太は、萎れた月光草を手に、満足げな表情でお龍の前に差し出した。
「お龍殿!これでお約束通り、古歌の解読をお願いできますかな?この月光草、拙者の『愛』を一身に受け、少々お疲れのようですが…」
お龍は、美しい唇に皮肉な笑みを浮かべた。
「ええ、いいでしょう、変態侍さん。ですが、その前に、もう少しだけ私の『実験』にお付き合い願いますわ。この月光草、あなたの『変態エネルギー』を吸収して、何か面白い変化を起こしているかもしれませんしね…うふふふふ」
お龍の不気味な笑みに、助平太は新たな「美の探求」の予感を、そして仲間たちは新たな厄介事の予感を感じるのであった。




