5話 休日
「今日は土曜だし、日頃のお礼になんかさせてよ」
土曜日、朝ごはんをひなたさんと食べながら、日頃の感謝を伝えたくて、そんなことを聞いててみた。ひなたさんはそれを聞いとたん、慌ててご飯を飲み込み、驚いたように口を開いた
「え、いいですよそんな」
「いいからいいから、なんか欲しいものとかある?」
「うーん、欲しいものは無いですね……」
うーんと考えた後に、少し俯いてぽつりと言った
「でも行きたいところはあります」
「お、どこに行きたいの?」
「その……ゆ、遊園地に、行きたいんです」
「ええっ!俺と?」
「はい……ダメですか?」
上目遣いになりながら、恥ずかしそうに俺の方を向いて聞いてくる
「俺は構わないけど、いいの?」
「はい!むしろ大輔さんとがいいんです」
「そっか、じゃあ行こっか」
「はい!」
嬉しそうにはにかむひなたさん。その表情に、不意にどきりとしてしまう。楽しみにしてくれている、そう思うと、緊張とも言えない胸を締め付けられるような気分になる。
次の日の朝、俺たちは2人で電車に乗って、全国的にも有名な遊園地に向かった
朝早く行ったのにも関わらず、家族連れ、カップル、学生など色々な人が既に並んでいる。
「来ましたね!大輔さん」
「そうだね、楽しもうね」
「はい!」
いつもの子供と大人の間のような人が、今日は思いっきり子供になっていて、昨日の大人っぽさを含んだ笑顔にも、子供のようにはしゃぐ姿にも魅力的に感じる。
早くも、今日は来れてよかったと密かに思う。
「まず何から乗る?」
「じゃあ、ジェットコースターがいいです!」
「おっけー、行こっか」
開園してすぐ、ここの一番人気のジェットコースターに乗ることにした。
のだが
「おえぇ……」
予想はしていたが、久しぶりに来て最初だったのと、歳のせいで、完全にダウンしてしまった。
ひなたさんは申し訳なさそうな顔で買ってきたお茶を渡しながら
「本当にごめんなさい、私が乗りたいって言っちゃったから……」
「いや、全然!……うっぷ」
「全然ダメじゃないですか!」
「うん……ごめんね……ちょっと座っていい?」
吐き気が納まってきて、しばらくしてひなたさんがいきなりふふっと吹き出す。
「どうしたの?」
「いや……初めてあった時と似てるなぁって思いまして」
「あぁ、確かに」
俺まで笑ってしまう。
「あの時も本当に助かったよ、ひなたさんいなかったら道に倒れてたし」
「結構酔っ払ってましたもんね」
「う……本当にありがとうございました」
「いえいえ」
2人で笑い合う。いつの間にか気分も元どうりになっていた