嘘
ルナ「ローラ!!ごめんね、ピーちゃんを近くで見たくて鳥籠を開けたら、飛んでいって窓から逃げちゃったの。一生懸命探したんだけど、見つけられなかった」
高揚感の中、すらすらと嘘をついた。
空になった鳥籠を見てローラの顔が曇る。
ローラ「え…どうしてピーちゃんは逃げないよ」
確かに、逃げなかった。
ドクン、と心臓が響く。
ルナ「でも、逃げてしまったの…本当にごめんなさい」
ローラ「…お父様に言いつけてやる。お父様は逃げないって言ってたもの!!ルナの嘘つき!!」
ルナ「ごめんなさい」
怒りながら涙を浮かべるローラに謝罪をするルナ。
ローラは鳥籠を持って自宅の方向に走り去ってしまった。
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その日の夜、ルナの父は血相を変えてルナの部屋に乗り込んできた。
お父様「ルナ!!お前何してるんだ!!」
ルナ「逃げちゃ…
ドスッ
話聞かず、父が足でルナを思い切り蹴り飛ばした。
その衝撃でルナは吹っ飛び、木製の椅子に身体をぶつけて倒れる。
ガタン!
ルナ「ぐっ…」
くぐもったうめき声をあげる。
蹴りがわき腹に命中した。痛みと苦しさで、ヒィ、ヒィと小刻みに呼吸をしながらわき腹を手で押さえる。
大きな音を聞いてシンシアがルナの部屋に駆けつけた。
シンシア「アナタ、やめてください!」
シンシアは状況を察してルナに駆け寄り、そして抱き寄せた。
お父様「元はと言えばお前がルナをちゃんと見てないからだろ。この役立たずが!」
ゴツッ
父はシンシアの頭を拳でぶん殴った。
シンシア「うっ…子供の前ではやめて下さい」
お父様「明日、あの家にお金と代わりの鳥を持って謝りに行ってこい。私に恥をかかせるな」
バタン!
ルナの父は部屋を出て行った。
シンシア「ルナ、大丈夫?怖かったね。身体に傷はない?」
ルナ「大丈夫、痛くない」
本当はジンジンと身体が痛み、冷や汗をかいているのだけれど。
シンシア「守ってやれなくてごめんなさいね。私となんとかしましょう。だから、今日あったことを教えて欲しいの」
ルナ「ローラのカナリアを逃して、逃げたと嘘をついた」
私を庇って殴られたこの女に、私は真実を伝えた。なんて言うのか気になったから。
シンシア「まあ、それはローラが悲しむわ。でも何か理由があったのかしら」
ルナ「閉じ込められて可哀想だったから」
シンシア「ルナ…」
シンシアはルナをそっと抱きしめた。
シンシア「貴女は繊細な心を持っている。きっと自分と重ねてしまったのね」
ルナは黙り込む。
シンシア「明日の夕方、ローラのご自宅に伺ってお義母さんと謝りに行きましょう。それまでルナは身体を休めて。アザになってなければいいんだけど…」
シンシアは私を一度も責めなかった。
私はベッドに入り目を閉じる。
ローラは泣いて怒ってた。
父には思い切り蹴り飛ばされた。
身体が痛いけど、心はすっと晴れていた。