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カナリア  作者: 名無し
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偽善者

弟が産まれたときは、目ん玉をほじくり出してやりたいくらい嫌いだった。


「ルナおねぇたん」


私は目を見開いた。無視し続けた弟に誰が私の名前を教えた?

私の劣等感を刺激し続けていた弟が、真っ先に私の名前を呼んだのだ。


「ルナおねえたん、あそぼ」


にっこりと笑顔で、小さな手で私の手を握る。

私はその小さな手を振り解くことも、彼に返す言葉も出てこなかった。


それから


毎週日曜日になるとシンシアは小さな弟と私を連れ出し近くの礼拝堂に行って祈りを捧げた。


私には何の意味があるのかさっぱり分からなかったけれど、週末の外出は悪い気分では無かった。


シンシアは少しやつれてきているように見えたし、弟はすくすく育って礼拝堂に来ている皆に可愛がられていた。その中で、私に声を掛けてくれる大人も居た。


女性「毎週来て偉いわね。それにシンシアさんのお子様達、とても美しい髪色をしているわね」


シンシア「有難うございます。自慢の息子と娘です」


偽善者の会だと思っていたけれど、それも悪くない。


礼拝の後はシンシア、弟、私の三人で簡素な食事を食べた。父はいつも居ないけれど、週末の行事がきっかけとなり三人で食事をする事も増えた。相変わらずシンシアには苦手意識が有るけれど。


今日の私には計画があるから、適当にその場をやり過ごした。ローラも毎週日曜日に家族でここへ来ている。私はローラに声を掛けた。


ルナ「今日もピーちゃん、見に行ってもいい?」


ローラ「いいよ!おいでよ。最近ね、オウムも買ってもらったんだ」


ルナ「ええ、それは凄いね。ローラの家、いったい何匹ペット飼ってるの?」


ローラ「ええと…4匹?ニワトリや馬も含めると…分かんないや!動物好きでね、お父様の趣味なの。最近は乗馬もしてるのよ」


ローラの自慢話を聞きながら、親達を置き去りにして2人きりでローラの家に向かった。


やけにまとわりついてくるゴールデンレトリバーをかわし、ローラの部屋へ向かった。


ローラ「見て!これがオウム!ピーちゃんと違って喋るから、今言葉を教えてるの」


ルナ「そうなんだ、賢いね」


ローラ「ほら、こんにちは、こんにちは。喋ってみて」


うんともすんとも言わないオウムに向かってローラは言葉を吹き込む。どちらがオウムか分からない。滑稽な姿だ。


ルナ「あのね、ローラに頼みがあるんだ」


ローラ「ん、なあに?」


ルナ「学校でスケッチの宿題があるでしょ、それで、ピーちゃん貸して欲しい!お家に宿題用のスケッチブックがあるから、3時間くらいで終わらせてすぐピーちゃん返しに来るから…」


ローラ「へぇ〜ピーちゃん描くんだ。それいいアイディアだね。もちろんいいよ」


こんなに簡単に貸してくれるとは思わなかったから驚きだ。ありがとう、とお礼を言い私はカナリアが入った鳥籠を持ち出した。


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