呪いの子※
私には母親が居ない。
母親の顔も見たことがない。
父が在学中に女性を妊娠させて、私を産んだ後に母は私を置いて出て行ったんだって。父のトラウマだ。
お婆様は私を酷く嫌っていて、あの女によく似て醜い。憎たらしい子。と言った。そしてお父様の邪魔をしないようにと私に言い付けた。
お婆様「あの尻軽はお前を捨てて出ていったんだ。仕方なく育ててやってるんだから、いい子にしてなさい」
ルナ「…はいお婆様」
お婆様「お前、本当はこの家に居てはいけない子なんだからね」
ルナ「…」
後から分かったのだが、お爺様は不倫をして家を出て行ってしまったらしい。だからお婆様は自由奔放で身勝手な女が嫌いだし、自分の息子が私の母に騙されたと思い込んで酷く憎んでいた。
私はまるで憎い愛人の子の様な扱いを受けていた。
父はというと、そんな私を見ないふりをする。
父の家は会社経営をしていてその一人息子。我儘で自信家に育った。
母によく似ているという私を居ないものとして扱った。
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父は会社を継ぐと、しばらくして再婚した。
名はシンシアと言う。私の母と真逆の清楚なタイプな女性だった。金髪のショートカット、貧乏な家の出だが父の会社で真面目に働き父にみそめられたのだ。
そして一年も経つと、私には腹違いの弟が出来た。
弟は継母のシンシアによく似た澄んだ空色の瞳を持って生まれた。
お婆様「まるで天使のようね。よく頑張ったわね、シンシアさん」
シンシア「お義母さま、有難う御座います。この子は強く逞しく育つ様にレオと名付けます」
お婆様「まぁ、なんて素敵なの…立派な長男になるわ…!!ルナ、あっちへ行きなさい!レオに近づいちゃダメよ。あなたは呪われた子なの」
太陽のような子、祝福された天使。
空色の瞳をもつ美しい子。それが弟。
方や私は、捨てられた子供。見たこともない母に似たくすんだ紫色の瞳。
皆に愛され祝福される弟が憎いし羨ましい。
継母のシンシアはいつもニコニコしていて気味が悪い。
お婆様も嫌い。
お父様に関してはもう何も求めていない。
私は孤独だ。
しばらくすると、私が呪ったからか、どうなのかしらないけれど、お婆様は転倒事故で亡くなった。
ただ幼く自我の確立が未熟な子供の私には、本当に自分自身に呪いの力があると思う様な出来事で、ただ何となく後ろめたい気持ちになった。
そして誰の事も呪ってはいけないと、当時の私はそう思ったんだ。