殺人衝動とトランス
心臓が高鳴る。
殺す、殺してやる!
実際に人を殺しても良いんだ。
私に生きてる意味なんてない。
ルナはソイツがいる所へ走り出す。
ハァ、ハァ、ハッ…
高揚感と胸の高鳴りで喉が渇く。
公衆トイレの手洗い場で、右手で水をすくい喉を潤す。
ふと鏡を見ると、酷い目つきだ。
鏡の中の醜い自分を見てはっとする。
(ルナは、誰よりも美しい子)
優しくてか細い声が頭に響いた。
お母さん…
そうだ、私、銃もナイフも持ってないじゃん…
どうやってアイツを殺すんだよ。
「あはは」
笑いが込み上げる。
急にバカらしくなってきた。
涙も溢れてきた。
胸が張り裂けるほど痛くて。
騙されていたことより、死んだお母さんを思い出したせいで、そっちの方が苦しくて。
死んでしまいたくて。
それでも冷静なルナは、持っていたお金で電話ボックスから昔の太客に連絡を入れた。
場所を伝えると直ぐに高級車が到着し、ルナを迎え入れる。
客「ルナちゃん!会いたかったよ!どうしてたの?」
ルナ「関係ないでしょ。それより前に言ってた上等なブツってあるの?」
客「ええ?あれには絶対に手を出さなかったじゃないか」
ルナ「いいから、あるならよこしな。無いなら車から降りるから」
客「あるよ!また君に会えるなんて夢のようだよ」
ルナ「そうね、夢を見たい。全てを忘れて夢を見たくなったの」
高級車がゲートをくぐり客の邸宅に着いた。
無言で客の後ろを着いていく。
赤く大きなベッドは、血の色に見えた。
客「玉にする?注射にする?」
ルナ「強いやつ。そういやアンタ医者だったよね…ま、いいか」
客「大繁盛中だよ」
ルナ「汚い商売だもんね」
客「まぁ、そういう場面もあるよね、でも今はこういう話はやめよう」
ルナ「…じゃあはやく頂戴」
客「分かった。でも昔はあれだけキメるの拒んでたから今日はお試しで身体に害がないやつで行くから」
そういうと慣れた手つきでルナの白くて細い腕に注射器で液体を注入する。
染みる。腕がピリピリとする。ドクン、ドクン、と脈打つ感覚が全身に広がる。
足りない、と、ルナはふらつく足元で立ち上がり、テーブルの上にある粉を鼻から吸引した。何度も見ていたから、それは何か分かっていた。
客「やばいよルナちゃん、初めてで一気にそれは危ないよ」
ルナ「いいんらよ」
呂律が回らなくなっていた。目の前がパチパチする。ドクドク、パチパチ、ネオンが…
ここは天国かよ。
目まぐるしく変わるカラフルでサイケデリックな世界。0,1秒事に変わる見える世界。フワフワとしながらも高速で空を飛んでいる感覚。
無限の世界。気持ち良い、
私は何者でもなく、世界は全てを受け入れてくれて、
私は、わたしを捕らえていた檻を破り
鳥のように空高く飛んでいく
キマっている状態のルナです。
これから物語は過去編に入ります。